ガンバ大阪の攻撃はなぜ劇的に改善されたのか。力強いコメントから読み解く、指揮官ツネの“修正力”
大阪ダービーでの閉塞感が嘘のように…
[J1リーグ第5節]G大阪 2-1 大分/7月18日/パナスタ
まさにしてやったりの快勝劇だった。
序盤から果敢なハイプレスでゲームの主導権を握ったガンバ大阪は、スピーディーかつアグレッシブなパス回しで、堅牢を誇る大分トリニータ守備陣を揺さぶった。33分に大分のゴラッソで先制を許すが、その4分後に小野瀬康介がPKをゲットし、これを宇佐美貴史が豪快に決めてすぐさま同点とする。そして後半開始早々の48分には、敵陣での宇佐美のボール奪取からアデミウソンにボールが渡り、鮮やかな左足のコントロールショットで逆転に成功した。
その後も大分ゴールへの貪欲な姿勢を崩すことなく闘い、追加点こそ奪えなかったものの攻守両面で今季最高のチームパフォーマンスを披露した。会心の2-1勝利で連勝を飾り、3勝1分け1敗で順位をじわりと5位に上げたのである。
再開初戦の大阪ダービー(セレッソ大阪戦、第2節)では、無秩序な攻撃が守備にも悪影響を及ぼし、決定機と言えるチャンスさえ掴めないまま1-2の完敗を喫した。続く名古屋グランパス戦(第3節)を2-2の引き分けで終えると、清水エスパルス戦(第4節)では終了間際の渡邉千真の決勝点で2-1とかろうじて勝利を収める。選手たちのコンディションと試合勘が高まる一方で、攻撃は迫力と連動性の欠如は持ち越し課題のままだった。
守→攻への切り替えに手間取り、焦れた宇佐美が中盤の低い位置まで下がって、アデミウソンもサイドに流れるばかりと、頼みの2トップの強烈な個がまるで活かされていなかった。ところが、どうだろう。大分戦におけるチームアタックは、驚くほどにブラッシュアップされていたのだ。
3-1-4-2システムで臨んだ大分戦。宇佐美とアデミウソンは互いの距離をなるだけ密に保ち、中盤からは矢継ぎ早に縦への精緻なクサビが入った。そこに小野裕二や井手口陽介、小野瀬ら2列目のアタッカーたちがめくるめく絡み、大分守備陣にプレスポイントを絞らせない波状攻撃をお見舞いしたのである。
「この1週間、チーム全体でそこまで運ぼうと取り組んできた」
宮本監督は試合後、この1週間で取り組んだ成果が出たと自画自賛した。
「攻撃に関しては、3連戦で出た課題をトレーニングでしっかり修正しました。選手たちも高い意識を持って取り組んだ結果だと思う。怖がって前にボールを付けなかったり、簡単に下げるシーンがあって、もっとペナルティーエリアに入って行ったりとか、攻撃の個々の持ち味が出せていないところが多かった。もっと勇気を持ってやろう、エリア内で勝負していこうと。今日はその部分がうまく機能したと思います」
大分戦で光り輝いたのが、エースの宇佐美だった。指揮官は「もっと点が取れるところでプレーしようと話していた。今日はたくさんボールを触りながら、リズムをもたらしてくれた」と讃える。2トップに対しては「あまりサイドに流れず、プレーゾーンをなるだけエリア内でと指示していた。これまでの試合ではボールが彼らのところにあまり出てこないところがあったので、この1週間、チーム全体でそこまで運ぼうと取り組んできた」と明かした。
PKで今季初ゴールを挙げた宇佐美は、「なるべくアデの近くで、離れすぎないように意識してやろうと思ってる。基本的にアデには真ん中にいてもらって、僕は下りすぎず、彼の周りをシャドーのように動くイメージです」と説明する。
変化があったのは、どうしても位置を下げざるを得なくなったときの周囲のサポートだ。「今日は違いましたね。ユウジ(小野)がアデの近くに寄せていったり、ヨウスケ(井手口)も絡んでアデを孤立させないような動きをしてくれた。すごくボールに触りやすかったんで、これからはリズムを作りながら前で仕留めるプレーをもっとやっていければと思う。アデとの関係でももっとゴールを奪っていけると思いますしね」と、手応えを口にした。
殊勲の逆転弾を決めたアデミウソンも、前を向いてプレーする場面を頻発させ、出色の出来を披露した。「選手一人ひとりの運動量が上がった。運動量が上がればボールが動き、タカシ(宇佐美)にも自分にもボールがたくさん入ってくる。今日はそれがすごく良かったと思う」と、こちらも上機嫌だ。
遠藤、倉田、パトリック、渡邉とベンチはJ屈指の豪華な顔ぶれ
宮本監督はこう続ける。
「今日は立ち上がりなら流れが悪くなかった。事故のような失点のあと、みんながすぐに気持ちを切り替えてゴールに向かっていってくれたところが、まず評価できる。エリア内にたくさん人数が入って、圧を掛けたからこそのPKだと思う。後半も良いテンポで迫って、ああいうところ(2点目)で仕掛けられるこのチームの良さが出た。追加点があればもっと良かったけど、最後の時間帯のしんどいところもみんなで、メンタルのところで歯を食いしばってやり通したところも評価したい」
大阪ダービーの手痛い敗戦から多くを学び、指揮官の修正ポイントに対して選手たちが真摯な態度で向き合った結果だ。試合後にはポジティブな空気が感じ取れ、すっかり上昇気流に乗っていきそう気配だ。
はたして夏場の連戦で、ハードワークを頼みとするハイプレスと攻撃の連動性を維持できるのか。新加入・小野が声価を高め、アンカー・矢島慎也に安定感が生まれる一方で、ベンチには遠藤保仁、倉田秋、パトリック、そして絶好調の渡邉ら豪華な面々が居並ぶ。5枚の交代カードをどう切っていくのかを含め、ツネ監督の手腕に注目が集まる。