補強に成功したのはどのクラブ?2020年J1全18クラブ、開幕前補強診断

2020シーズンの明治安田生命J1リーグが2月21日にいよいよ開幕を迎える。各クラブが新シーズンに向けて準備を進めているが、今オフで補強に成功したクラブは果たしてどこなのか。「◎=期待」「◯=良い」「△=不安」のジャンルをクラブ別に分類して補強の視点から新シーズンのJ1を占っていく。

【◎=期待】
■鹿島アントラーズ
IN:11人 OUT:13人

比較的静かに終わった今オフのストーブリーグにおいて、最も精力的な動きを見せたのは鹿島だろう。奈良竜樹、和泉竜司、永戸勝也、杉岡大暉と、各クラブの主力級を次々に確保。さらにファン・アラーノ、エヴェラウドと2人の新外国籍選手の能力も高く、将来を見越して超高校級のルーキー3人(松村優太、荒木遼太郎、染野唯月)も迎え入れている。得点源だったセルジーニョの流出は痛手ながら、昨季以上の戦力を手にしたことは間違いない。今季公式戦では連敗スタートとなったが、この豊富なタレント陣をザーゴ新監督がいかにまとめ上げるのか。その手腕にかかる期待は大きい。

■横浜F・マリノス
IN:15人 OUT:17人

王者・横浜FMも着実に戦力アップを実現した。とりわけオナイウ阿道、水沼宏太らが加わった前線は厚みを増した印象で、さらに杉本竜士や仙頭啓矢ら昨季のJ2で結果を出した実力者を各ポジションに補った。昨季は期限付き移籍で加入し、15年ぶりJ1優勝に大きく貢献したティーラトンやチアゴ・マルチンスの完全移籍への移行も行い、ACLとの“二足のわらじ“に耐えうる選手層を手にしている。

■FC東京
IN:12人 OUT:9人

主力がほぼ残留した一方、アダイウトンやレアンドロとJリーグでの実績十分なアタッカーを獲得したFC東京も補強に成功したチームと言えるだろう。大卒ルーキーの3人(紺野和也、安部柊斗、中村帆高)も、レギュラー陣を脅かすポテンシャルを秘めている。

■ガンバ大阪
IN:16人 OUT:16人

G大阪は、なんといっても日本代表DF昌子源の獲得が大きい。強さと高さを兼ね備え、ビルドアップ能力も高く、類まれなるリーダーシップも持ち合わせる。トゥールーズ(フランス)からJリーグ復帰を果たした日本屈指のCBの加入により、課題の守備力向上に大いに期待が持てそうだ。その他にも新里亮や小野裕二の獲得にも成功している。

■名古屋グランパス
IN:9人 OUT:12人

名古屋は和泉竜司の流出こそ痛手だが、川崎フロンターレから阿部浩之、サンフレッチェ広島より稲垣祥を獲得し、その穴を埋める人材を確保した。レンタル先で結果を出したマテウス、相馬勇紀の復帰も上積みポイントだ。

■柏レイソル
IN:16人 OUT:16人

J1復帰を果たした柏も戦力の大幅アップに成功した。昨季のJ2で22ゴールを決めた呉屋大翔をはじめ、神谷優太、大南拓磨らポテンシャルを秘めた若手を獲得。さらには、元神戸で韓国代表GKのキム・スンギュも加わった。移籍の噂があったオルンガと中村航輔も残留し、隙のない陣容を手にしている。昇格1年目で優勝を成し遂げた2011年の再現も起こり得るかもしれない。

【〇=良い】
■川崎フロンターレ
IN:13人 OUT:12人

派手な動きはなかったものの、ピンポイント補強で弱点を補ったのが川崎Fだ。昨季は固定できなかった右SBに、湘南から山根視来を獲得。守備力だけでなく攻撃センスも高いこの新戦力が、王座奪還のカギを握る。旗手怜央、三笘薫とU-23日本代表候補の大卒ルーキーコンビも、レギュラーの座を脅かす即戦力だ。

■セレッソ大阪
IN:19人 OUT:14人

水沼宏太とソウザが移籍したC大阪は、昨季の山形でブレイクを遂げた坂元達裕を獲得。スピード溢れるサイドアタッカーが、攻撃力アップのキーパーソンとなる。小池裕太、豊川雄太もレギュラーの座を狙える人材で、大物ルーキー西川潤も注目プレーヤーとなる。

■ヴィッセル神戸
IN:6人 OUT:14人

意外にも、と言ったら失礼だろうか。神戸としては静かなオフシーズンとなった。ダビド・ビジャが引退し、ルーカス・ポドルスキも退団。天皇杯を制し、初めてアジアの戦いに打って出るチームとしてはやや戦力に心もとない印象を受ける。それでもドウグラスを獲得できたのは最大のヒットだろう。J1通算46得点を記録するブラジル出身のストライカーは、今季の公式戦でさっそく結果を出しており、新たなエースとしての活躍が見込まれる。山口から加入した長身CB菊池流帆も、特大のポテンシャルを秘めた逸材だ。

■大分トリニータ
IN:12人 OUT:16人

大分は得点源のオナイウ阿道と後藤優介を失ったものの、前線に知念慶、渡大生、野村直輝を獲得。35得点と得点力不足を露呈した昨季の課題解消に向けて、明確な補強策を示している。

■ベガルタ仙台
IN:10人 OUT:9人

木山隆之新監督を迎えた仙台は、イサック・クエンカ、パラ、アレクサンドレ・ゲデスと外国籍選手を次々に補強。吉野恭平、赤崎秀平と日本人の実力者も迎え入れている。戦力アップに成功した印象だが、もっとも今季の補強の目玉だったクエンカが開幕前に負傷離脱。不測の事態により、方向転換を強いられそうだ。

■浦和レッズ
IN:4人 OUT:8人

浦和も神戸同様に動きは少なかった。他クラブから獲得したのはレオナルドとトーマス・デンの2人のみ。超高校級のルーキー武田英寿の獲得もあったとはいえ、昨季低迷したチームとしては物足りなさを否めない。補強策の成否は、カテゴリーをまたぎ2年連続で得点王に輝いたレオナルド次第。ルヴァンカップでさっそく結果を出したこのストライカーが、今季の浦和の浮沈のカギを握る。

【△=不安】
■サンフレッチェ広島
IN:9人 OUT:8人

昨季、得点力不足に泣いた広島にとって、この課題をクリアすることが今季の重要なポイントとなる。点の取れるタレントの確保が求められたなか、エゼキエウと永井龍を獲得している。もっとも前者は日本での実績がなく、後者もJ1で6得点しか記録していない。ともにチームに劇的な変化をもたらす人材とは言い難く、既存の戦力の組み合わせによって、得点力アップのテーマに挑むことになりそうだ。

■北海道コンサドーレ札幌
IN:7人 OUT:1人

札幌は他チームからの補強がドウグラス・オリベイラとカウィン・タンマサッチャーナンの外国籍選手2人のみ。いずれもバックアッパーの印象は拭えず、昨季からの戦力アップとは言い難い。3年目を迎えるミハイロ・ペトロヴィッチ監督のもと、既存のメンバーを軸とした継続路線で臨み、スタイルを成熟させることが最大の強化なのだろう。そのクラブの方針は評価されるべきことだが、その選択は果たして……。

■清水エスパルス
IN:14人 OUT:11人

昨季、横浜FMでコーチを務めていたピーター・クラモフスキー監督が就任した清水は、スタイルの大幅変更が予想される。かつて広島でプレーしたティーラシンをはじめ、外国籍選手を多く補強したが、絶対的エースだったドウグラスを失ったのはやはり痛恨。海外移籍を決断した松原后の穴も小さくなく、戦力ダウンは否めない。

■サガン鳥栖
IN:17人 OUT:16人

鳥栖も、昨季の攻撃軸を担ったクエンカの移籍はマイナス材料。小野裕二もG大阪に籍を移している。昨季の京都で輝きを放った小屋松知哉のブレイクはもちろん、既存の戦力の台頭が求められるだろう。

■湘南ベルマーレ
IN:18人 OUT:20人

今オフの移籍市場で最もダメージが大きかったのは湘南だと思われる。山根視来をはじめ、杉岡大暉、山崎凌吾、秋元陽太ら昨季の主力が次々に流出。大岩一貴、茨田陽生、石原直樹らを獲得したものの、“湘南スタイル”の体現者たちが複数抜けたことで、苦しい戦いを余儀なくされそうだ。

■横浜FC
IN:13人 OUT:10人

13年ぶりにJ1の舞台に戻ってきた横浜FCは、六反勇治、マギーニョ、小林友希とJ1クラブから戦力を確保。昨季の京都で結果を出した一美和成を迎え入れている。それでも六反を除けば、いずれもJ1での経験値に乏しい選手たちばかりで、トップレベルで戦えるかは未知数な部分もある。三浦知良、中村俊輔、松井大輔とレジェンド級のベテランは揃うが、チームの軸を担う中堅・若手の戦力にはやや不安が付きまとう。

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