【G大阪】「自分が出られないのは――」遠藤保仁が語る自身の現状と確固たるサッカー観

熟練の技巧は一際際立っていた

[J1第15節]磐田 0-0 G大阪/6月15日/ヤマハ

その配給力に、改めてため息がもれた。

敵地での磐田戦、G大阪の背番号7、遠藤保仁は65分に髙江麗央と代わって途中出場すると、中盤の深い位置でテンポ良くボールを動かした。近くにいる味方とのなんでもないパス交換でリズムを作る。逆サイドにビシッとロングフィードを通す。敵の選手を裏返す縦方向を狙った浮き球のパスも正確無比。若い選手が多いチームの中で、39歳の熟練の技巧は一際際立っていた。

リーグ戦では3試合ぶりの出場だった。11節の鳥栖戦は45分で途中交代。翌節の大阪ダービーはベンチスタートで81分からピッチに立つ。その後は2試合連続で、メンバー入りはするも出場の機会は訪れなかった。

「自分が出られないのは、何かしらの原因があって出られていないわけで。それが何かというのは、監督が判断することですし。自分がやるべきことは、練習からやっています。自分の持っている力をしっかり出すのがプロ。あとは、監督が決めることなので」

自らの置かれた立場について、遠藤はそう語る。現状は不動のレギュラーとは言えないが、磐田戦では限られたプレータイムのなか、その存在価値を存分に表現していたと思う。

若手主体のチーム事情が影響しているのか、今のG大阪はよく走るし、攻守両面でアグレッシブに振る舞っている印象だ。常にテンションが高く、激しくプレーする。ここに、絶妙なタメを作るなど緩急をつけたゲームコントロールができる遠藤がいれば、さらにチームは柔軟に戦えるのではないか。

そんな考えをぶつけてみると、「ハードワークを求められる現代なので」と応じた遠藤は、さらに次のように続けた。

「それは監督の狙いのひとつだとは思います。そこで何をやるべきかは、個人個人の判断に任せられる。前に早く行くサッカーをやるなら、テンションが高くてもいい。要は、相手のゴールにボールを入れる競技なので。早く攻められれば、それが一番いい」

そう言った後の言葉に、遠藤のプライドが滲み出ていたような気がした。

「ただ、早く攻められないことが多いので。そういう時に何をしないといけないかっていうのは、フィールド上の選手が考えてやるべき」

ゴールに行けば行くほど、冷静で、より楽しく」

 もちろん、“前に早い攻撃”を否定しているわけではない。それもひとつの手段だと、遠藤は捉えているだけだ。「90分間、ほとんどの時間でボールを握るのは難しいですけど」との考えもある。ただ基本的には、「相手の嫌がること」に重きを置いている。

「それが早い攻撃なら、それでいいし、ポジションチェンジをしながら、相手がマークしづらいところに動くとか、ゴールに行けば行くほど、冷静で、より楽しくプレーしなければいけないとか。

全部が全部、ゴールに向かっていくのがサッカーではない、と。そのへんは、経験のある選手もいるので、上手く若手と一緒になって、やっていくべきだと思います」

飄々とした語り口調は相変わらずだが、確固たるサッカー観が伝わってくる。その言葉にも、プレーにも深みがある。惜しむらくは、この日は磐田の中村俊輔がベンチ外だったこと。日本サッカー界で一時代を築き、豊富な経験を持つふたりの競演を見たかったのだが――。

「俊輔とはちょっとしゃべりましたよ。(大久保)嘉人とも久しぶりでしたし。元気な姿を見れて良かったです。俊輔ですか? 会場にいましたけど、もう帰ったんじゃないですか」

そんなカジュアルな口ぶりも、実にヤットらしかった。

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