若き日本代表の冒険は準優勝で幕――痛感させられたブラジルとの「差」、東京五輪への「大きな伸びしろ」

47回目のトゥーロン国際大会が15日に閉幕した。同日行われた決勝戦では、U-22日本代表がU-22ブラジル代表に挑んだが、惜しくもPK戦の末に敗北。結果的には準優勝となった。しかし、ピッチ上に感じさせた確かな「差」が、若き日本代表の今後の飛躍を予感させた。

日本は圧倒的強者ブラジルに善戦

優勝したブラジルの強さは圧倒的で、失点したのは決勝のみ。90分で勝ち越せなかったのも決勝のみで、5試合16得点1失点という圧倒的な戦績で駆け抜けた。大会のベストプレーヤーに選ばれたドウグラス・ルイス(マンチェスター・シティからジローナへ期限付き移籍中)を筆頭とする選手たちの中から必ずビッグネームが出てくる。そう確信させる戦いぶりだった。

この相手に日本のイレブンは間違いなく善戦した。先制点は守備のミスも絡んだもったいない形だったが、そこで折れることなく粘り強く戦い抜けたのは、この大会で培ってきたチームとしてのベースがあったからこそ。FW小川航基(ジュビロ磐田)の得点により一度は同点に追い付き、後半は内容面でも改善した。PK戦の末に敗れたとはいえ、この大会でどの国も歯が立たなかった強敵に冷や汗をかかせたのは間違いない。横内昭展監督代行も、選手たちの健闘を称えている。

「選手たちが本当に我慢して、歯を食いしばりながらボールに食らいついて、相手に食らいついてやってくれた。先に点を取られても、ただ下を向くことなく本当にそれ以降もやり続けてくれた。本当に選手に感謝したい」

ピッチ上に表れた確かな「差」

ただ、その上で客観的な視点から、あるいは至って正直に言ってしまえば、個々の能力に関しては対戦前から大きな差を感じていた。実際にピッチで対峙した選手たちもその「差」に関する感覚は同じだった。

「正直、個人としては力の差を感じた。やっていて『こいつらにはかなわないな』というのを思い知らされた。今まで体感してきたレベルじゃないくらい上手くて、強くて、速い」

MF田中碧(川崎フロンターレ)が上のように振り返れば、MF高宇洋(ガンバ大阪)も以下のようにJリーグとの差を痛感する。

「5番(ドウグラス・ルイス)、18番(マテウス・エンリケ)、3番(リャンコ)はちょっと次元が違うなというくらいの差があった。Jリーグではなかなか経験できないレベル」

ボランチを組んだ田中と高の二人が上手くボールを狩れそうな状況を作っても、いわゆるデュエルの部分で歯が立たずにボールを運ばれてしまう。とにかくボールを奪えないシーンが頻出した。「特に5番と18番からは本当にボールを取れなかった」と高は脱帽する。田中も何に差を感じたかと問われて「奪われないでボールを運べる力」と答え、「それはやっぱりJリーグでは体感できない」と振り返った。J1クラブで戦っている二人の言葉だからこそ決して軽いものではない。

またこちらがボールを持ってからも、「5番には威圧感じゃないですけれど、『これは縦パスを出せないな』という感覚にさせる絶対的存在感があった」と高が言うように、特に前半は中央からの有効なパスが前線に通るシーンがほとんど作れなかった。

「トゥーロン組」には大きな伸びしろがある

とはいえ、ピッチ上の選手たちは「差」の存在を肌で感じながらも、怯むことなく、そして一致団結して戦い抜いた。そこは確かに来年の東京五輪を考えても、あるいはA代表にステップアップしてからの未来を考えても好材料だ。今の日本代表が国際大会で勝つには、そういう試合を拾っていく必要が絶対にある。

初招集の選手も多く、横内監督代行が「最初はどうなることかと思った」というくらいの集団だったが、「やっている内に、絆(きずな)みたいなものができた。このチームで勝ちたいとみんなが思えるようになった」と小川が言うように、思いを共有して戦う集団になれた。これも間違いなくポジティブな材料だった。勝てる代表チームというのは、チームスピリットあってこそである。

そして個人的には、絶対的な技量の「差」を感じたこと自体が個々人にとってポジティブに作用するという確信もある。やはり本気のブラジルと対峙できる決勝まで進めたことの効用は大きい。試合後の選手たちは、ブラジルとの「差」を口にしつつも、新たな気付きと思いを口にしていたからだ。

高は「楽しかったです」とハッキリ言った上で、「またこのユニフォームを着たいと思った。モチベーションが上がりました」と笑顔を見せた。「これだけ力の差がある。自分が目指している場所との距離感は、まだまだすさまじく遠いものだなと感じた」と少し自嘲気味に語った田中も「世界のトップレベルと戦うために一日一日やるしかないと改めて思った」と強調する。

短期間で急造チームをまとめ上げてモチベートした横内監督代行はこう総括する。

「この試合からまた学ばなければいけないし、この悔しさは忘れないでほしい。僕自身もそうですが、忘れないでほしいなと思います」

最高に熱い2週間を過ごした「トゥーロン組」のU-22日本代表の戦いはこれで閉幕となった。この戦いを忘れることなく財産にできた選手にはまだまだ大きな伸びしろがあるだろう。その成果はきっと、各所属チームでの試合、1年後の東京五輪、そしてその先のさまざまなステージで確かめられることだろう。

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