【U23】藤春、天国の父から引き継いだ「強さ」

リオデジャネイロ五輪のサッカー日本代表が21日、羽田空港からブラジルへ出発した。

DF藤春は、大学4年の7月に、父・末廣さんを亡くした。場所は父の仕事場の、東大阪市にあるシール工場だった。「亡くなる朝に、数か月ぶりに会ったん です。借りにというか、もらいに行ったんです、1万円を。久々で、特に会話はなかった。きょうだいの中でも一番、父親とはなぜかしゃべれなかったの で…」。拡張型心筋症を患い、入退院を繰り返しながら仕事を続けていた父は、職場で倒れ帰らぬ人に。55歳だった。

高校時代にテニスで全国優勝した姉・朋美さんや、サッカーで国体に出場した弟・隆矢さんと比べ、3きょうだいの長男は目立たなかった。東海大仰星高3年 時に、MFから左サイドバックに転向も、当時は50メートル7秒台と平凡タイム。しかし、大体大に進学し、坂本康博監督の指導の下で、素質が開花した。最 初の3歩を外側に踏み出すウサイン・ボルト流のスタートダッシュを取り入れるなどフォームを改良し、50メートルは5秒8と飛躍的に伸びた。

性格は積極的なタイプではないが、サッカーでは誰にも負けたくない、という熱い心を持つ。大学2年時にチームが総理大臣杯で優勝した中、試合に出られず 仲間たちに隠れて号泣したほど。父が亡くなったのは、その頃だった。「お父さんは(余命)あと1年と言われてから5年生きたんです。負けず嫌いやから、と お母さん(洋美さん)は言っていた。だから最後まで仕事もしていたのかな」

長男として家族を守ると覚悟を決め、プロの世界に飛び込んだ。今でも吹田市にあるG大阪の練習場から離れた東大阪市で、母が住む実家近くで暮らす。かわした言葉は少なくても、父から引き継いだ強さを持った男は、ブラジルで日本のために走る。

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