【G大阪】代表候補の丹羽大輝が、横浜のエース・アデミウソンに助言!? 「最後のところがちょっとないなと」 SOCCER DIGEST Web 5月31日(日)7時7分配信
残り20秒――。満身創痍の三冠王者が、横浜戦の土壇場で同点劇を演じた。
主役は60分から出場したパトリックだ。この日のG大阪が放ったシュート数は7本。後半に至っては2本のみだが、それはいずれもパトリックによるもの。 0-1の劣勢で迎えたロスタイム、試合終了まで残り20秒となった刹那、遠藤保仁のFKからパトリックが頭で合わせて辛うじて同点に追いついた。
この日、負傷を抱える岩下敬輔、疲労の色が濃いパトリックがベンチスタートとなったが、今野泰幸の不在も大きく響いたと言える。出場停止で攻守の要を欠くと、チームはどこか足が地に着かないような状態で、これまでのような攻撃の力強さと守備の安定感が鳴りを潜めた。
今野の不在時と出場時のデータを比較すると、不在時は6試合で「0勝3分3敗」、出場時は14試合で「12勝1分1敗」。その他の内訳も大きな違いが出 ている。横浜戦の低調な内容には様々な原因が絡んでいたとはいえ、今野という要石を抜かれたチームは終始グラグラと揺れて、バランスを欠いた 印象は否めない。
横浜戦後、CBでフル出場した丹羽大輝を取材エリアで捕まえると、話は多岐に渡った。苦戦の原因や相手アタッカー陣の印象、自身のパフォーマンスや第1ステージの優勝争い――。先日、日本代表候補に初選出された男がじっくりと語ってくれた。
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■横浜戦の内容と結果について
「こっちの攻撃も単発だったから、引き分けが妥当」
先制点を与えてマリノスが思った以上に引いてきたので、こちらがなかなか崩せない状況が続きました。先制点がゲームの展開を大きく左右した形ですね。あ の失点がもったいなかった。0-0でやっていれば、マリノスも前に出てきただろうし、こっちのカウンターもハマったかもしれません。
ただ、こっちの攻撃も単発だったから、引き分けが妥当かなとも思う。最後に追いついて引き分けたのは、僕らとしては大きい。もしかしたら、この勝点1が終盤になってすごく大きなものになるかもしれない。ポジティブに捉えていい勝点1です。
■同点に追いつけた要因について
「2点目を取られずに粘ったからこそ、ラストプレーにつながった」
追いつけた要因としては、僕らが1点差で我慢できていたから。(終盤に)喜田(拓也)くんにバッーとドリブルされて、伊藤翔が右で空いていたけど、あそ こでパスを出させずに、オグ(小椋祥平)か誰かが頑張って戻った。普通だったら諦めてやられてもおかしくなかったし、あれで2点目を取られていたら試合が 終わっていたと思う。そういうところで粘ったからこそ、ラストプレー(終了直前のFK)につながった。
僕らは勝ち癖が付いているし、変にゲームを壊したくないというのもあった。だから僕的には途中まで0-1でもOKというか、ウチが1点取れば、勢いで2 点目も取れるという攻撃陣に対する信頼感もあった。今日は最終的に1-1でしたけど、85分ぐらいに1点取っていれば逆転できたんじゃないかなというぐら い、攻撃陣に信頼を置いている。だから、焦りというのは終始なかったです。
■横浜戦で苦戦した原因について
「貴史とリンスの守備の運動量は、良い時に比べれば半分ぐらいだった」
(宇佐美)貴史とリンスの2トップのところで(守備の)スイッチが入らなかった。相手のアタッカー陣はアデミウソン、(齋藤)学、(藤本)淳吾さんたちで 高さがないと分かっているにもかかわらず、ゴールキックをクイックでつながれて、(G大阪の)自陣までボールを運ばれた。ゴールキックの時にファビオとボ ンバーさん(中澤佑二)に付いて、GKに蹴らせれば僕らは撥ね返せるので、そのセカンドボールを拾うこともできたと思う。
それはハーフタイムにリンスに伝えて修正した。クイックでつながれると、もう一回ブロックを下げないといけない。そこからFWがまた守備をして、ボランチにつけられて、サイドに振られて……となると消耗してしまう。
最終的に(パス回しから)失点したわけではないけど、もっと効率的な守備ができたと思うし、2トップの守備の運動量は良い時に比べれば半分ぐらいだった。そのへんは僕から前に注文しないといけないし、それを怠ると最終的に失点につながってしまう。
リンスはリーグ戦で久々に先発してフレッシュだったわけで、攻撃的な選手なのは分かっているけど、(長谷川)健太さんのサッカーはそういうわけにはいかないと思うので。貴史もそう。代表から戻った時ぐらいは守備を求めたい。良い時は勝手に走ってくれますからね。
■地震の影響による10分間の中断について
「『西村さんが分からなかったら、俺らどうなるんですか?』と(笑)」
地震があった時は気付かなくて、主審の西村(雄一)さんに「どれぐらい中断するんですか」と確認したら全然分かっていなくて、「西村さんが分からなかっ たら、俺らどうなるんですか?」という話をしていた(笑)。サイドに行って副審の相樂(亨)さんに確認しても、「確認中だから、何分中断になるか分からな い」と言われました。
僕らもどのタイミングで(心身の)ピークを持って行ったらいいか分からず、とりあえず気持ちだけプツンと切らさないようにした。パト(パトリック)が入ってセットプレーの守備も変わっていたので、そのあたりの確認をしていました。
■斎藤学について
「試合後に話したら、『まだまだっすね』ってへこんでいました」
スカウティングで、学が飛び出したり、中に切れ込んでワンツーするのは分かっていたし、スペースを与えるとドリブルで出てくるので、少し誘いながら前へ出ようとしたところで奪うというのを、僕の中ではイメージしていた。
学に前を向かれて仕掛けられるのは嫌だけど、ドリブルされても身体を張って止めれば問題ないと思っていた。最後のところでみんなが身体を張ってペナ(ペ ナルティエリア)の前で侵入を防いだし、決定的な場面はあまり作らせなかった。個の能力で言えば、学の個人技はJリーグでも飛び抜けているし、前半はヨネ (米倉)が結構抜かれていたけど、そこは僕や周りがカバーに入って粘り強く対応できた。
マネジメント(会社)が一緒で個人的な親交もあるし、特長も頭の中に入っているので、1対1はやっていてすごく楽しかったです。すごく真面目で良い奴な ので、それがサッカーにも出ているし、やっぱり良い選手だなと。ただ試合後に話したら、『まだまだっすね』ってへこんでいました。
■アデミウソンについて
「冷静にパスも選択できるようになると、もっと嫌な選手になる」
初めての対戦でしたが、学と同じように良い選手だと思いました。ただ、最後のところがちょっとないなと。このタイミングでシュートを打ってくるかという 感じで、僕的にはラッキーなところもありました。切り返されてパスを出されたり、あと2、3回こねられたら嫌だなという時に打ってくれたので。多分、本人 もゴールが欲しくて、前後半とも結構早いタイミングでシュートを打っていましたよね。あのへんで冷静にパスも選択できるようになると、もっと嫌な選手にな るのかなと思う。
地震で一時中断する時にバテ気味だったので、正直、僕はそのままやりたかった。アイツは息が上がっていて、そろそろ代わるかなと思っていたら地震で中断 してしまったので。ただ、やっていて楽しかったし、終わった後もアイコンタクトして、(サムアップのポーズをしながら)OKみたいな感じで、お互いに ちょっと分かり合えたと思う(笑)。
■自身のパフォーマンスについて
「身体も動いているので、本能に任せて動いているという感じ」
今は結構、見えているというか、相手の心理状況と味方の状況がすごく分かる。その判断が自分の中で整理できていて、前に出てインターセプトを狙う時、行 かないで遅らせる時のメリハリができている。“行く”と決めた時は高い確率でインターセプトをできるし、最近の試合は身体も動いているので、本能に任せて 動いているという感じです。
今のところ調子は良いですが、これから調子が落ちた時にどうするか。それから、チームが苦しい時や守らなくてはいけない時こそ、自分が最後の砦にならな いといけない。今日も最後のところで身体を張れたので、次は攻撃の第一歩になりたい。前半もビルドアップで何本か良いパスを入れられたし、ゴールに直結す るようなくさびのパスなどは、今後の課題ですね。
■好プレーを支える自身のメンタルについて
「良いプレーをしたら相手にも『良かったよ』という感じで言います」
単純にサッカーが楽しいし、楽しんでいる。良い相手と、良い状況が揃うなか、自分のプレーが上手く行こうが行くまいが、まずサッカーが楽しい。プロに なった当初は、小学生の頃に得た感覚のままでプレーできなかった。でもこの年になって、小学生の時に初めてボールを蹴った頃の感覚で、すごくサッカーを楽 しめている。
だから試合中も笑顔になると思うし、相手に対しても敬意を払っているから、良いプレーをしたら相手にも『良かったよ』という感じで言います。逆に僕が止 めても相手に対する敬意は変わらない。僕が良いプレーできたのは、相手の仕掛けがあったから。今はそれぐらいのメンタルでプレーできている。
『失点したらどうしよう』、『負けたらどうしよう』という怖さはまったくないですね。90分間、日産スタジアムで、素晴らしい相手や味方と一緒になってサッカーができるという喜びがある。本当に心の底からそう思っているので、楽しいな、幸せだなと思ってやっています。
■優勝争いについて
「第1ステージ優勝といっても、真のチャンピオンではないと思っている」
変な感覚ですよね。あと3、4試合で(第1ステージの)優勝が決まってしまう。例年ならまだ半分も消化していないなかで、優勝関連の話をマスコミの方か ら聞かれますし、僕らも意識しないといけない。どこが優勝するかまだ分からないですけど、第1ステージ優勝といっても、真のチャンピオンではないと思って います。もちろん僕らも両ステージで優勝を狙いますが、やっぱり年間王者が真の王者という気がします。
(2ステージ制は)Jリーグが盛り上げるためにやっている策ですよね。前期で一度ピークを持ってきて、後期にも持ってきて、そして最後にチャンピオンシッ プで持ってくる。つまり3回ピークがある(笑)。その意図はすごく分かるし、それに乗っからないといけないと思いながらやっています。