G大阪の新スタジアムに現れた魅惑の攻撃トリオ。その名は「UAF」

FCバルセロナの「MSN」(メッシ、スアレス、ネイマール)ならぬ、「UAF」が新シーズンのガンバ大阪の目玉になるかもしれない。

昨シーズン、前人未到の4冠を狙ったG大阪は、天皇杯こそ連覇したものの、チャンピオンシップ2位、ナビスコカップ2位、ACLベスト4と、あと一 歩届かなかった。届かなかった”あと少し”を埋めるべく、今オフに補強した大きな2枚のピース――。それが、横浜F・マリノスから獲得したFWアデミウソンとMF藤本淳吾だ。

新設された吹田サッカースタジアムの「こけら落とし」となった名古屋グランパス戦ではふたりとも先発で起用され、左サイドの宇佐美貴史、1トップのパトリックととともに攻撃陣を形成したが、さっそく新加入の彼らが個性を放った。

トップ下に入ったアデミウソンは、狭いエリアでも素早くターンし、ドリブルで相手を引きつけて1トップのパトリックや宇佐美に何度もパスを出した。

「そこでターンするんだっていうときもあれば、周りをシンプルに使うときもあって、予期せぬ変化を与えてくれる。それにすごく当てやすい」

ボランチの今野泰幸も賛辞を惜しまない。宇佐美とはスピードもリズムも異なるタイプのドリブラーで、アデミウソンを使った中央突破やショートカウンターは、今シーズンのG大阪の大きな武器になりそうだ。

そして、それ以上に、チームに新しい化学反応をもたらしそうなのが、右サイドに入った藤本だ。右サイドでレフティ特有の半身の姿勢でボールを受けて ポイントを作り、左足のクロスや中央に潜り込んでのスルーパスで攻撃に違いを生み出す。それだけでなく、右ボランチの遠藤保仁やアデミウソンにボールを預 けて飛び出していくなど、受け手にもなった。

「足もとでボールを持たせれば、何でもできる選手。いいパスを出したり、いいタメを作ったりしてくれる」と遠藤が言えば、今野も「(藤本)淳吾は頭のいい選手で、ポジショニングも素晴らしい。僕らが淳吾を生かせれば、決定機の数はもっと増えると思う」と語った。

藤本が右サイドに入ることで恩恵にあずかりそうなのが、宇佐美である。

4-2-3-1の左サイドハーフでプレーする場合、2トップのときと比べてゴールまでの距離がどうしても遠い。ましてや彼は、ドリブル突破もできれば、ラ ストパスも出せるため、フィニッシャーよりもチャンスメイクの割合が高まっていた。だが、右サイドで藤本によってタメとチャンスが作られるようになれば、 宇佐美がゴール前に入っていく時間が生まれ、フィニッシュに持ち込む回数も増える。

右で作って、左で決める――。

かつてザックジャパンは、香川真司、遠藤、長友佑都の3人が形成する左サイドでチャンスを作り、本田 圭佑や岡崎慎司が決めるという攻撃パターンがあった。だが、それとは逆――藤本と遠藤による右サイドでチャンスが作られ、宇佐美やパトリック、アデミウソ ンが決めるというパターンが今シーズンは確立されそうだ。

ただ、気になったのは、アデミウソンのオフ・ザ・ボールでの貢献度の低さだ。

長谷川健太監督から「攻守の切り替えについてもっとも要求されている」(アデミウソン)ため、前半は頑張ってボールを追うシーンも見られたが、時間が経つにつれてボールを追えなくなったり、絶好のカウンター機に歩いていたりした場面があった。

もともと宇佐美の左サイドでの起用は、倉田秋がトップ下に入ることが前提としてあったように思われる。バランスが取れ、気が利き、運動量も備える倉田が トップ下から飛び出したり、前線から守備をしたり、ときに宇佐美と入れ替わってサイドに流れたりして攻守両面でのプラスが見込めるから、宇佐美の得点力が 多少落ちたとしても、宇佐美をFWで起用する4-4-2ではなく、左サイドに回した4-2-3-1に主戦システムを変えたはずだ。

だが、アデミウソンをトップ下で起用するとなると、守備面で隙や綻(ほころ)びが生まれる可能性がある。長谷川監督は進化のために、それに目をつぶるのかどうか……。

もっとも、まだプレシーズンの時期のため、連係面だけでなく、アデミウソンのコンディションや戦術理解度も100パーセントの状態に達しているわけではないだろう。今はネガティブな面よりも、ポジティブな面に目を向けたほうがいいかもしれない。

アデミウソンと藤本の加入による相乗効果として、宇佐美への期待について、今野はこんなふうに言う。

「宇佐美は、ゴールはもちろん、チャンスメイクも何でもできる選手だから、今年はバロセロナのネイマールのような活躍をしてくれるんじゃないかって思います」

世界中のどこに出しても恥ずかしくないサッカー専用スタジアムを手に入れたG大阪だが、新スタジアムだけでなく、「UAF」(宇佐美、アデミウソン、藤本)が繰り広げる魅惑のアタックにも注目したい。

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