日本に「“行く”ではなく“帰る”です」。ジェバリが強調するG大阪への愛。街の風景も「戦う理由」に
苦しい戦いが続くガンバ大阪に、イッサム・ジェバリが勝点1をもたらした。10月17日の明治安田J1リーグ第10節・清水エスパルス戦。1点を追う後半アディショナルタイムに同点ゴールを決めたストライカーは、試合後、自身の得点以上にチーム全員で戦い抜いたことを強調した。来日4年目を迎え、日本やホームタウンへの愛着を深める背番号11。苦境にあっても仲間を信じ、ともに成長しながら勝利を目指す、その思いに迫る。(取材・文:高村美砂)
●土壇場の同点弾以上に強調した“チーム全員で戦い抜いたこと”
J1リーグで見れば9試合を終えて、8試合勝ちなし。直近の試合では4連敗中。苦しい戦いが続いている中で迎えた10月17日の第10節・清水エスパルス戦。
アウェイの地で1点を追いかける状況下、90+5分にイッサム・ジェバリはチームに勝点1をもたらす同点ゴールを叩き込んだ。岸本武流から縦に送り込まれたロングボールを胸トラップで収めると、相手DFに囲まれながら巧みにコースを見出し、右足を振り抜く。その直後に、試合終了のホイッスルが鳴った。
「最後の最後で同点にすることができ、勝点1を取れて嬉しい。オーストラリアでのACL Elite・ニューカッスル・ジェッツ戦を終えて長距離を移動し、中3日で今節を迎えるというタフな試合でしたが全員が戦い抜いた結果。明神(智和)監督も戦術的なところを含め、『一丸となって戦おう』と僕たちを送り出し、ピッチに立たせてくれた。全員で取れた勝点1だったと思います」
自身が決めたゴール以上に、ともに戦う仲間を思いやる姿は、第5節・V・ファーレン長崎戦の後にも見た姿だ。長崎戦も清水戦と似たような試合展開になった中で、この時も、90+4分に同点ゴールを叩き込んだジェバリは試合後、自身のゴールを喜びつつも、ともに戦った仲間を称え、『チーム』としての勝ち点1だと強調していた。
●「ともに成長しながら勝つことを目指し続けるだけ」
「前半から思うように試合を進められず、後半も2失点を喫して苦しい戦いになりました。結果的に土壇場で追いつくことができましたが、僕自身は、試合は常に『90分』で決着がつくものだと受け止めています。きょうも前後半、いろんな局面はありましたが大事なのは、チームとしてどう戦えたか、です。実際、前半に出場した選手が、どうにか状況を打開しようと頑張ってくれたから終盤、相手の足が少し止まって僕たちの攻撃が活きたのかもしれません。
僕を含めて後半から出たメンバーも、前半の戦い、内容を参考に自分たちのやるべきことを整理してピッチに立ちました。そのことからもわかるように、誰が点を取ったのかはあくまで見た目の話で、すべての得点、結果はチームが90分の戦いを通して得たものだと思っています。もちろん、ファン・サポーターの皆さんのために勝ちたかったという思いはきょうも残ってしまいました。
ただ、試合に出た若い選手を含めて、自分たちのキャラクターはそれぞれに魅せられたと思っていますし、きょうのように諦めずに戦い抜く姿は必ずチームの成長を助けてくれることでしょう。そして、全員でそれを追い求めることが、いつか必ず勝利という結果に繋がると思っています。僕はガンバというグループを素晴らしい選手の集まりだと信じています。だからこそ、これからも仲間を信じて、ともに成長しながら勝つことを目指し続けるだけだと思っています」
その言葉に漂う『ガンバ愛』は、在籍4年目となる今シーズンも揺るぎない。来日したばかりの2023年は、家族も含めて慣れないことも多く「難しい時間を過ごした」と振り返るが、今では当時の姿が思い出せないほど、日本を、クラブを、ホームタウンをこよなく愛し、日常生活を含めた日々を心から楽しんでいる印象だ。
●「僕たちはもう自分の国に“帰る”」。ジェバリがガンバ大阪のために戦う理由
「特別シーズンを終えて、オフシーズンは母国・チュニジアに戻っていましたが、僕たちはあっという間に日本に帰ってきました。家族にはもっと長い期間、残ってもいいよと伝えたのですが『一緒に帰る』と。周りからも『もうここを離れるのか?』と驚かれましたが、その時に僕たちは自然と『そうだ、僕たちはもう自分の国に“帰る”』と口にしていました。“行く”ではなく“帰る”です。つまり、僕たち家族にとって大阪、住まいのあるホームタウンは今や、愛すべき『我が家』です。
とても住みやすさを感じていますし、ここでの暮らしを気に入っています。街にガンバのラッピングをしたモノレールが走っていたり、店頭でフラッグを見かけたり。クラブと密着して街があると感じられるのもすごく嬉しい。それ以外にも、モフレムのチャームをつけたバッグを持っている人、カップルが揃ってガンバのシャツを着ている姿など、クラブの『一部』であるファン・サポーターの皆さんがガンバを愛している証を街のあちこちで見かけるのも、僕がガンバのために戦う理由になっています」
もちろん、ことサッカーにおいても、シーズンを重ねるほど、Jリーグやガンバのサッカーへの適応を見せていることは、2025年のJ1リーグで自身最多の7得点を刻んだことや、今年の5月に『タイトル』を手にしたAFCチャンピオンズリーグTwo(ACL Two)2026/27での活躍からも明らかだ。彼は同大会のMVPにも選出された。
「ACL Twoにおけるガンバでの初タイトルも、MVPもとても名誉で、嬉しいとしか言いようのない出来事でした。僕はガンバに加入した最初の日からここでカップを掲げたい、タイトルを手にしたいと口にしてきましたが、それがようやく叶ったのです。それまでの道のりは下りも上りもある『ジェットコースター』のような毎日でしたが、すべてはこの歓喜の瞬間のためにあったと胸を張って言えます。
僕はいつも、プロサッカー選手として、個人のエゴではなく、チームの一人として、チームのために何ができるかを考えてプレーしています。いつ、どのチームでも、です。だからこそ、これからもガンバのために、このエンブレムのために、戦い続けようと思います」
そんな思いを、今も胸にしっかりと携えて戦い続けているジェバリ。冒頭に書いた清水戦後にも、改めてファン・サポーターへの思いを口にし、次節に目を向けた。
「本当にいつもたくさんのファン・サポーターがスタジアムに足を運んでくださっていることに感謝しています。彼、彼女たちのためにも僕たちがすべきことは、この勝点をしっかり次に繋げ、勝ちを目指すこと。次節に向けて仲間とともにまたしっかりと準備しようと思います」
チームが苦しい状況下に置かれている今も、ジェバリの言葉には一点の曇りもない。だから、彼は最後の1秒まで、仲間とともにゴールを、勝利を目指し続ける。
(取材・文:高村美砂)



