「正直、今のチームはジェバリが調子いいかよくないか…」G大阪が抱える“依存”。主将・中谷進之介が示す「一歩目の道筋」
AFCチャンピオンズリーグ2(ACL2)王者のガンバ大阪が苦しんでいる。明治安田J1リーグでは開幕節こそ勝利したものの、その後は勝ち星がなく、直近では最下位・ジェフユナイテッド千葉に今季初勝利をプレゼントしてしまった。シーズン開幕前の監督人事に揺れ、けが人も多発しているが、それだけが不調の原因ではない。主将の中谷進之介が千葉戦後に語った本音とは。(取材・文:元川悦子)
●異例の監督人事に揺れたガンバ大阪が不調
ガンバ大阪は、今年7月のオーストリアキャンプ直前に2026年頭からチームを率いていたイェンス・ヴィッシング監督がアル・イテハド(サウジアラビア)に引き抜かれるという異例の事態に直面した。
明神智和、遠藤保仁という両レジェンドを監督、ヘッドコーチに引き上げ、2017年U-20ワールドカップ(W杯)で堂安律や板倉滉らを率いたベテラン・内山篤コーチも招聘。基盤を固めて今季に挑んだはずだった。
J1開幕・浦和レッズ戦とAFCチャンピオンズリーグ(ACL)プレーオフ・江原FC戦で連勝したところまではよかったが、その後は停滞している。J1では水戸ホーリーホック、名古屋グランパス、サンフレッチェ広島、V・ファーレン長崎に4戦未勝利と足踏み状態に陥った。
5月のACL2制覇もあって、開幕前は「26/27シーズンは優勝も狙えるのではないか」という期待も高まったが、ふたを開けてみれば負傷者が続出。成長株・名和田我空もシャルルロワにレンタル移籍してしまい、戦力的に厳しくなっている。
苦境を乗り越えるべく、挑んだのが9月6日のアウェイ・ジェフユナイテッド千葉戦。2日の長崎戦から中3日ということで、明神監督もスタメンを4人入れ替えた。デニス・ヒュメットやイッサム・ジェバリら主力を投入し、ここまで5連敗の最下位・千葉から確実に勝ち点3を手にしようとした。
ところが、彼らは開始20秒に失点という最悪のスタートを余儀なくされた。
●ガンバ大阪の攻撃が停滞した要因
食野亮太郎がマテウス・インディオとの競り合いに敗れ、いったんは中野伸哉がフォローしたものの、相手右SB石尾陸登が一気に前進し、右クロスを上げた。
これがガンバ守備陣の合間に入り、最終的に矢村健がシュート。守護神・一森純も反応できず、いきなりのビハインドを背負うことになった。 「セカンドボールを拾われて、簡単にクロスを上げられた。入りのところで勢いを持っていかれたなというところです」と淡々と語るのは、キャプテンマークを巻く中谷進之介だ。
最終ラインの統率者であり、チームリーダーでもある彼はここから巻き返しを図るべくチームを鼓舞したが、攻撃の組み立てがスムーズにいかない。 今のガンバはジェバリにボールを預けてギアを入れるのが定番だが、相手ももちろん研究してくる。
この日の千葉はボランチ・小林祐介ともう1枚がジェバリを徹底マークし、ボールを収めさせまいと対策を講じてきた。
その結果、ボールを失い、カウンターを繰り出される形が繰り返され、チャンスらしいチャンスが作れないまま、ゲームを折り返すことになった。
後半に入ると、新戦力であるイーライ・アダムスがインサイドに絞ってゴールに近いところでプレーするようになり、攻撃のギアが上がった印象もあった。
●「今のチームはジェバリが調子いいかよくないか」
しかし、そこでミスが出てしまうのが今のガンバである。52分の失点シーンは千葉の右MF杉山直宏から矢村健を経由して、石川大地がシュート。これを一森がいったん弾いたものの、こぼれ球を拾った津久井匠海がゴールした形だった。
その後、ガンバは、加入したばかりの角昴志郎らを投入。最後は中谷も前線に上げてガムシャラに点を取りに行ったが、2点のビハインドを跳ね返すことができず、昇格組の相手に苦杯をなめた。リーグ5戦未勝利・13位転落という迷路に迷い込んでしまったのである。
「百年構想リーグでよかった形を継続したいですけど、それができるだけの強度が足りているかと言ったらまったくない。長崎戦でもそうでしたけど、改善できずにいるってところですね。
正直、今のチームはジェバリが調子いいかよくないか。そこで僕らのパフォーマンスが決まってしまう。他に起点ができなかったので、ホントに彼のパフォーマンス次第なんです。それができなかったときに何を出すかという引き出しは今のところ持ち合わせていない」
中谷も険しい表情を浮かべるしかなかった。
予期せぬ監督交代、その後の2カ月の負傷者続出や戦力の入れ替えなど、今季のガンバは想定外が続いている。
明神監督もこれまで育成の指導やトップコーチを歴任したものの、強豪クラブの指揮官を務めるのは今回が初めて。数多くの対応策や改善策を持ち合わせ、それを瞬時に出せるかというと難しい側面もある。
だからこそ、中谷はキャプテンとして支えていかなければいけないという思いが強いはず。
明神監督は柏レイソルユース出身で、中谷にしてみれば直系の先輩。「僕はミョウさんがレイソルにいた頃は見たことがないですね」とは言うものの、「監督がやりたいことの手助けをするというか、チームが疑いなく進めるようにやらなきゃいけない。その一歩目の道筋を作る選手が自分だと思っているので、もっとやっていかないといけないですね」と神妙な面持ちで言う。
●何がベストか「早く見つけないと」
ケガ人が多いというチーム事情についても「(ヴィッセル)神戸は勝ってますからね」とキッパリ。あらゆる逆風を言い訳にせず、自分たちで打開策を見出していかなければいけないという意識は高い。
こういうときこそ、百戦錬磨のリーダーのけん引力が重要なのだ。
さしあたって中谷がやれるとすれば、失点減に努めていくことだろう。
今季リーグ戦5試合のガンバの総失点数は11。これは千葉、浦和の15に次ぐ多さだ。上位陣の神戸が4、FC町田ゼルビアが5という数字だから、これ以上の失点の連鎖は許されない。
「奪ったボールを失うタイミングが早かったり、何もないところでボールを失ってカウンターを受けたりすることが目立つ」と明神監督も問題点を口にしていたが、それを減らすためのアプローチを中谷が率先してピッチ内で進めていくことが肝要だ。
ボランチの安部柊斗や鈴木徳真とも連係を強化し、ジェバリに依存しすぎないボールの運び方を模索することも、苦境打開の一案と言えそうだ。
「今は勝ちにつながる形を見つけたい。どういう形が自分たちにとってベストかというのを早く見つけないと。ACLも始まるし、ケガ人も多い中、本当に過密日程になるので、それをやっていく必要があると思います」
こう語気を強める中谷は果たしてガンバの救世主になれるのか。豊富な経験値を持つこの男に託される部分は少なくない。
(取材・文:元川悦子)



