<ガンバ大阪・定期便159>倉田秋と鈴木徳真、そして吉原優輝。3人のボランチが示した存在感。

 2026/27 J1リーグ第4節・サンフレッチェ広島戦で、今シーズン初めて『ダブルボランチ』を形成したのが、倉田秋と鈴木徳真だった。

 それまでのリーグ戦でダブルボランチを預かってきた安部柊斗や美藤倫とは違うタイプの二人が中盤をどう制圧できるかは広島戦の肝になる部分だったが、結論から言ってボランチの二人がしっかりと攻守を繋ぎながら、理想的に試合を進めたと言っていい。57分からJ1リーグデビューを飾った吉原優輝を含め、いずれもチームに躍動感を生み出すパフォーマンスだった。

■ダブルボランチが意識した、2つのこと。

 試合後の監督会見。明神智和監督が「本来のポジションではない中(直近の)天皇杯2回戦を含めて、いけるところまでいってほしいというタスクの中で素晴らしいプレーをしてくれた」と賛辞を送ったのが倉田秋のパフォーマンスだった。アカデミー時代はボランチでプレーしてきたものの、プロになってからは主にウイングやトップ下を主戦場としてきた倉田だが、この日は安部柊斗が出場停止、美藤倫が欠場という苦しい台所事情下、『明神ガンバ』では初めてボランチで先発に抜擢。倉田自身は試合後「運動量のところでチームに迷惑をかけた。もう一度鍛え直さないと」と反省を口にしたものの、中盤でうまく相手選手を引きつけながら効果的なパスを前線に送り続けるなど、本来の足元の技術や視野の広さを活かしたプレーが光った。

 また、鈴木もこの日がリーグ戦初先発だったが、直近の天皇杯・レイラック滋賀FC戦に続いて攻守の潤滑油に。両チームあわせても最多の11キロを走り抜き、存在感を示した。

「ミョウさん(明神監督)からもいけるところまで、と言われていたし、自分もそのつもりで臨みました。全体的には悪くない戦いだったと思います。今シーズンが始まって、公式戦では6試合目でしたが、前への推進力とか、ボールを奪った後、前に出ていくスピード、ボールを奪いにいく姿勢など、いいところが多く出た試合になった(倉田)」

「個人的にはいい調子でコンディションを上げてこれているし、あとは結果に直結するようなパスが出てくればいいなと思っています。あるいは、ゴールに繋がらなくとも、その1つ前のパスがもっと増えれば、もっとチームを勢いづけられるのかな、と。ただ、どうしたらいい? とか、何をしなくちゃいけない、ではなく、自分が何をしたいか、次はどうしようかな、相手をどう動かそうかな、どんなパスを入れようかなと、次のプレー、次のプレーって感じでプレーできているのは僕自身にとってポジティブな要素。そういう意味でも今日はいい試合でした(鈴木)」

 ダブルボランチを組む上で意識したのは、二人がつながってプレーしながらボールを前へ進めることと、いい距離感を保つことの2つだったという。

「試合前に徳真(鈴木)と話していて、ボランチから縦に、前にボールを配球できないと話にならない、と。その前への意識を強めるためにも二人がいい距離間を保ちながら、攻守に二人がしっかり繋がってパス交換をしようと言っていて、その距離間のところは終始、理想的にできたのかなと思います。ジェバリが前でボールをおさめてくれたり、諒也(山下)、亮太郎(食野)、デニス(ヒュメット)を含めて前にさえ出せばなんとかしてくれる、という信頼関係もあったから思い切って前にボールを配れた部分もありました。あとはボールが(前に)行って、戻るというシーンもあったので、できるだけボランチのところでボールを持って時間を作ることも意識しながらやっていました。僕の体力的な問題で動きが少なくなり、運動量のところは周りに頑張ってもらうことが多かったですけど、守備のところで入ってきたボールに対してはセンターバックも強くいってくれたおかげで、セカンドボールを僕と徳真でしっかり拾って前に繋げることはある程度できたと思っています(倉田)」

 「経験のある秋くん(倉田)がリードしてくれて、ボールの動かし方はすごく良かったと思うし、テンポ感も良かったと思います。試合前に話していた通り秋くんともいい距離間を保ちながらプレーできました。これはチーム全体がコンパクトに戦えたからだと思っています。それによって広島のセバスティアン アレー選手にボールが入った瞬間でもすぐにプレスバックできるポジションが取れていたし、実際にプレスバックしやすかった。前にパスを当てた時もジェバリ(イッサム)がしっかりおさめてくれていたことで、みんなもそこに連動して厚みを作れていた。今日は、試合前のロッカールームでもみんなが口々に『コンパクトに戦おう』と言っていましたが、それをしっかり表現できた試合だったと思います。ラインコントロールも、無理にでもガッと上げるということではなく、周りと声を掛け合い、連動してコントロールした中でボールを奪ったり、攻撃ができたシーンも多かったですしね。そういう意味では本当にチーム全体がバランスよく戦えた。全員がお互いを助けて、活かし活かされて、手を取り合って戦えたのが良かったんじゃないかと思います(鈴木)」

■広島に対して何をしたいか、ではなく、自分たちが何をしたいか。

 鈴木の言葉からも伺えるように、理想的に試合を運ぶ時間が多かったのは、チームとして終始、何をしたいか、何をすべきか、それぞれの考え、プレーを共有して戦えたことにある。

 実は試合前から鈴木は、その部分がもっとピッチ上で明確になっていけば、より理想的な戦いができるのではないか、と話していた。

「チームとしてやりたいことはあって、各々がやらなくちゃいけないこともわかっていて、ただ、今は序盤で、連戦もあって、暑さもあってと、障壁になるものがいくつもある中でそれを実現する難しさはあるな、と。そこは時間が解決する部分もあるとは思うんですけど、ただリーグの序盤で理想とはほど遠い試合が続いてしまうと、どうしてもチームが疑心暗鬼になってしまうところも出てくる。だからこそ、できるだけ早急に形にするか、とにかく勝つという結果を手に入れて勢いづくか、しかない。もちろんその両方を一度に実現できたら理想ですけど、そこが簡単にできるのならどのチームも苦労しないはずなので。今は粘り強く、バラけないで、各々がやらなくちゃいけないことをチームのためにしっかりやることが大事なのかなと。次の広島戦も僕自身はそういう意識で臨みたいし、自分がやるべきこと、これをやればチームはもっとスムーズに動くんじゃないか、円滑にボールが回るんじゃないか、っていうところをしっかりピッチで表現していければと思っています(鈴木)」

 その狙いに対するアンサーが先の言葉にもある「全員がお互いを助けて、活かし活かされて、手を取り合って戦えた」ということだろう。特に鈴木に関しては、前線にボールが入った際のポジショニングも効果的で、トップ下のジェバリや両ウイングと連動してボールを動かすシーンも目に留まった。

「今日は広島に対して何をしたいか、より、自分たちが何をしたいか、をすごく意識して試合に入りました。守備ではどうしたいか、攻撃ではどうしたいか。そこを明確に戦えたことが今日の試合で一番重要だったと思っています。守備ではコンパクトに、攻撃ではボールを動かしながら前進していく。その前進していく時も明確に『前に、前に』を意識して進んでいく、と。その中で自分たちは、こういうサッカーがしっかりやれるよね、という提案は1つできたのかな、と。僕はガンバに加入した時からずっと言っているように、いつもチームを助けられるパスを出したい、やっている自分がワクワクするサッカーをしたいと思っていますが、今日に関しては、こういうふうに動けばいいな、ってところにボールが動いていたし、こういうボールの回し方をするともう少しチャンスになるかもな、ってところにボールが入っていた。おそらくそれは試合を観ている人にも感じてもらった部分だと思いますが、そういうシーンが数多く出てきたことはポジティブに受け止めています。それによるワクワク感が勝ちにつながればよりベストでしたけど、ワクワク感が増えるほどチームはどんどん乗っていくと考えても、次につながる試合にはなったんじゃないかと思います(鈴木)」

ボール回しを潤滑にする役割を果たした鈴木徳真。センターバック2枚の間にポジションを取っていた広島・アレーへのケア、セカンドボールへの対応も素早く存在感を示した。写真提供/ガンバ大阪

 ただ、倉田も鈴木も、まだまだよくできる部分はあると声を揃える。今日のパフォーマンスが勝点1にしかならなかったことを踏まえても、だ。

「僕自身はまず、自分は運動量が持ち味やのにそこでバテちゃって、情けなかったというところで、鍛え直さないといけないと思っています。また、チームとしてもゴール前に出ていけるシーン、しっかり潰し切れるシーンも今日は多かったとはいえ、相手に決定機を作られたシーンもあって、純(一森)に助けられたことからも、もっともっと押し込んで、自分たちの時間をより敵陣で数多く作れるようになっていけたらいいなと思いました。あとは結果ですね。今日も内容的には悪くなかったとはいえ、ホームで勝つことが僕たちのやるべきことだし、引き分けで満足している選手は一人もいないと思うので。自分たちが目指すところはもっともっと圧倒するチームになることだからこそ、しっかり修正するところはして、いいところは伸ばして、チームとして強くなっていきたいです(倉田)」

「僕としてはもう少し相手の矢印が向いている方と逆に入れるパスとか、前に向いている矢印を敢えてフリックを入れて折るとか、そんなふうに相手の矢印をうまくいじるパスが増えてくると、意外性のある攻撃をもっと作りだせるんじゃないかと思っています。自分に対してもそういうパスをもっと増やせるようになりたいという欲もあります。あとはやっぱり、パス方向が前に向く回数をもう少し増やしたい。おそらく、僕を含めた全員があと1、2歩とか、立ち位置や体の向きをもう少し工夫することでもっと縦パスが入るようになるはずだし、縦パスの入るタイミングがもっと早くなれば受け手の選手にも、もう1〜2秒時間と余裕ができる。そうなると前線の選手もターンができたり、1つタメを作る時間ができるんじゃないか、と。そんなふうに全員が繋がって前に進むシーンがあと3つ、4つ出てきたら、確実に決定機が増えていくんじゃないかとも思っています(鈴木)」

■ガンバアカデミー育ち、吉原優輝のJ1リーグデビュー。

 そして、忘れてはならないのがJ1リーグデビューを飾った吉原優輝だ。

 今シーズンは直近の天皇杯・レイラック滋賀FC戦で89分から、センターバックでプレーしたのが唯一の出場だったが、この日は本職であるボランチで途中出場。ガンバ大阪ユース時代から憧れたホーム、パナソニックスタジアム吹田でのプレーにも「緊張することなくプレーできたし、楽しかった」と振り返った。

「(65分に)諒也くん(山下)に出した縦パス…相手の頭に少し当たりましたけど、ああいうところにパスを出したりするのが自分の持ち味なので、もっと前に前に、プレーしたかったです。今日は、前半から試合を見ていて、ジェバリ(イッサム)のところがめちゃ空いていたので、自分が入ってボールを取ったらまずジェバリを見ようという意識でプレーしていました。百年構想リーグ以来、2度目のパナスタでしたけど、たくさんのお客さんが入った前でJ1リーグデビューができて、ようやくここに立てたという気持ち。やってやろうという気持ちで臨みましたが、素直に楽しかったです(吉原)」

 87分に岸本武流が退場して以降は右サイドバックとしてプレーしたが、実は8月23日に戦ったU-21 リーグの対U-21 ファジアーノ岡山戦でも明神智和監督の意向をもとに右サイドバックでプレーしていた。

「高校1年生の時も右サイドバックとかセンターバックをやっていた時期もあったし、今は右サイドバックの層が薄いのもあって、ミョウさんからもチャレンジしてほしいと言われました。基本、オーバーラップでガンガン攻め上がるタイプではないですけど、今後、もしチャンスがあれば、サイドバックからボールを配球するとか、アーリー目のクロスボールで好機を見出すことは意識してプレーしようと思います。またボランチでプレーするなら常日頃からミョウさんには、もっと自信を持ってプレーしろということを言われているので。前に、思い切ってプレーすることは心掛けたいです(吉原)」

 そうした経験も活きたのか、広島戦でも数的不利の状況下、落ち着いて相手のサイド攻撃に対応し、『無失点』に貢献した吉原。そのユーティリティさを含め、今後のポジション争いに加わってくることが予想される『J1デビュー』だったと言っていい。

 そうした新たな戦力の台頭もチーム力にしながら、あとは、それをいかに得点に、勝利に結びつけていけるか。そのためにも、鈴木の言葉を借りれば「守備ではどうしたいか、攻撃ではどうしたいか」を各々ではなく、ピッチ上の11人がより強固に結びつき、考えを共有して連動して表現していけるかがカギになるだろう。それこそがガンバらしい躍動感に繋がるということを改めて実感した広島戦だった。

https://news.yahoo.co.jp/users/expert/takamuramisa

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