<ガンバ大阪>ツエーゲン金沢とのスペシャルマッチは6-0で圧勝。『明神ガンバ』の初陣を白星で飾る。

 7月24日に行われた『ツエーゲン金沢クラブ創設20周年記念&能登復興支援 北國新聞・北國会スペシャルマッチ ツエーゲン金沢VSガンバ大阪』戦。会場となった西部緑地公園陸上競技場は、ガンバとして過去に10回以上、準ホームゲームとして公式戦を戦った思い出の地ということもあり、明神智和監督は試合後、選手時代を思い返しながら、感慨深さを滲ませた。

「金沢は以前からは縁を感じている場所。スタジアムに着いた時から『ああ、ここだったな』と思い出が蘇ったし、スタジアムの観客席やロッカーの雰囲気もすごく懐かしく感じました。監督として、またガンバ大阪としてここに帰ってくることができて、すごく嬉しかったです(明神監督)」

 また、記者会見では冒頭、『能登復興支援』への想いにも触れ「スタジアムに入るところから金沢のサポーターの皆さんも暖かく我々を迎えてくださいました。横断幕にも『風化させない』という言葉を見ましたが、まだまだこれから支援が必要だと思います。ガンバ大阪としてはもちろん、Jリーグでもサッカー界でも長期、中期でできることはあると思っているので、今日に限らず今後も何かしらこういう形で(支援を)できればいいなと思っています」と復興に向けて歩みを進める方々への思いを言葉に変えた。

■前半、立ち上がりは押し込まれる展開に。飲水タイムで立ち位置を修正し、攻撃が加速する。

 7月17日に新監督就任が発表されたばかりというチーム状況や、オーストリアキャンプから戻り、時差ボケや長距離移動による疲労が各々に残っている状態。かつ、猛暑にまだ体が馴染みきっていない中での金沢戦で、ガンバとしては「体がキツいのはこの時期は当たり前のこと。それぞれが今の自分の100%をだすことだけはしっかりやってほしい(明神監督)」ということに気持ちを揃えて臨んだ一戦だった。

 だが、立ち上がりは思いの外、苦しんだ。

 大阪に比べるとやや涼しくも感じられた気温は、キックオフの時点で32度。芝生の上はさらに気温が上がるため、水が撒かれたグラウンドには蒸し暑さが充満し、選手に襲いかかる。それもあって試合の立ち上がり、15分くらいまでは足が動かず、繰り返し金沢の猛攻に晒される時間が続いた。

「試合前は大阪よりは涼しいかなと思いましたけど、いやいや、試合がいざ始まったらこれはなかなかだな、と。夏の開幕はこんなことになるのか、って想像しながらプレーしていました。基本的には特別シーズンで取り組んだ前からプレスに行って守備でリズムを作りながら攻撃を継続して、とは思っていましたけど、この暑さを体感して、正直、(その戦い方が)現実的ではない試合もあるかもな、ってことも感じました(中谷進之介)」

 その流れを食い止め、チームに勇気を与える先制点を奪ったのがデニス・ヒュメットだ。19分。中谷から縦に送り込まれたボールをヒュメットが左サイドで受け、やや運んで振り抜いたシュートが見事な軌道でゴール右上を捉える。

「デニスが動いているのが見えて、相手も亮太郎のところに(プレッシャーに)来ていてスペースができていたので、すごく見えやすく、出しやすかった(中谷)」

 さらに、その直後の飲水タイムが流れを変えるきっかけに。35分には再び、中谷からのパーフェクトな縦パスに合わせて相手DFラインを抜け出した山下諒也がゴールネットを揺らす。立ち上がりは『明神ガンバ』の新たなチャレンジとして、両ウイングがワイドに張ってプレーする姿が目立ったが、相手の5バックに対してはそのチャレンジが効果的ではないと判断したからだろう。飲水タイム以降は、両ウイングが中に入り込んでいくシーンを増やしたことや、ボランチの美藤倫が積極的に前線に顔を出して前線に厚みを作り出したことで、攻撃のリズムが一気に変わった。

「我ながらエクセレント。せっかくだったらJ1リーグで出したかったです!(中谷)

「シンくん(中谷)からいいボールが来てうまく合わせられました。立ち上がりはチームが全体的に重かったのもあって、あまり僕が裏を狙いすぎても、後ろがついてこれないから攻め急ぎすぎないように意識しつつ、機を見て上がるようにしていたんですけど、得点した時間帯くらいからうまくチームとしても押し込めていたので決まってよかったです(山下)」

「立ち上がりは相手もいいサッカーをしてきていたし、押し込まれるシーンが多かったですけど、自分たちのサッカーをしっかりやろうと。落ち着いてやれば(ボールを)回せる展開だとは思っていたので、そこは飲水タイムを挟んでボランチとしても意識しましたし、自分が動くことで相手の5枚を崩せるんじゃないかってところで運動量を出せた。まだまだ回数は増やしたいですけど、しっかり修正できたかなと思います。あとは、その流れの中で得点が入っていったのも大きかった(美藤)」

■後半はゴールラッシュ。植中朝日がケガから復帰後、初ゴールを奪い、歓喜の輪を作る。

 2-0で折り返した後半もリードを手にしたガンバが主導権を握る展開の中、再びゴールネットを揺らしたのは山下。50分。縦パスを受けた山下が、右のヒュメットに展開。そのまま自身はゴール前、ニアサイドに走り込み、グラウンダーのパスに合わせて、自身2得点目を叩き込んだ。

「ミョウさんからニアというか、GKの前に突っ込んでいくシーンは増やそうと言われていたので、それを狙って入っていったら、うまくデニスが折り返してくれました。あのエリアに入っていけば点を取れるという感覚を掴めたのはよかった(山下)」

 さらに圧巻だったのは、56分、63分に食野亮太郎が奪った2つのゴールだ。相手の足が止まり始めていたとはいえ、56分のシーンでは縦パスを左サイドで受けたヒュメットからのグラウンダーのパスを左足、ダイレクトでおさめ、63分にはトップ下にポジションを変えていた中でペナルティエリアの外から見事なゴラッソをゴール左上に突き刺した。

「暑い中でもゴール前に顔を出そうということは意識して繰り返していました。1点目は本当にデニスがいいタイミングでいいボールを出してくれた。また57分に4人の選手交代があったタイミングでトップ下にポジションを移して以降は、相手も疲れていたのもありましたけど、できるだけ相手に捕まらないポジショニングを意識しながら動き回ってボールを動かそうとしていました。あのミドルは…自分でもびっくりしました(笑)。今じゃねえと思いつつ、でも今年は『タイトル』から逆算しても自分の数字が必要になってくると自覚していたので、しっかり数字残せたのはよかったし、これを続けていきたいです(食野)」

 そして、締めくくりは90分の植中朝日だ。

 57分に一森純、名和田我空、ウェルトンとともに投入され、1トップを預かる中で、87分にも前線からの守備でボールを奪い返し、シュートまで持ち込んだ攻撃の起点になるなど攻守に存在感を発揮。ゴールシーンでは、ボランチとして途中出場していた宇佐美からの縦パスを前線で収めると、倉田秋とのワンツーから前線に抜け出し、右足を振り抜いた。ガンバに加入後初めて預かった1トップだったもかかわらず、上々のパフォーマンスだった。

「FCレッドブル・ザルツブルク戦はトップ下で、今日はトップでプレーしましたけど、自分としてはどっちで出ても特徴を出せるのが強みだと思っていますし、個人的にはどっちでもいいというか。ミョウさん(明神監督)が使いたいポジションで選んでくれたらそれに応えるだけだと思っています。ただ開幕前に1トップを試せたのはよかったです。ゴールシーンは、宇佐美選手からパスを受けた時に中に人数がいるのはわかっていたので、フリックで落としてもう一度受けようというイメージでした。その通りに倉田選手が縦パスを返してくれたので決めることができました。前半、ベンチで貴史くん(宇佐美)の隣に座って話しながら試合を見ていた時に、貴史くんがトップ下やFWに『こんなボールが入ればな』みたいな話をしていたので、逆にその宇佐美くんがボランチで入ったら僕を見てくれているんじゃないか、とか、あそこでたくさんボールを受けられそうだなってことをイメージしながらプレーしていました。その通りのボールを入れてくれたし、自分もうまくおさめられた。短い時間ながら攻守ともにある程度、自分がやりたいことはできたけど、これをJ1リーグでやっていくにはまだまだクオリティを上げていかなくちゃいけないと思っています(植中)」

 植中にとっては長いリハビリから戻った中での今シーズン初ゴールだったからだろう。それまでの5得点についてはほとんどの選手が派手に喜ぶことはなかったが、植中のゴールにだけは控えメンバーも全員がベンチを飛び出し祝福する姿が印象に残った。

■プレシーズンでは3試合目。もっとも公式戦に近い環境での試合に、新指揮官、選手は何を感じたか。

 結果6-0。試合後、指揮官としての初陣を白星で飾った明神監督は「プレシーズンマッチでお客さんも入った中で、自分自身、多少の緊張感もありながらの指揮でしたが、勝てたことにはホッとしています」としながらも、先を見据えて言葉を続けた。

「まず選手たちのスピリット、姿勢に一番満足しています。もちろん結果というか、得点が入ったところ、失点をゼロで抑えたところも選手を讃えたいです。特に立ち上がり、金沢さんの速くて、ダイナミックな展開とか、ワンタッチプレーに苦しみ、シュートを打たれるシーンも多かったですが、選手が集中して、個人ではなくチームとして守り、崩れなかったことが今日の1番の収穫だと思っています。前半の飲水タイムで少し選手の体が暑さにフィットしたようにも見えました。正直、勝てたことにはホッとしている自分がいますが、まだリーグ戦が開幕したわけでもないし、冷静に勝った事実を受け止めている自分もいます。しっかり映像を見返して、修正するところ、伸ばすところをしっかり見極めながら次の試合に向かおうと思います(明神監督)」

 せっかくなので試合後、各選手から聞かれたそれぞれの視点での開幕戦に向けた言葉も残しておく。

「ミョウさんの新たな色にもチャレンジしながら、でも、状況に応じて、臨機応変に変化も加えながら、自分たちでいいバランスを見つけて試合を進められた。ただ、前半はやっぱりもう少し距離間を近くしてボールを動かしたかったし、正直、守備に関しても立ち上がりのシーンを含めてシュートチャンスを結構作られてしまったので、自分自身は納得していないです。もっとできるなと思ったし、守備ラインももう少し頑張って押し上げて、コンパクトにしなくちゃいけないと感じました。ただみんなの中にしっかり特別シーズンで植え付けた共通意識も持ちながら進められたのはよかったです。さっきも言ったように暑い中での開幕ということで試合の進め方を含めて、もう少し見直さないといけないなとは思っていますが、勝ちながら開幕戦に向かえるのは、その直後に自分たちにとっての最初の大一番、ACLEのプレーオフがあると考えても、ポジティブに捉えたい。そこに向けてまたしっかり高めていこうと思います(中谷)」

「正直まだこの暑さに慣れていないのもあって、前半はかなりきつくて体が慣れるのに時間がかかりましたけど、ある意味、それはどのチームもそうだと思うので。その時間帯に失点さえしなければ押し込まれても問題ないというくらいの心持ちでプレーしていました。開幕前の練習試合ということでは今日、2点取れて、少し気持ちは楽になりますけど、大事なのは開幕後だし、僕はJリーグ開幕戦でも、プレーオフでも点を取りたいと思っているので。今日は国内では初めての練習試合でしたけど、改めてゴールを決められたことで、自分がどこにいれば、こう動けば、チャンスになる、得点につながるというイメージが増えたのは収穫でしたし、取るべき選手が取れたのもポジティブな要素。あと、最後までメンバーが代わりながらも無失点でいけたのも今日の収穫なので続けていきたいです(山下)」

「今はまだいろんなことを落とし込んでいる最中ですけど、これをみんなで詰めていくことでまた新しいガンバを見せていきたいと思っています。昨年の戦いをベースにしながらもサイドのポジショニングなどはこれまでと少し変化していますが、そこを含めて今日はみんなで共通理解を持って戦えた。また、個人的にもこの暑い中でも強度を出せたというか…自分はそこしかできないので、チームのために自分がやれることを精一杯やったという感じでしたけど、今年はもう1ランク上に行くためにも、そこに加えて、とにかく結果。しっかり点を取って、アシストをして、年間を通して試合に出続けられるようにしたいです(美藤)」

「今の時期は、自分たちのやろうとしていることにトライしつつ、何より暑熱順化が優先だったんですけど、スタートは思ったより涼しいかもと思っていたのに走り出した途端、めっちゃきついし、暑いし、で…。でもその状況を全員で共有しながらどう戦うのかという部分で、90分を通して集中が切れなかったのはよかったと思っています。ただ、僕らの照準は今、J1リーグ開幕とACLEプレーオフの『連戦』なので。暑い中、いろんな展開、押される展開も想定しながら金沢と公式戦に近いイメージで戦えたのはよかったです。試合前、ミョウさん(明神監督)が言っていた『今の100%を出す』というところも、みんなが意識してやれたと思いますけど、立ち上がり含め、チームとしての守備の修正はやらなくちゃいけないなと思っています。ミョウさんが監督になってから、ミョウさんからの提案にもトライしつつ、ある程度、自分の判断に任せてもらっている中で、ピッチで微調整しながら、立ち位置を変えてみて、みたいなトライもできている。そういう意味ではミョウさんになってアイデアの幅は増えているので、そこは大事にしながら、頭の柔軟性、プレーの柔軟性を持ってやっていきたい。チームとしてもまだまだ良くなっていくんじゃないかと思っています(食野)」

 最後に、冒頭にも書いた通り、この試合は『能登復興支援』のためのスペシャルマッチでもあった中で、この日のスタンドには、珠洲市で被災した中谷の祖母ら、家族の姿も。試合後には一緒に写真に収まる温かな光景も見られた。

「僕がガンバに加入してから初めて、ばぁちゃんが僕の試合を観にきてくれて、すごく嬉しかったです。今年の1月にじぃちゃんが亡くなってしまい、今日のばぁちゃんの喜ぶ顔を見ていたら『ああ、じぃちゃんにも見せてあげたかったな』という思いはありましたけど、こうしてばぁちゃん孝行ができでよかった。ばぁちゃんを含め、まだまだ被災地の方たちは苦しい中での生活が続いていると思いますけど、少しでも勇気を与えられる試合になったなら、嬉しいです(中谷)」

 また時間の関係で話こそ聞けなかったものの、植中と同じく長いケガを乗り越えて戦列に戻った一森や福岡将太、佐々木翔悟が安定したパフォーマンスを示したり、特別シーズンは一度も出場機会がなかった中積爲がピッチに立ったのも、2026/27シーズン開幕に向け、チーム内のいい競争を予感させるものに。また明神監督の隣で初めて『ヘッドコーチ』としてベンチ入りした遠藤保仁コーチは試合後「僕はとにかく、選手に走れ、走れと言っているだけですけど(笑)、とにかくミョウさんといっぱい喋って、考えをしっかり聞いて、それを落とし込めるように選手ともいっぱい喋って促すのみ!」と右腕としての決意を口にした。

https://news.yahoo.co.jp/users/expert/takamuramisa

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