【G大阪】「クラブの歴史と責任の重さは理解しているが、自信がなければここに座っていない」。クラブのレジェンド、明神智和・新監督が目指すのはどんなチームなのか?
ガンバ大阪はオーストリアキャンプを目前に控えた7月6日、イェンス・ヴィッシング監督のチーム離脱を発表。4日後の10日には正式に退任が決まった。そして18日、後任として、明神智和コーチの新監督就任が決定。ここでは21日にパナソニックスタジアム吹田で実施された記者会見の模様と、新監督のチームづくりにフォーカスし、リポートする。
明神監督は想像よりも上の展開を考えていた(三上本部長)
就任会見には明神新監督とともに、水谷尚人代表取締役社長と三上大勝フットボール本部長も登壇した。水谷社長は「我々が目指すべきものは決まっている。明神監督をみんなで支え、彼を中心にみんなで上昇していきたい」と話し、三上本部長がクラブレジェンドでもある明神監督に白羽の矢を立てた経緯を説明した。
「ありがたいことに前監督のチーム離脱が決まってから、売り込みというか多くの指導者からクラブへの問い合わせがありました。加えて前監督を招聘するにあたって(作成していた)国内外を含めた10数名のリストをもう一度、見直しました。かつ、クラブ独自にこの半年で取り組んできた サッカーを発展させていくことを前提に国内外のリストアップを行いました。その3つと内部昇格なら明神コーチにお願いするしかないという選択肢のもと、オーストリアキャンプをスタートしました。
その上で関係者を通じてヒアリング等々をさせてもらい、特別シーズンで我々が示したハイプレスでの縦に速いサッカーというベースを大事にしながら、そこに達成するまでにやらなくちゃいけないプロセスをイメージできる指導者は誰かを考えました。また、実際に数名の候補者とコンタクトをとる中で我々の目指すサッカースタイルがどのくらい構築できるのを確認しつつ、私自身も明神コーチのもとで始まったオーストリアキャンプでそのトレーニング内容、チームの雰囲気を肌で感じた上で、最終的に決定しようと思っていました」
現地では明神コーチに対し、仮に監督を引き受けるならいかに現状の課題に立ち向かおうと描いているのか、というヒアリングも行ったという。
「候補に挙げた監督の皆さんに僕がお伝えしていたのは、クラブのビジョンと中長期のプロジェクトに賛同できるか否かということと、今シーズン、ACLE2026/27への出場権を獲得した上で同大会を含む4つの大会で11個目のタイトルを獲るという短期の目標についてです。また、前監督とはオフシーズン中、『次のシーズンに向けて具体的にどういう成長を求めるのか。両ゴール前でどれだけ再現性高くプレーできるか。そのためのアプローチをどうするべきか』という話をしていましたが、同じ問い掛けを候補の監督や、明神コーチにもさせていただきました。
その中で僕自身、すごいと感じたのは、僕の想像していたもう1つ上の展開まで明神コーチが考えていて、それを伝えていただいたことです。それを踏まえ、最終的には明神コーチや遠藤保仁コーチら、既存のコーチ陣に任せることが、この特別シーズンで取り組んできたものにプラスアルファを加え、先に挙げた短期目標に近づけるという考えに至りました」
そうしたクラブ側の考えに対し、明神監督も、クラブの打診を二つ返事で快諾したという。
24年にも及ぶ現役生活に終止符を打ち、20年にガンバのジュニアユースのコーチとしてスタートした指導者キャリアも今年で7年目。その間、21年からはユースチームのコーチ、25年からはトップチームのコーチの任につきながら「いつか監督になるために最大限の準備をしてきた」と明神監督は語る。監督就任の打診については「ついにきたかというのが正直な気持ち。ワクワクしています」と率直な胸の内を明かした。
「指導者の道に入って1年目で現場に立った時から監督をやりたいという夢を持っていた中で、それが叶ってすごく嬉しいです。ガンバは僕にとってすごく大きなクラブ。ここで育ててもらいましたし、指導者キャリアをスタートさせてもらいました。そのクラブで指揮が執れるのはすごく光栄ですし、嬉しく思います。クラブの歩んできた歴史、支えてくれた人たちがいて、今のガンバがあるのは事実ですが、正直、指揮を執ると決まってからは過去のことというより今、これからのことしか頭にないです」
会見の壇上で自らの覚悟を口にする姿に触れて、印象に残ったのは、ガンバで指揮を執ることへの責任を重く受け止めつつも「自信がなければここに座っていない」と繰り返したことだ。その言葉と、現役時代から明神新監督が大事にしてきた『自分の選択に責任を持つ』『 サッカーに常に真摯に、全力で向き合う』『どんな立場でも常にサッカー人として、人として成長を求める』というマインドが重なる。
「このクラブが歩んできた歴史を思えば、責任の重さは理解しています。ただ、自信がなければ僕はここに座っていません。経験がないとか、いろんな意見はあると思います。ですが、自信がなければここには座っていません。1日1日を大事にしながら素晴らしい仕事をし、いいチームを作り上げたいと思います。チームが勝つことが一番で、そのために自分の全てを捧げようと思います。 熱い試合を、観ている人たちが熱狂するような試合を、ガンバの試合をまた観にいきたいと思ってもらえる試合をしたい。そのためにも1日1日の練習が全てだと思っているので、そこに全力を注ごうと思います」
選手、スタッフ全員にハングリーになってもらいたい
この日の練習前には、半田陸や横井佑弥ら長期離脱を強いられているリハビリ組を含めて全選手、スタッフを集め、改めてそうした自身の考えを伝えたという。
「全員がそろうのは今日が初めてだったので、改めて自分がどんなものを大事にしていて、選手にはどういうことを求めたいのか、チームとしての目標はどこに据えるのか、といった話をさせてもらいました。まず、目標としてはチームとしてタイトルを目指すということ。そのために個人のところは、いくつかある中で大きなところで言うと、とにかくハングリーになろう、と。それは自分自身にも突きつけている部分です。
タイトルを獲る、勝つ、巧くなる、プロ サッカー選手としての価値を高める、といった部分で選手、スタッフの全員にハングリーに取り組んでもらいたい。そのためにも選手には日々の練習、試合を含めて、1日1日を大事にしていってほしいということも伝えました。あとはチーム内でいい競争が生まれなければいいチームは作れないと思っているので、その競争をいかに作っていくのか。それは僕の仕事なので、選手をしっかり見極めて競争させ、煽りながら、その時々の状況に判断して、チームづくりをしていこうと思います」
自身が考える『いい監督』の定義については「勝つ監督」とキッパリ。これまで選手として、あるいはコーチの立場で共に仕事をした監督の名前を挙げ、西野朗氏の攻撃的な姿勢を貫く采配、長谷川健太氏の人を束ねる力やマネージメント力、ダニエル・ポヤトス氏のビルドアップやスペースの考え方、イェンス・ヴィッシング氏のインテンシティの高い現代サッカーの実現に向けたチーム構築など「いいところは盗みたい」という。そこに「自分らしく味付けしていきたい」と言葉を続けた。
また、先の三上本部長の言葉にあった「僕が想像していたもう1つ上の展開を伝えていただいた」の中身についても、「これから試合もあるので具体的な戦術は控えさせていただきたい」としながら、その一部を言語化した。
「相手コートでできるだけ長く攻撃したいと思っています。1回で攻撃が終わってカウンターを受けるとか、1回で攻撃が終わるのはなるべく減らしたい。攻撃して、それをすぐに奪い返して、ということを2回、3回と続けられるチームの構築をしていきたいと考えています。また、ガンバの選手の特徴を踏まえてサイドからの攻撃だけではなく、中央のコンビネーションとか、それに伴う選手の発想、アイディアもしっかりと生かしたい。 選手それぞれに特徴、強み、弱みもある中で、それらをもとに選手が最大限、力を発揮できるポジション、起用のタイミングを見られるのが自分の強み。プラス、それらが『チーム』の中でどう生きるのか、どんな構築ができるのかもしっかり見ていかなければいけないと思っています」
明神監督のもとで、リスタートを切ることになったガンバだが、まだ就任から数日ということもあって、「味付け」はベールに包まれている。さらに言えば、始動日直前に指揮官がチームを去るという激震の余波があちこちに残っているのも事実だ。三上本部長によれば選手等々の補強についても、今回の監督交代を受けて「進めていた補強、交渉は一度キャンセルさせてもらい、明神監督の意向に沿う形で動いている」とのこと。今後は新たなコーチングスタッフの招へい、選手補強の可能性もあり、今シーズンを戦うスカッドも確定してはいない。
異例かつ極めて難しい状況の中でシーズンをスタートした新指揮官が、どんなリーダーシップを発揮し、「勝つ監督」に変貌を遂げていくのか。携える情熱と覚悟がどんなエッセンスとなり、「勝つチーム」にまとめ上げるのか。『明神ガンバ』の戦いが、始まった。




