本田圭佑も“就任熱望”…遠藤保仁に見た監督の才能 激震のG大阪で期待される指導力

G大阪はヴィッシング監督がチーム離脱の緊急事態

25-26シーズンのAFCチャンピオンズリーグ2(ACL2)を制し、26-27シーズンに向けて力強く始動しようとしていたガンバ大阪。上昇気流に乗っていたチームにいきなり激震が走った。今年1月に就任したばかりのイェンス・ヴィッシング監督が、7月に入ってからチームを離脱。サウジアラビアのアル・イテハドの新指揮官に就任するというのだ。

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G大阪の方は監督空席の状態で5日からオーストリアキャンプに出発。明神智和コーチが中心となって指導に当たるという。

この緊急事態を受け、元日本代表でG大阪アカデミー出身の本田圭佑(FCジュロン)が「ヤットさん(遠藤保仁コーチ)がガンバの監督になることを期待してます。#今すぐに」とXに投稿。それがサッカーファンの間で大きな話題になった。

当の遠藤コーチは目下、JFA公認Proライセンス講習会を受講中。今年4月から本格的にスタートした同講習会は来年1月まで続き、国内・海外研修にも出向かなければ、ライセンスは得られない。本田の言う「遠藤コーチの26-27シーズン開幕からの監督就任」は今のところ不可能なのだ。

ただ、JFAやJリーグも「若く経験の少ない指導者にトライできる場を増やしたい」という意向が強く、今季からJ3はProライセンスを持たず、JFA公認A級ジェネラルライセンス以上を保有する人物でも指揮を執れるようにした。その変更に伴い、遠藤コーチとともに今回のProライセンス講習会に参加しているレイラック滋賀の角田誠強化部長が監督に復帰している。

つまり、遠藤コーチもJ3のチームであれば、今すぐに監督になれるということだが、やはり彼はG大阪から指揮官のキャリアをスタートさせることになるのではないか。それが来季なのか、もっと先なのかは分からないが、本田のみならず多くの人々が期待しているのは確かだろう。

その遠藤コーチの指導実践を筆者は実際に見る機会に恵まれた。それは2026年北中米ワールドカップ(W杯)直前の5月末。少し前のことではあるが、彼が指導者としての資質に恵まれていることをしっかりと確認できた。

この日のテーマは「中盤の攻撃」。コーチ役の興梠慎三・浦和レッズU-21コーチらと4人1組で大学生の指導に当たる形だった。

最初のまずウォ—ミングアップは別のコーチが担当。「サッカーを楽しむ」という遠藤コーチのモットーが表れたエンジョイできる内容で、選手たちからも声が出ており、明るい雰囲気が色濃く感じられた。

実際に遠藤コーチが前面に出てきたのが実戦形式になってから。「前を見ろ」「ポジション」「もっと周りと関わって」「ボールを出し入れして前へ」といった短いワードが彼の口からテンポよく出てきて、選手たちもリズムに乗ってプレーできている様子だった。

特に興味深かったのが、鹿島アントラーズを想定した4-4-2の相手に、チーム遠藤が3-4-3で攻め込むという実戦練習。監督役の遠藤コーチは「ボランチはしっかりとパスコースを作ってあげて」「もっとボールを受けてリズムを出して」「状況判断をしながらFWに縦パスを入れて」「ウイングバックにボールが入った時は誰かが裏を抜けて」「相手のボランチが空いてるぞ。そこをうまく使え」といった細かいアドバイスを短い言葉で次々と伝えていた。選手たちもそれに呼応し、より迫力を持ってゴールに迫ろうとしていたのだ。

筆者はProライセンス講習会で指導実践に取り組む元Jリーガーの姿を過去に何度か見たことがあるが、一つひとつの説明が長すぎたり、逆にポイントを的確に伝えられないなど、苦労しているケースをいくつか目の当たりにした。

しかしながら、日本代表最多キャップ数の152試合という偉大な記録を持つ名ボランチは、「もっとこうすればより効果的にゴールに向かえる」という道筋が瞬時に見えるのだろう。それを短い言葉で伝え、選手を動かしていく指導スタイルは非常に好感が持てた。将来有望だという前向きな感触も持つことができた。

指導実践の後、遠藤コーチ本人に「いろんなことがよく見えている、いい指導だった」と声をかけると、「いや、まだまだです」と謙遜していた。が、卓越した戦術眼や先を読む力という現役時代の強みは、指導者になっても健在だ。

百年構想リーグのG大阪では美藤倫が急成長を遂げたが、それも遠藤コーチのアプローチによるところが大なのかもしれない。そういう部分を含めても、彼は監督としてのポテンシャルがありそうだ。

加えて言うと、監督業というのはピッチ上の指導のみならず、選手を選び、最適な形で配置して、それぞれの持つ力を最大限発揮させるというマネージメント能力も求められる。日本代表の森保一監督はそこが長けているから、サンフレッチェ広島でJリーグ3度の優勝を飾り、日本代表で8年間も指揮を執れたのだ。

遠藤コーチに森保監督ほどのマネージメント能力があるかどうかはまだ未知数な部分が大きいが、つねに冷静で、周りに左右されることなく物事を決断でき、他者と良い距離感を保ちながら仕事ができるキャラクターは間違いなく監督向きだ。

2026年北中米W杯の日本代表に関わった中村俊輔コーチ、長谷部誠コーチらが今後の日本代表監督候補と目されるが、遠藤コーチもそこに割って入るだけの可能性がありそうだ。だからこそ、できるだけ早くライセンスを取得し、Jリーグで指揮を執ってほしい。そこで一定の成功を収められれば、次のステップが見えてくるはずだ。

その前に彼が立ち向かわなければならないのは、監督不在のG大阪。オーストリア合宿では明神コーチらと協力しながら、選手たちを前向きな方向へと導いていく必要がある。今は難しい状況だろうが、そのハードルを乗り越えることも、指導者としての修行の一つ。このプレシーズンにベストを尽くし、G大阪が新シーズン開幕から好スタートを切れるように持てる力の全てを注ぎ込んでほしいものである。

[著者プロフィール]

元川悦子(もとかわ・えつこ)/1967年、長野県松本市生まれ。千葉大学法経学部卒業後、業界紙や夕刊紙記者を経て、94年からフリーに転身。日本代表は97年から本格的に追い始め、アウェー戦もほぼ現地取材。W杯は94年アメリカ大会から8回連続で現地へ。近年はほかのスポーツや経済界などで活躍する人物のドキュメンタリー取材も手掛ける。著書に「僕らがサッカーボーイズだった頃1~4」(カンゼン)など。

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