混戦のWEST「2つの原因」と最も伸びた若いチーム!つなぎの大会は「新記録」を上回って大成功【百年構想リーグ完全総括】
今年から初の「秋春制」へ移行し、歴史的な転換期を迎えているJリーグ。8月の新シーズン開幕に先駆けて開催された特別大会「百年構想リーグ」もまた、初の試みとして大きな注目を集めた。この半年間の戦いから見えたチームの変化や新シーズンへの兆しを、サッカージャーナリスト・大住良之氏が読み解く。(第3回/全3回)
■監督交代の影響
この「百年構想J1リーグ」で興味深かったのは、EASTでは開幕時点で10クラブ中9クラブの監督が昨年からの「継続」であった(新任は水戸ホーリーホックの樹森大介監督のみ。なおリーグ半ばで浦和レッズがマチェイ・スコルジャから田中達也監督へと変更)のに対し、WESTでは6クラブが新監督でのシーズンに入ったことだ。
ヴィッセル神戸が吉田孝行監督から前年までサンフレッチェ広島を率いていたミヒャエル・スキッベ監督に交代、広島にはポーランド系ドイツ人のバルトシュ・ガウル監督が就任した。吉田孝行監督は秋葉忠弘監督が退任した清水エスパルスの監督となった。名古屋は、長谷川健太監督が退任し、かつて広島、浦和、北海道コンサドーレ札幌の監督を歴任したミハイロ・ペトロビッチ監督が就任。ガンバ大阪もダニエル・ポヤトス監督からドイツ人のイェンス・ヴィッシング監督になった。
鹿島が独走したEASTに対し、WESTが混戦模様となった原因のひとつは、新監督の多さだったかもしれない。新監督がチームを完全に把握するには、シーズン前の準備期間だけでなく、2〜3か月の実戦期間が必要だからだ。
同時に、AFCチャンピオンズリーグの2大会(ACLEとACL2)に出場していたクラブが、EASTがFC町田ゼルビアだけだったのに対し、WESTでは、神戸、広島、G大阪と3クラブもあり、この「百年構想J1リーグ」とACLのシーズン後半が重なっていたことも大きい。
この「百年構想リーグ」の時期に、ACLEでラウンド16まで進んだ広島は4試合、準決勝まで進んだ神戸は6試合、そしてACL2で優勝を飾ったG大阪はサウジアラビアでの決勝まで7試合を戦わなければならなかった。
■伸びている東西のチーム
EASTで最も伸びたチームがFC東京だとしたら、WESTではG大阪だっただろう。この「百年構想J1リーグWEST」では5位だったが、ときおり鋭い攻撃的サッカーを見せた。
ヴィッシング監督は38歳。25歳で選手を引退し、指導者になった人で、フルタイムプロのクラブの監督はG大阪が初めてだが、若手を大胆に起用してチームを活性化させた。エースのデニス・ヒュメット(8得点)に次ぐ7得点をマークした22歳のFW南野遥海が主力の一角を占めるようになった。ACL2の優勝により来季のACLEにプレーオフから出場することになったが、厳しい日程のなかで若いチームがさらに成長しそうだ。
EASTでは町田が初出場のACLEで決勝まで進み、7試合を戦ったが、この負担がなければ町田は鹿島にもっと迫り、EASTの首位争いに波乱を巻き起こしたかもしれない。町田は18戦して90分勝ち8試合、同負け2試合、PK戦勝ち5試合、同負け3試合、勝点37で3位だったが、5月22日に国立競技場で行われた地域リーグラウンドの浦和戦は、1-0という僅差の勝負だったものの、攻守両面での完成度の高さを示し、就任4シーズン目を迎えた黒田剛監督のチームづくり順調に進んでいることを証明した。
■数値に変化が表れた神戸
「新監督」とはいえ、広島で4シーズンのJリーグ経験を持つ神戸のスキッベ監督はアドバンテージがあった。神戸はACLで韓国遠征2回、そして4月にはサウジアラビアでの決勝ラウンドという負担がありながら、チーム力をフルに生かしてWESTの首位を獲得した。しかし18試合で90分勝ち9試合、同負け3試合、PK戦勝ち2試合、同負け4試合と、けっして楽ではなかった。
なかでも気になったのは、得点29(1試合平均1.61)に対し、失点が21(同1.16)と、1試合平均1点を超えたことだ。吉田孝行前監督がフルシーズン指揮を執り、うち2023年、2024年と「リーグ連覇」を果たした3シーズンの通算87失点(1試合平均0.76)を大きく超えているのは、スキッベ監督が「攻撃的サッカー」にしようとしている結果だろうか。
この「百年構想リーグ」の「地域リーグラウンド」で少し残念だったのは、リーグを東西に分けたことだった。半年間のリーグだから「試合数半分」は仕方がないが、東西に分けたホームアンドアウェーを実行したことで、同地域のチームとの試合ばかり繰り返され、他地域のチームのプレーぶりを見ることができなかった。
だが全般として、「百年構想リーグ」は、「つなぎ大会」としては大きな成功だったと言えるだろう。EASTとWEST合わせて全180試合、総入場者数は384万1298人。1試合平均2万1341人は、リーグ新記録となった2025年J1リーグ全380試合の平均2万1246人を上回った。1試合平均得点数も、昨年の「2.40」から「2.62」へと上昇し、ファンを楽しませた。
「1試合平均2万1341人」という数字の背景には、「大改革の前にファンの関心を冷めさせてはいけない」というリーグとクラブの危機感、そしてそれに基づくさまざまな努力があったはずだ。「Jリーグ33年の歴史で最大の改革」を前に、リーグと各クラブが払った努力に敬意を表したい。その努力は、「2026/27」での飛躍につながるはずだ。



