【インタビュー】40歳・丹羽大輝がスペインでつかんだ「新境地」フルシーズンを戦い抜く準備と変化

スペイン・デウストの元日本代表DF丹羽大輝が、プロ23年目のシーズンを終えてスポーツ報知のインタビューに応じた。スペイン5部相当の舞台で迎えた今シーズン、1試合の出場停止を除く33試合(31試合先発)に出場。ワンシーズンをほぼフルで戦い抜いたのは、実にG大阪時代の2015年以来、11年ぶりとなる。40歳にしてなおトップコンディションを維持し続ける理由、そしてスペインで掴んだ新たな境地について聞いた。(取材・構成 金川誉)

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「11年ぶりのフル稼働」がもたらした確信

―今シーズンは1試合の出場停止を除いて、ほぼ全試合に出場。これだけ公式戦に出続けたのは、2015年以来11年ぶりとなる。

「個人的にはこれだけチームに必要とされ、ピッチに立ち続けられたことは、自信になりました。一昨年(アレナス・ゲチョ)も多くの試合で出させてもらいましたけど、今シーズンはパフォーマンスの質という部分でも、より良いフィーリングを感じながらプレーできました」

―40歳という年齢で、毎週試合に出続けることは簡単ではない。何か感覚に変化は?

「やっぱり、毎試合リズムが出てくる感覚がはっきりと分かるんです。『あ、これこれ!来た、来た!』っていう、良い時の感覚ですね。Jリーグ時代は主力として出続けていた時期もありましたけど、FC東京時代などはベンチに入る時間が増えた時期があって。1試合出てはまたベンチ、という環境だと、どうしても試合のリズムを作り出すのが選手として難しかった。30代中盤を迎えると多くの選手がそういう境遇に直面して、年齢や立場を理由にそれを受け入れてしまう。でも僕は40歳になって、試合に出続けることでその感覚を完全に取り戻せました。『あ、俺、まだまだいけるわ』って、自分の感覚が完全にアップデートされましたね」

―一般的には「年齢とともに中3日の連戦が厳しくなる」など、身体的な衰えを受け入れる選手が多い

「これは強がりではなく自分自身、衰えている感覚が本当に一切ないんです(笑)。普段から妻や子供たちにも素直に話していることなんですけど、90分間全力で戦い終えた直後でも『あともう1試合、全然いけるな』と思えるくらいの感覚の時もある。体力テストやヨーヨーテストの数値も、未だにチームでナンバーワンですから。 試合に出られなくて、久しぶりにパッとピッチに立った時の方が圧倒的に疲労感がありました。つまり、年齢で疲れるんじゃなくて、試合に出続けるリズムがないから疲れていたんだと気づいたんです。世間の常識がどうあれ、自分の心と体がフレッシュであれば年齢なんて関係ない、というのが僕のリアルな答えです」

成功体験を「ぶち壊し、塗り重ねる」

―去年は監督の戦力外通告からスタートするなど難しい時期もあった。今シーズン、チームの信頼を勝ち取り、フル稼働できた要因は?

「一番大きく変えたのは、オフシーズンの過ごし方です。Jリーグにいた頃は、オフに入ったらまずは体と心をしっかり休めて、そこからキャンプに向けて逆算して自主トレを行うというルーティンを長年続けていました。でも、スペインに来てからはその“長年の成功体験”をあえてぶち壊してみようと思ったんです。 具体的には、オフシーズンも一日たりとも体を動かすことをやめませんでした。ただ、追い込むトレーニングではなく、ストリートサッカーで遊んでいるような、ルールに縛られないリラックスした状態で動かし続けるんです。そうすると不思議なことに、メンタルも体も全く疲れないどころか、常にアクティブな状態になり、今までよりも最高のプレシーズンに入れるようになりました」

―食事や日々のケアの面でも、変化や試行錯誤は?

「未だに毎日が試行錯誤ですよ。何百試合とプロの世界で戦ってきて、試合前の軽食ひとつとっても、『本当に白ご飯がいいのか? サツマイモやジャガイモの方がいいんじゃないか?』とか自分に問いかけています。その週の練習強度や連戦の状況に合わせて、食べる量やタイミングを細かく微調整する。 食事だけでなく、リカバリー方法も変えました。今は海が近い環境なので、グラウンドでのダウンに加えて、裸足になってビーチの砂浜を走ったり、そのまま海水に浸かったりしています。海水に含まれるミネラルが筋肉や関節の疲労回復に良いと知って試してみたら、これがすごく自分の体にフィットして。自分で試して、ピッチの上で答え合わせをする。『もうこれでいいや』と思った時点で伸びしろは止まってしまうので、とことん追求し続けたいんです」

―プロ生活23年間、大きな怪我は少ないのが丹羽選手の特徴。独自のコンディショニング方法は?

「スペインに来てから一度も怪我はしていなくてマッサージは23年間、基本一度も受けていませんし、もちろんトレーナーさんへのリスペクトは大前提としてあります。ただ、自分の体の張りや疲労度を24時間一番知っているのは、絶対に自分自身なんです。だから僕はすべて、自分の手で行う『セルフマッサージ』とストレッチポールだけ。夜に1時間散歩を毎日しているんですが、その間も歩きながら筋肉を触って、体と会話をしています」

―「体と会話する」。具体的にはどういう感覚?

「よく僕は『怪我に強い』と言われるんですけど、実は真逆で、痛みや疲労に対して『人一倍めちゃくちゃ敏感』です。 僕は怪我を『大きな車の事故』と同じ原理だと考えています。大きな事故って、いきなり起きるわけじゃない。その前に『寝不足だった』『脇見運転をした』『バックミラーを見忘れた』という小さなエラーがいくつか積み重なった結果、大事故(怪我)になる。だから、日々の散歩やセルフケアの中で、その小さな違和感というエラーを徹底的に先回りして排除していくんです。自分の体の状態を理解した上で練習に入っているから、大きな肉離れなどの事故を未然に防ぐことができているんだと思います」

―サッカーのプレースタイルや、チーム内での立ち振る舞いにおいて、スペイン5年目を迎えて意識の変化は?

「これも一つ明確な変化があります。35歳でスペインに来た時、僕は日本である程度の経験を積んだ状態で来てしまった。だからキャンプの時に『この戦術はどうなんだろう?』とか『この練習、本当に試合に繋がるのかな?』って、経験があるがゆえに先のことが分かっちゃうし、疑問を持ってしまうことが多々あったんです。 でも、今シーズンはその疑問を持つ気持ちを、頭の中でバーン!と遮断しました。ベテランがやりがちな『経験でうまく流す』というのを一切やめて、右も左も分からない若手だった頃のように、監督の言うこと、クラブが求めるサッカーを100%全力で信じて自分が一番先頭になって体現しようと臨んだんです」

―自分の積み上げてきた経験がある中で、それを抑えて従うことに葛藤は?

「葛藤はありましたよ。でも、プロとしては23年目ですけど、スペイン歴で言えばまだ5年目。『23歳以上の選手から見れば、俺は歳下でキャリアも少ない選手だ』と本気で思うようにしたんです。自分の成功体験を取り壊すのではなく、その強固な軸を持ちつつも、そこに新しい価値観を『塗って、塗って、塗り重ねていく』。 現代サッカーはものすごいスピードでアップデートされています。過去の栄光や成功体験に縛られて吸収力をなくした時点で、選手としての成長は止まり、一気に下降していく。太い幹としての自分はブレずに持ちながら、新しい枝葉をどんどん取り入れていくマインドが、今の環境で現役を続けるためには絶対に必要なんです」

―最後に、今後の歩みについて。40歳を過ぎてなお現役で試合に出続ける選手は、世界的に見ても極めて稀な存在となる

「そうですね、40歳を過ぎて90分出続けている選手、お手本になる先輩が自分の周りにほぼ誰もいない状態です。だからこそ、自分がこの先どうなっていくのか、自分自身が一番ワクワクしているんです。頭さえフレッシュであり続ければ、まだまだ新しい景色が見られるし成長も出来る。そう本気で信じていますし、これからもとことん、自分の限界に挑戦していきたいですね」

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