【G大阪】チュニジア人FWイッサム・ジェバリが語るガンバ愛とACL2決勝への思い「タイトルをこのクラブの歴史に刻みたい!」
ガンバ大阪に所属するFWイッサム・ジェバリが、5月16日(日本時間26時45分)に開催されるACL2決勝に向けて、そしてこの夏の北中米ワールドカップに向けて熱い思いを語った。目指すのはガンバ大阪の歴史を創ること、そしてガンバ大阪の選手としてW杯に行くことだ。
北中米W杯は僕にとって最後の大会
今シーズン、イッサム・ジェバリは「自分のキャリアでもっとも難しいチャレンジ」を続けている。
ガンバ大阪に加わって4シーズン目だが、イェンス・ヴィッシング新監督のもとで新たな サッカーに向き合っていることに加え、夏からのシーズン移行に向けたイレギュラーなハーフシーズンを過ごしている。さらにAFCチャンピオンズリーグ2の2025/26のノックアウトステージを並行して戦っており、世界でも稀に見る怒涛の『連戦』を強いられているからだ。
現在34歳のジェバリにとって、この半年は「おそらく僕にとって最後の大会になるだろう」と話すFIFAワールドカップ2026を目指す時間であることも「難しいチャレンジ」だ。3月末のインターナショナルウィークにハイチ、カナダと戦ったチュニジア代表に彼の名前はなかったが、当然ながら今もジェバリはその舞台を諦めていない。それが「自分で選んだ道」だからだ。
「今回のインターナショナルウィークでチュニジア代表はカナダで試合を行いましたが、選出された場合、僕は日本から13時間ほどかけて移動して試合を戦い、また同じくらいの時間をかけて戻ってくることになります。それは今シーズン、ガンバでハードな連戦を戦ってきた状況、自分のコンディションを考慮してもプラスには働かないと判断しました。今回に限らずチュニジアサッカー協会とは常にコミュニケーションを図ってきましたが、その中では正直に『もしW杯を目指すのなら、チュニジア国内やヨーロッパのクラブでプレーしてくれればより選びやすくなる』と伝えられたこともあります。これは日本、Jリーグを否定している訳ではなく、あくまで物理的な状況からです。ですが、僕は変わらずに日本、ガンバでのプレーを選んできました。
理由は簡単です。僕の人生を他の誰にも決められたくないからです。正直、ガンバに加入した23年以降、チュニジア国内のクラブ、あるいはヨーロッパのクラブから何度かオファーはいただきました。でも僕のプライオリティは変わらずガンバにあります。ここでタイトルを獲る、リーグ戦、ACL2で頂点に立ってACLEにいく。その中でしっかりと自分をアピールする。それが僕の最大の目標であり、今は自分の決めたガンバからW杯にいくという難しい道にチャレンジする人生を楽しんでいます」
今回のW杯においてチュニジア代表はグループステージで日本、オランダ、そしてプレーオフを制して本大会進出を決めたスウェーデンと戦うことが決まっている。彼にとって日本との対戦は「サプライズであり、大きな楽しみ」だが、それに加え、妻と子供が国籍を持つスウェーデンも同組に入ったとなれば、今大会への思いは募るばかりだろう。
「日本にスウェーデンと、僕にとって縁の深い国と同組になったのは僕だけではなく、家族にとっても大きな楽しみの1つです。ただ、今の僕はガンバでの戦いに集中しています。それが、自分の選んだ難しいチャレンジに勝つ、唯一の方法だから」
浦項戦で『トップ下』を確立した
事実、彼は今、目前に迫る、ガンバでの目標を実現するチャンスに気持ちを集中させている。5月16日に待ち受けるACL2決勝だ。
昨年9月に始まった同大会において、グループステージの6試合を全勝したガンバは、今年に入ってからのノックアウトステージでも、ラウンド16・浦項戦を3-2(アウェー1-1、ホーム2-1)で制すと、準々決勝・ラーチャブリー戦も3-2(ホーム1-1、アウェー2-1)で勝利。続く準決勝・バンコク・ユナイテッド戦ではホームでの第1戦で今大会初の黒星(0-1)を喫したものの、アウェーでの第2戦を3-0でものにして決勝への切符をつかみ取った。
その戦いにおいてジェバリもリーグステージでは6試合中4試合に、ノックアウトステージでは6試合中5試合に先発出場。攻撃を加速させてきた。
「決勝進出を語る上でキーになったのはラウンド16の浦項戦だったと思っています。この試合は、新しい監督のもと、沖縄キャンプから準備してきた新しい戦術、 サッカーが『海外』を舞台にした戦いで通用するのか、自分たちがどれだけ戦えるのかを図る意味で重要な意味を持ちました。今大会はリーグの間を縫って試合が行われており、自分たちが試合毎にどうマインドセットするのかも鍵になっていますが、浦項との第1戦は特に、僕らにとって特別なカードであるJ1百年構想リーグ開幕戦の『大阪ダービー』を終えてすぐに戦う難しさも伴いました。結果的に浦項との第1戦は諒也(山下)のゴールで先制した後、追いつかれはしましたが、この試合で自分たちのサッカーに確かな手応えを得られたことはシーズンを進めていく上でも大きな収穫でした」
その浦項戦はジェバリにとっても、今シーズンの多くの試合で預かってきた『トップ下』のポジションを確立するきっかけになった試合だ。先の言葉にある第1戦での山下の先制点もジェバリの縦パスから生まれたが、大阪ダービーで宇佐美貴史が負傷離脱したチーム状況下、トップ下でジェバリが示した存在感は、ヴィッシング監督が標榜するゲーゲンプレスからの縦に速いサッカーを形にする上でも大きなカギになった。
「貴史がケガをしてしまい、浦項戦から僕がトップ下の『10番』を預かりましたが、この試合で僕のトップ下としての役割が明確に整理できた気がしました。10番は常に、誰がどんなボールを欲しがっているのかを把握しておかなければいけないポジションです。1トップにいるデニス(ヒュメット)はもちろん、周りのいろんな選手といい連動を見出さなければいけないし、僕がピッチでどういうポジションを取り、どこでボールを受けるのかもチームを前に進める上で大事になってきます。
その点において、僕が在籍4シーズン目で仲間との関係性が構築できていることを追い風にスムーズにフィットできたこと。試合を重ねるほどいい連係を築けるようになったことはチームにも、僕にとってもプラスに働いたんじゃないかと思います。そもそも僕は過去に在籍したチームで『9番』を預かっていた時から周りを生かすタイプのFWでしたが、その経験も今の自分に活きています」
世界の目を自分たちに向けさせたい
事実、浦項戦を機に10番に定着した彼は、以降も再三にわたって攻撃の起点に。前線でボールを収める役割を十二分に担いながら、縦に速い サッカーを加速させ、再三にわたって得点を演出してきた。ACL2の準決勝、バンコク・ユナイテッド戦で自身が奪ったPKでの2得点目を含め、3得点全てに絡む活躍を見せたのも特筆すべき出来事だ。ビハインドを負って乗り込んだアウェイ戦、タイ特有の暑さ、そして連戦という状況をものともせずジェバリは90分間、フル稼働。34歳という年齢を感じさせないパフォーマンスを示し続けた。
「バンコクとのアウェー戦は相手がホーム戦ほど引いて守備を固めてこない戦術を取ったこともあり、かつ、僕たちが先制点を奪えたことで流れを掴めました。先制直後にPKを獲得し、立て続けに2点目を取れたのも効果的だったと思います。もちろん今シーズン、取り組んでいるサッカーは僕に限らず、決して体力的には簡単ではないです。正直に言えばこの歳になって、フィジカル的にガタがきているのを感じる瞬間があるのも認めます(笑)。
ただシーズン前の『ヨーヨーテスト』でチームでも安部柊斗、池谷銀姿郎に続く3番目の数字を出せたのは自信になったし、1試合毎のデュエル数も決して悪くない数字だと思っています。それを踏まえても、自分の体が耐えてくれる限りはしっかり戦い続けるだけだと考えていますし、もし耐えられずにケガをしてしまったら…それは治せばいいだけの話です。何が言いたいか? とにかく僕が考えているのは今を精一杯でやり抜くことだけ。それが必ずガンバの力になると信じて決勝に臨もうと思います」
決勝の相手はサウジアラビアリーグで首位を走るアル・ナスルFC。クリスティアーノ・ロナウドを筆頭にヨーロッパで活躍してきたスター選手を数多く揃える強豪だ。悲願の『タイトル』をつかむために、どう立ち向かうのか。
「ACL2の決勝を戦えるのはクラブ、選手にとってすごく光栄だし、日本の サッカーがアジアでトップクラスにあることを証明する格好の機会だと受け止めています。決勝戦は厳しい戦いを勝ち進んできたチーム同士の試合で、そういった舞台で何が大事なのかを言葉に変えるのはすごく難しいです。何が起きるかわからないのが決勝だからです。
約束できるのは、僕たちが全力でタイトルを獲りにいくことだけです。相手の勝利を予想している人も多いかもしれませんが必ずそれを覆し、世界の目を自分たちに向けさせたいと思います。そのためには当たり前のことですが作り出したチャンスを相手より多く、ゴールに繋げるだけです。無闇に前に運ぶばかりではなく、よりスマートにどこで繋ぐのか、どこで起点になるべきかを考えてプレーしようと思っています」
愛するチームのために、勝利を目指す。
「ガンバにまつわるすべての人がどれだけ僕を愛してくれているのか、そして自分がどれだけガンバを愛しているのかは、このクラブに在籍している年数でお分かりいただけると思います。正直、加入したばかりの頃はこれほどまでにガンバを愛することになるとは思っていませんでしたが、結果的にガンバは僕の心を離してくれません。家族も子供たちもクラブに、住んでいる街に愛着を持っていますし、大阪での暮らしを気に入っています。妻は時々『家を買っちゃう?』と提案してくるほどです。そんな気持ちにしてくれたガンバ、サポーターの皆さんのためにも僕はとにかく何かしら形になるもの、『タイトル』を、このクラブの歴史に刻みたい。ACL2決勝はその一心で戦います」
自分で選んだ道を自らの手で正解へと導くためにーー。『想い』を込めたチャレンジの結末が、明らかになろうとしている。
取材・文◎高村美砂[フリーランスライター]



