惜敗の大阪ダービー。ガンバ大阪・中谷進之介キャプテンが明かした『PK』の真相。

 35,137人を集めたホーム・パナソニックスタジアム吹田での『大阪ダービー』。否が応でも熱が入る特別な一戦での敗戦に、試合後は、スタジアム全体がなんとも表現し難い重い空気に包まれた。直近のAFCチャンピオンズリーグ2 2025/26ノックアウトステージ(ACL2)準決勝1stレグ、バンコク・ユナイテッド戦に敗れた中で迎えたこのセレッソ大阪戦を、15日に待ち受けるACL2準決勝2ndレグの戦いに向けた格好の『起爆剤』だと捉えていた選手、ファン・サポーターも多く、それもより『重さ』に変わったのかもしれない。

 特に0-1で前半を折り返した後半は、引いて守勢を強めたセレッソに対し、ビハインドを負ったガンバが主導権を握り、相手ゴールを攻め立てる構図を強めていたこと。中でも、68分には途中出場の南野遥海が、安部柊斗から送り込まれた高精度の縦パスに合わせて抜け出し、それがペナルティエリア内で相手のファウルを誘ってPKを獲得するというビッグチャンスを見出していた流れを踏まえても、落胆がより大きくなるのは当然だろう。

 だが、そのチャンスを活かしきれず、以降も果敢に相手ゴールを目指したものの、84分の南野、87分のデニス・ヒュメットのシュートシーンもゴールを捉えられないまま時間が過ぎていく。13分間の後半アディショナルタイムで鈴木徳真が放った2度のミドルシュートも、唐山翔自の右サイドからの果敢な仕掛けもゴールには繋がらず、結果2試合続けて得点を奪えないまま、ガンバは今シーズン初めて、公式戦2連敗を喫した。

■PK獲得の南野遥海と、キッカーに立ったデニス・ヒュメット。ともに示したFWとしての欲。

 この試合において、ファン・サポーターに最もインパクトを残したのは、おそらく68分に得たPKのシーンだろう。しかも、南野の突破シーンに対するVARチェックが入っている間に、早々にボールを先に手にして意欲を見せたヒュメットと、打撲によって立ち上がるのが遅れた南野が『キッカー』を巡って互いの「蹴りたい」欲をぶつけ合うシーンが見られたこと。最終的にキッカーを任されたヒュメットがそのPKを相手GKに止められ、こぼれ球に詰めてゴールネットを揺らした安部のシュートも、長いVARとOFRの末にオフサイドの判定となって取り消されてしまったこともあって、より強い印象を残したのではないだろうか。

 このシーンにおいて、最終的にヒュメットがキッカーに立った真相をキャプテン、中谷進之介が説明する。VARを待つ間、ヒュメットと南野、そこに安部も加わって話し合いが行われる中、中谷はベンチに駆け寄ってイェンス・ヴィッシング監督と言葉を交わした上でその輪に加わり、ヒュメットに「任せたぞ」と伝えていた。

「デニス(ヒュメット)も、遥海(南野)もFWで、両方の気持ちがわかるからそこは監督の判断に任せるべきだと、イェンスにどっちに蹴らせるかを確認しました。『デニスも蹴りたいって言っているし、遥海も蹴りたいと言ってる。どうする?』と。そしたらイェンスから『デニスだ』と返ってきたので、それを本人にも伝えました(中谷)」

 ヒュメットはここまでのリーグ戦でチーム最多得点(6)を刻みながら攻撃を牽引してきた一人だ。うち、3戦連発でゴールを決めていた流れも当然、監督の信頼に変わっていたことだろう。思えば、3月11日に戦ったACL2準々決勝2ndレグ、ラーチャブリーFC戦では試合の最終盤、自らの突破から絶好の位置で得たFKのチャンスの際、ヒュメットは名和田我空とキッカーの座を争う中で、名和田にそのキックを譲っている。「我空(名和田)が練習後、繰り返し、FKの練習をしているのも、決めるのも見てきたから(中谷)」という仲間の言葉に耳を傾けてのことだ。それに対して今回は、最終的に自身に託されたPKに自信を持ってキッカーに立った。

 それに対して、南野が自ら得たPKのチャンスにキッカーを願い出たのも当然の欲だと言っていい。これまでのリーグ9試合において、ガンバは5度PK戦にもつれ込んでいる中で、南野は第4節・清水エスパルス戦と第7節・ヴィッセル神戸戦で1番目のキッカーに立ち、いずれも落ち着いてゴールネットを揺らしている。清水戦後、そのPK戦について「最初のキッカーに緊張はなかったか?」と尋ねたときも「俺、PK得意なんで、全く」と涼しい顔で話していたのを覚えている。しかも、ここ数試合、途中からピッチに立った際の体のキレを見ても南野の好調ぶりは明らかだったことを思えば、自身に見出している流れを確実に引き寄せるためにも『得点』が欲しかったのは言わずもがなだ。むしろ見方を変えれば、FWを預かる以上、こうした場面で「自分が」という強い気持ちがなければ、南野はこの日、ピッチに立つことすらなかったことだろう。

 何が言いたいか。すなわち、あのPKは二人のFWが当然の如く「チームのために点を取る」ことへの気持ちを示した中で、最終的にチームとしてヒュメットに託したものだったということ。結果的にそのPKは失敗に終わったものの、南野も試合後は「自分としては、絶対に自分の方がPKが上手いと思っているので譲りたくなかった」とFWらしい本音を漏らしつつ「監督がそう決めたのであればそれに従うだけです」だと受け止めていた。

「短い時間でも結果を出さなくちゃいけないと思う(南野)」

 あわせて、そう口にしたのもFWである以上、自分への信頼が『得点数』に直結することを改めて痛感したからこその言葉でもあったはずだ。いや、彼はどんなときも一貫して「FWは点をとってナンボなんで」と自分に矢印を向けて話してきたことを思えば、「改めて」ではなく、継続的に自分に矢印を向けて次戦に向かっていることだろう。

■課題は受け止め、でも引きづらずに、ACL2準決勝2ndレグへ。

 と、PKシーンの描写が長くなってしまったが、忘れてはならないのは、敗因が決してその1つで語られるものではないということだ。先にも書いた通り、それ以外にもチャンスはあって、そこを決め切れなかったこと。中谷の言葉を借りれば、前半からうまくチームとしての機能が見られなかった中で先制点を許してしまった展開も原因の1つだろう。

「前半からなかなか守備がハマらず、去年の開幕戦の大阪ダービーのような展開になってしまった。今年の開幕戦でアウェイで戦った時は、どこにボールが出てくるのか理解した上で守備をしていた分、それがしっかりハマって自分たちの流れに持っていけましたけど、今日はいろんな選択肢がある中で、どこどう守ればいいんだろうという迷いみたいなものは前半から顕著だったかなと思います。メンバー表を見た時に相手のチアゴ・アンドラーデ選手が裏を狙ってくるんだろうなということは想像できていたし、実際に中盤のところでボールを持たれて、いろんな選手が入れ替わりながら狙ってくるという展開になった中で、いい時のガンバのように守備のところでハマらずに攻撃のリズムも見出せなかった。前からハメにいくのであればもっと強くいかなきゃいけなかったし、今日の前半みたいに中途半端になるならいかずにもう少し展開を見て、でも良かったのかな、と。そこは直近のバンコク・ユナイテッド戦(ACL2準決勝1stレグ)も然り、自分たちの流れがハマらなかったとき、セカンドボールが拾えなかった時には『いかない』という選択肢も持つべきというか。うまくいっていない状況を踏まえたプランを持って戦っていけるようにならなくちゃいけないと感じました(中谷)」

 そして、試合を終えた今、何よりも大事なのは敗戦を引きずることなく、そうした課題を踏まえて今一度やるべきことをリマインドして、頭を下げずにバンコクの地に乗り込むことに他ならない。

 1stレグの試合内容、結果を踏まえても、1点のリードを奪っているバンコク・ユナイテッドの守備が堅く閉ざされるのは想像できる中で、そこをいかにこじ開けるのか。ヴィッシング監督は1stレグを終えた時点で、堅守をこじ開けるための課題として「シャープさ、前に出ていく推進力、ライン間で受けること、裏への抜け出し」を挙げたが、そうしたシーンを酷暑の中でいかにチームとして数多く見出していくのか。

「1stレグの前半は、デニスもジェバリ(イッサム)もなかなかボールが入ってこなかった展開の中、あの二人はボールを触りたいタイプというのもあって、ボールをもらうために落ちてきてしまい、攻撃が手詰まりになることが多かった。そうではなくて、チームとしてもっとしっかりとボールを動かして背後も狙うという展開を粘り強く続けていかないと相手も崩れない。ボールが仮に来なくてもしっかり動き出し、ちゃんと動き続けることが大事だと改めて感じました。また、点を取らなきゃ、取りたいという気持ちが強すぎてリスクマネージメントが疎かになり、その分、(相手のカウンター攻撃に対して)スプリントで戻らなくちゃいけなくなり、体力を削ってしまったという反省もあった。そういう意味では気持ちが前に出過ぎるのも課題というか。アウェイ戦は特に暑さとの戦いもある中で、そのリスクマネージメントをしながら、体力を温存して戦うことも大事になってくると思っています。0-1で折り返す状況を自分たちのいいプレッシャーにして、自分たちにしっかりハッパをかけて勝ちに行く。それだけです(安部)」

 さらに言えば、2ndレグのバンコク・ユナイテッド戦は今シーズン、初めてキャプテン・中谷を出場停止で欠いて臨む試合だ。その状況下、誰がリーダーシップを取ってチームを、ゲームをコントロールしていくのかも大事な要素になることだろう。すでに全体練習に合流している宇佐美貴史が満を持して、この大一番に戻ってくる可能性も高く、出場となれば彼の『タイトル』への熱がいかにしてピッチで表現されるのかも楽しみの1つだ。

 その決勝進出に向けた大一番は4月15日。ガンバは再び、気持ちを揃えてタイに乗り込み、勝ちにいく。決勝進出の切符を是が非でも掴み取るために。

https://news.yahoo.co.jp/users/expert/takamuramisa

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