<ガンバ大阪・定期便153>『史上最強の三浦弦太』を更新中。衝撃の『ズドン』とヴィッセル神戸戦。

■ラーチャブリーFC戦の『ズドン』はいかにして生まれたか。

 3月11日にアウェイの地で戦ったAFCチャンピオンズリーグ2 2025/26ノックアウトステージ準々決勝2ndレグ・ラーチャブリーFC戦。29分に三浦弦太が衝撃的なミドルシュートで先制点を奪った直後から、ガンバ大阪界隈のSNSは「弦太のズドン」「三浦のズドン」で賑わいを見せた。

 確か、そのワードは2024年2月のJ1リーグ開幕戦・FC町田ゼルビア戦で宇佐美貴史が決めたフリーキックのシーンが伏線だったと記憶している。

 0-1で迎えた84分に得たフリーキックのチャンス。キッカーに立った宇佐美は、ボールをセットしていた際、近づいてきた三浦弦太に耳元で囁かれていた。

「隣にいた圭介(黒川/D.C.ユナイテッド)は全く蹴りたい空気を出していなかったのに、弦太(三浦)がなぜかあのタイミングで『俺が、ズドンを蹴ろうか?』と聞いてきたから『いや、俺が蹴る』と。何をふざけたことを抜かしとんねん…っていう心情を表していたのが、映像でも捉えられていた僕の表情です(笑)。弦太は本気やったかも知らんけど。おかげで多少、気持ちはリラックスできた…いや、そこは全く関係なかった!(宇佐美)」

 そのフリーキックを宇佐美が見事にゴールにおさめ、以来、三浦の言う『ズドン』を見ることもなく…というより、同シーズンの4月末に三浦は右膝前十字靭帯断裂と右膝内側半月板損傷の大ケガを負って長期離脱となってしまったこともあって、長らく、そのワードが聞かれることはなかった。

 それは、三浦が25年4月のルヴァンカップ・水戸ホーリーホック戦で約1年ぶりに公式戦復帰を果たして以降も、だ。それはコンスタントにピッチに立つ機会に恵まれなかったことや、そもそもセンターバックというポジション柄、流れの中でそう多くのシュートチャンスを見出せないのもあったはずだが、その『弦太のズドン』が約2年の時を経て、ラーチャブリー戦で現実となる。

 しかも、チームメイトですら「あそこから打つとは思わなかった(安部柊斗)」と振り返るほど意表をつき、かつ、ものすごい弾道でゴール左上を突き刺した。

「あの試合は何回か高い位置に入れるシーンがあって、距離的にも打てそうな場面もあった中で、逆にそこからどう展開していこうかなと考えていたんです。あそこからの崩しというか、僕が外側で受けてどうすればチームとしてゴールに迫れるのか思案していました。その中で、あの得点シーンはボールを受けて、2タッチ目で振り抜いたんですけど、シン(中谷進之介)が少し僕の前目にパスを出してくれたのが大きかったというか。もし足元でボールを受けていたら、ゴールとの距離がもう少し開いたので打たなかったと思うんですけど、少し前目に出してくれたことで、ゴールに近づく感じでボールを受けられた。あとはノリというか、勢いで打ったらいいところに飛びました

 ACL2では、明治安田J1百年構想リーグとは違うメーカーのボールを使用しているが、「ボールの癖を語れるほど僕のキックは繊細じゃない(笑)」と三浦。「ピッチコンディションがあまり良くなかったからミドルシュートが有効だと思ったのか?」と尋ねると「宇佐美くんに尋ねたらきっと面白い答えが出てきそうだけど、僕には無理」と笑い、ただただ「ボールの芯を食えたことが全て」と言葉を続けた。

「キックの時にボールの芯をしっかり食って打てると、ボールが軽く感じるというか。ボールを蹴っている感覚がないといえば大袈裟だけど、打っている感覚が最小限になるんです。逆に言うと『ボールを蹴ってるな』って思う時は芯を捉えられていないとき。かといって、僕自身はそこまで繊細にキックのことを考えてプレーしているわけではないですけど(笑)、少なからずあの時はめちゃめちゃ芯を食っていたからか、めちゃめちゃボールが軽く感じた。無回転になったのもおそらくそれが理由。意図的に狙ったわけではなく、打てそうだな、打とう、で、打ったら結果、無回転になった感じでした」

 冒頭に書いた、2年前の『ズドン』の話に遡り「あれが例の?」と振ったところ「冗談だと思っている人も多かったはずだけど、実際にあるんです」と胸を張った。

「たまにシュート練習もしているし、自分の中ではホンマに打とうと思えば打てるんだけどな、って思いもあったけど、なかなか出す機会がなく…。でもあの一発が決まったことで今後、ああいうシーンで打って、仮に蒸してしまったとしても誰にも文句は言われないな、と(笑)。なので、闇雲には打たないけど、また打てそうなシーンがあれば積極的に狙っていこうと思います」

■プロキャリアで初めて、PKのキッカーを任されたヴィッセル神戸戦。

 そんな話を聞いた翌日、再び、三浦の右足が炸裂したのが3月18日のJ1百年構想リーグ第7節・ヴィッセル神戸戦だ。先に書いたアウェイでのラーチャブリーFC戦を2-1で勝ち切り、そこから中2日で戦ったアウェイでの第6節・サンフレッチェ広島戦を0-2で敗れた後の試合だ。

「広島戦は『アウェイ連戦』の難しさもあったし、内容的にも今までの試合に比べて物足りなかった中で0-2で敗れたんですけど、なぜだかわからないけど、あの敗戦が自分の中でなんかものすごく悔しくて。これまでもいろんな接戦の試合があったし、なかなか点が取れなくて、とか最後で粘れずに、みたいな試合はあって、その都度、悔しい思いはしていたけど、それを遥かに超えて無性に悔しかった。今年に入って90分で負けたのが初めてだったからかも。だからこそヴィッセル戦は何がなんでも勝ちたいと思っていました」

 内容としては、セットプレーから先制点を許す展開にはなったものの、特に前半は相手を圧倒。今シーズン、イェンス・ヴィッシング監督のもとで突き詰めてきた戦術を余すことなく表現しながら同点に追いつき1-1で折り返す。後半はやや押し込まれる時間もありながら83分に山下諒也のゴールで逆転に成功。だが、90+4分に同点弾を許して、勝負はPK戦に持ち越される。

 三浦の右足が火を噴いたのはそのPK戦だ。

 彼が出場した試合では、第4節・清水エスパルス戦に続き今シーズン2度目のPK戦で彼は初めて、5番目のキッカーを託された。

「プロになってPKのキッカーに立ったことがなかったので、5番目と聞いて『ようやく、PKが蹴れる!』と、嬉しかった(笑)」

 そのPK戦。ガンバは南野遥海、食野亮太郎、安部柊斗、奥抜侃志の4人全員が成功したのに対し、神戸は1番目のキッカーが外したため、三浦が決めればガンバが勝利を引き寄せられるという展開に。痺れる状況でキッカーに立った。

「ボールを丁寧にセットしたのに、レフェリーにまさかの『もうちょっとボールを下げてください』って言われたので置き直しました(笑)。相手GKを見て蹴ろうと思っていたんですけど、あまり動かなかったので、少し助走で間合いを取って狙ったところに、ちょっと浮かせて蹴ったらいいところに決まりました。PKの練習も普段からやっているので特に緊張もなく楽しめました。もちろん90分で勝ちたい試合だったので最後に追いつかれたのはチームとして反省しなくちゃいけないし、PKで勝てたことについても素直に喜べなかったですけど、絶対に勝ちたい試合だったので、PKでも勝てて、大事な勝点2を取れて良かったです。またこれをしっかり次のアビスパ福岡戦に繋げることが大事だと思っています」

■試合を重ねるごとにギアを上げ、『堅守』を光らせる。

 というように、インパクトのあるシーンが続いたため、得点に関する描写が長くなったが、ここ最近の三浦は、センターバックとしての『守備』でも安定感抜群のパフォーマンスが目を惹く。シーズン初先発となった第3節・ファジアーノ岡山戦以来、公式戦を戦えば戦うほど、ギアが上がっていく印象だ。

「シーズン序盤は古傷が痛んだり、それによってコンディションが上がっていかないのを感じたり。なんなら去年、戦列に復帰した時以上になんかしっくりこないみたいな感覚が拭えなかったんですけど、公式戦に出るようになったら、それまで気になっていた箇所が全く気にならなくなり、動きも一気に変わったというか。体を診てもらっているトレーナーの方にも『試合をするとこんなに変わるのか』みたいに驚かれましたけど、公式戦という素晴らしいピッチ、熱量のある応援のもとでサッカーをすることで、体にも頭にもスイッチが入り、さらに続けて試合に出ることによって自分が整っていくというか、上がっていくみたいな感覚をすごく得られています。そういう意味では試合にはやっぱり特別な力があるなと実感しています」

 持ち味である1対1の局面で見せる強さはもちろん、1つ1つのプレーに対する読みの鋭さ、それを元にした反応という面でも体が動いているのは明らかで、最後の一歩、最後1メートルといった際の粘りでチームの危機を摘み取っているシーンも多い。センターバックでコンビを組む中谷と築く『鉄壁』はJ屈指といっても過言ではない域に達しつつある。

「長期のリハビリ期間を、体やサッカーのことだけではなく、人生観を見つめ直すような有意義な時間として活用できたのは復帰した今も自分の大きな力になっています。それによって例えば、試合に出られないとか、思うように体が戻らないみたいなことがあっても『サッカーではうまくいっていないけど、それが人生を否定するものじゃないから大丈夫』みたいに揺り動かされなくなった。きちんとやるべきことをやって、毎日を積み上げていれば着実に自分は前に進んでいるし、その日々があれば『自分は絶対にやれる』という自信が失われることもないですしね。あとは、自分に対して悪い理由を見つけなくなりました。例えば、何かがうまくいかなかった時に、アスリートって『筋トレをサボったからかな』とか『あの練習が良くなかったのかな』的に理由を探しがちですけど、今の僕は違う。ここが良くなかったから次はこうしよう、っていうだけで、未来にしか気持ちは向いていない。もちろん自分の歩んできた道、やってきたことが全て正解とは限らないけど、失敗に見えていることも、長い目で見れば実は成功につながる要素だったってこともあるはずですしね。実際、今は失敗に思えても何試合後、何年か後、うまくできるようになれば、その過程も『あれがあったからだ』と成功に変換できる。だからこそ今は全てのことが自分にとって意味のあることだと受け止めて、未来に気持ちを向けて進んでいます」

 その境地を手に入れたからか、三浦は今、とても楽しそうだ。もちろん、連戦の疲労がないといえば嘘になる。だがそれもひっくるめて、試合を戦える幸せが上回っていると言っていい。

「長いリハビリ中も、ケガをする以前の体に戻そうという感覚ではなく、むしろ、よりいい状態になって戻ってやるという意識でリハビリと向き合っていたし、その『もっと良くなる』という感覚は今も持ち続けています。まだまだ、ここから、もっともっと、上げていきますよ」

 その思いのもと『史上最強の三浦弦太』を日々更新することを彼自身も楽しみながら、その体は今日も強く、逞しくピッチを駆ける。

https://news.yahoo.co.jp/users/expert/takamuramisa/articles?page=1

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