「その差は結構ある」山口蛍が語ったV・ファーレン長崎に必要な経験値。「みんなの気がちょっと緩んだ」【コラム】
明治安田J1百年構想リーグEAST第5節が8日に行われ、V・ファーレン長崎はガンバ大阪に3-2で逆転負けを喫した。試合後、キャプテンの山口蛍は課題を口にする。J1で戦い抜くために必要な経験値、チームとして成熟するための要素を、百戦錬磨のリーダーははっきりと感じ取っていた。(取材・文:元川悦子)
●自信をつかんだ中で挑んだガンバ大阪との一戦
2018年以来のJ1参戦を果たしたV・ファーレン長崎は、明治安田J1百年構想リーグWESTの開幕2試合でサンフレッチェ広島やヴィッセル神戸といった上位陣との実力差を突きつけられた。
それでも、第3節の名古屋グランパス戦、第4節のセレッソ大阪戦に連勝。2勝2敗の五分の成績に戻したことで、高木琢也監督も選手たちも少なからず自信を得たことだろう。
前向きな機運の中迎えたのが、第5節のアウェー・ガンバ大阪戦だ。相手は目下、百年構想リーグとAFCチャンピオンズリーグ2(ACL2)の超過密日程を強いられており、今回も4日のラーチャブリーとの死闘を演じたばかり。
消耗度が高い分、フィジカル的には長崎にアドバンテージがあると見られた。その優位性を最大限活かしたかった。
実際、前半はそういう戦いができた。開始13分にデニス・ヒュメットに先制点を奪われたものの、長崎はひるむことなく前向きな姿勢を維持。21分にマテウス・ジェズスが自ら得たフリーキックをそのままゴール右隅に蹴り込んで、瞬く間に同点に追いついた。
そして6分後には、ガンバの中谷進之介の縦パスをチアゴ・サンタナがカット。ボールを受けたジェズスが反転から豪快な追加点をゲットし、2−1とリードしたのである。
前半はこのまま終了。内容的にも相手のシュート2本に対し、長崎が4本と上回っており、3連勝がかすかに見えてきたところもあった。
●「その差は結構ある」
しかしながら、ガンバも黙っているはずがない。
イェンス・ヴィッシング監督は凄まじい勢いで選手たちを鼓舞。一気にギアを上げてきたのである。
長崎にとってダメージが大きかったのは、51分に喫した2失点目だろう。
セットプレーの流れから、ファーサイドへ侵入した中谷を捕まえきれず、“一瞬の隙”を突かれた形となった。
中谷のゴールによって、ガンバが大きく自信を取り戻したのも間違いない。
攻撃の迫力はさらに増していった。
ここからの長崎は防戦一方で、自陣に引いて跳ね返すのが精一杯。なんとか耐え切りたかったが、83分に半田陸に決勝点を許してしまった。
終わってみれば、2−3の逆転負け。キャプテンマークを巻く山口蛍も試合後、「もったいなかったです」と話を切り出した。
「いろんな展開がある中で、『こうした方がいい』とか『ああした方がいい』というのを試合中に分かっている選手と分かってない選手がいる。
その差は結構あると思うんで、試合経験を重ねていくしかないと思います」と2度のワールドカップなど高度な舞台を知るリーダーは厳しい表情でコメントした。
ガンバのタレント力は最初から分かっていたことだが、彼らにここ一番で切り崩されてしまうのが、今の長崎の脆さでもある。
●高木琢也監督「本当にもったいなかった」
高木監督も「自分たちがノリノリでできている時は相手の攻撃を止めたりできるんですけど、相手の流れになった時に耐えるとか、もう1回自分たちの時間にするということがまだできていない」と指摘した。
「今日の3失点を見ても、1点目はちょっとイージーすぎるけど、それ以外はセットプレー。本当にもったいなかったですね。悪い流れで失点しなければ、また自分たちのペースにどこかで持っていけると思っていたけど、失点して雰囲気に飲み込まれてしまった。
ピッチで戦っているのは僕ら選手なんで、もっとみんなで意思疎通して、うまくできるようにしたいです」と山口も試合中のコミュニケーションと意思統一の重要性を痛感している様子だった。
この日は残念ながら結果はついてこなかったが、百年構想リーグを戦う中で長崎は少しずつ前進を見せていると言っていい。
2月13日の神戸戦で0−2と完敗した際には「手も足も出ない」といった印象さえあった。しかしその後は白星を手にし、ガンバ戦でも一時はリードを奪うところまで持ち込んでいる。
エースであるジェズスの調子が上がってきたことも大きいが、選手個々が少しずつJ1基準に適応しつつあるのも確かだろう。
●「どれだけ時間がかかるんやろって…」
「俺は神戸の後、1勝するのにどれだけ時間がかかるんやろって思ってました。その次から2つ勝てたことは大きかったですけど、逆にそれでみんなの気がちょっと緩んだところがあるんじゃないかなと。
サッカーって1人でできるものじゃないから、チームとしてまとまったところが一番強いんですよね。
それはヴィッセルに行ってつくづく感じたこと。あれだけ個の能力がある選手が揃っていても、神戸では残留争いをしたことがありましたよね。
逆にまとまった時には優勝できた。まだまだ先は長いけど、僕らもそういうチームになっていかなきゃいけないと思います」
山口は神戸時代の経験を思い浮かべながらこう語っていたが、長崎も強固な一体感と結束力を持った集団へと変貌していかなければいけない。
J2降格のない百年構想リーグで成長の時間を与えられているのは本当にラッキーなこと。この1つ1つの戦いを糧にしながら、前進していくしかないだろう。
●「ああしたらよかったという話をしてますけど…」
「そのためにも、試合の中で判断できるようになっていくことが大事。みんな試合が終わってから『ああしたらよかった』という話をしてますけど、試合の中でもっと話していくようになれば、違ってくると思います」と百戦錬磨のキャプテンは神妙な面持ちで言う。
外国人助っ人陣と日本人選手の意識をすり合わせていくのは大変な作業かもしれないが、山口にはそれができるはず。今こそ、高度な統率力が求められてくるのだ。
長崎はここからアビスパ福岡、京都サンガF.C.、ファジアーノ岡山と対峙する。
福岡は今季低調で勝ち点3獲得のビッグチャンス。京都や岡山も波のある状態だけに、ポイントを稼げる可能性はゼロではない。
そうした相手を着実に攻略し、チームとしての成長を続けていけば、生き残りのかかる26/27シーズンで堂々としたパフォーマンスを示せるはずだ。
長崎がいい方向に進むか否かは、絶対的リーダーである山口の一挙手にかかっている。彼にはこれまで以上に大きな存在感を示してほしい。



