<ガンバ大阪・定期便151>縦へ、縦へ。鈴木徳真が面白い。
ズバッ、ズバッと音が聞こえてくるような前線への縦パスで攻撃を加速させる試合が続いている。直近のJ1リーグ第4節・清水エスパルス戦における2ゴールはいずれも鈴木徳真が自陣、深い位置から縦に刺したボールから攻撃が始まり、1つ前の第3節・ファジアーノ岡山戦で南野遥海が76分に決めた決勝点も、鈴木徳真が左サイドMFの食野亮太郎へ送り込んだ精度の高い縦パスからゴールをこじ開けた。
それぞれの試合映像を見返しながら彼の思考に触れてもらうと、面白いかもしれない。
「岡山戦で遥海が決めたゴールシーンは、諒也(山下)に出す1つ前のプレーが布石だったというか。自分でボールを奪った後、誰も味方選手は走っていないのをわかっていながら、相手DFラインの裏にわざと1回ボールを流し込んだんです。それによって一旦、相手が後ろ向きになり、そこで相手が同サイドで繋ぐ選択肢をとったのでより狙いを定めやすくなって、相手がロストしたタイミングでもう一回、縦に付け直しました。あの一連の流れではああいう縦パスが有効だと思ったし、相手の3バックの右センターバックか左センターバックの後ろのスペースを使えた瞬間に自分たちは得点チャンスが生まれるだろうなってことは試合前から描いていたので、それがうまくプレーで表現できたシーンでした」
AFCチャンピオンズリーグ2・ラウンド16 2ndレグ・浦項スティーラーズ戦も印象的だ。34分にデニス・ヒュメットが決めたゴールシーンでは積極的な仕掛けから起点となり、41分にはハーフウェーライン付近から浮き球を送り込み、山下諒也のゴールに繋げた。
「デニス(ヒュメット)のゴールシーンはボールを受けた瞬間、プレッシャーをかけてきた選手の背後のスペースが見えたので、あそこを使って攻めればチャンスになるかなと思っていました。ボールを(ペナルティエリア内に)持ち運んだ際にどの選手が出てくるのかに応じて最後の選択を決めようと思っていたんですけど、2枚食いついてくれたことで諒也(山下)が空いたのが見えたので彼を使おうと思いました。また、諒也のゴールシーンは、思ったよりボールが短くなってしまったんですけど、諒也が機転を効かせて手前にきてくれたことでいい得点の形になったと思っています」
もちろん、どれも彼一人のパフォーマンスで語れるものではなく、チーム戦術も大いに関係している動き、プレーだ。それは大前提にあるにせよ今シーズンの鈴木はとにかく、縦、縦、縦、縦。まさに、イェンス・ヴィッシング監督が理想とする縦に速いサッカーの体現者になっている。
「去年まではチームとしてボールを大切にしたいスタイルだったこともあり、前にパスを出したいなとか、出せるかなと思ったシーンでも、どことなく『そんな、遊ぶなよ』という雰囲気を感じて、より『失わない』選択をすることが多かったと思うんです。でも、今年はイェンス(監督)からミスをしてでもいいから、とにかくどんどん前につけていけ、前に意識を持て、と繰り返し言われているので。チーム全体がその狙いのもとで動いている分、自分も前を見れるし、実際に(前を見たときに)必ず味方がそこにいるのですごくやりやすさを感じています。なんていうか、チーム全体が『ボールは前に行くもんだ』ということを前提に動いているからこそのスムーズさというのかな。その連動がある分、仮にそこで(ボールを)ロストしてしまったり、思うように繋がらなくても高い位置で取り返せばいいという雰囲気もあるし、実際に取り返すこともできている。そういう意味ではすごくいい循環の中でプレーができている気がします」
事実、昨年の鈴木はどちらかというと攻撃にかかった際のプレー選択が、横、あるいは後ろになることが多かった。開幕を目前にして一昨年、数多くの試合でダブルボランチを組んでいたダワンがチームから去り、その都度、組む相棒やバランスに応じて、自身の役割を意識し過ぎるあまり、どこか窮屈そうにプレーしていた印象だ。頭の回転の速さを活かしつつ、バランサー的役割を担えるのも鈴木の持ち味の1つとはいえ、正直、返ってそれが彼自身を苦しめていた感も否めなかった。
だが、今シーズンは違う。これまで通りにバランスは意識しながらもそのプレーに窮屈さは感じられない。むしろのびのびプレーしている印象だ。端的に表現すると『楽しそう』。今シーズン、鈴木が先発したほとんどの試合でダブルボランチを形成している安部柊斗との関係性の良さもプレーを加速させているのかもしれない。
「昨年の途中に柊斗が加入してからも、お互いのプレーを見ながらプレーするというトライはしていたんですけど、正直、僕の中ではまだアジャストし切れなかった気がしていたんです。でも今年は柊斗の特徴も理解した中でどうするのが最適解か、みたいなことが明確になったというか。柊斗がドロップしてくるなら僕が前に行く、柊斗が上がっていくなら自分がバランスをとるという調整もうまくいっているのかな、と。それは、チームの『前を目指したスタイル』が影響していると思います。以前のサッカーだと自分の立ち位置と関係性で解決することが多かった分、自分が無闇に動きすぎると味方のタイミングやスペースを消すことになりかねないなと思っていたんですけど今はそうじゃない。一人が局面を打開していくこと、剥がすことによってチャンスが生まれることも多いし、それがチーム全体をより前に進めることにもなるので、ボランチを組む選手との関係性は『リスク』だけを考えればいい。そういう意味では、自分の特徴とかやりたいことがチームのサッカーにリンクしているというか。求められていることが個での打開だということが第一にある分、やりやすいし、前に行く機会が増えれば増えるほど、左右両方から攻めていける状態が作れるなという手応えを持てています」
また、昨年までと比べて、彼のポジションが単純にやや高くなっていることもゴールの起点になるような縦パスの回数につながっていると言ってもいいだろう。
わかりやすく、ほとんどの試合でダワンとダブルボランチを組んだ24年と今シーズンのポジショニングの変化についても尋ねてみる。
「24年にダワンと組んでいた時は、チームでの役割としても、ダブルボランチは一人が真ん中に落ちて、一人は脇で高い位置を取るという感じだったし、ダワンは前にいる方が確実に活きると思っていたので。僕自身は攻撃にかかる時も『6番』のポジションからトップ下にパスを出すことが多かったと思うんですけど、今はその時よりも1つ前の『8番』のポジション…とは言い切れないけど『ボランチ』というセントラルミッドフィルダーでプレーできていることが、縦パスの成功率を上げているところもあると思います。単純に前との距離が近いというか、2年前に比べて5〜10メートルほど前でプレーできていることでゴールに繋がるパスになることが多いのかな、と。プラス、やっぱりチーム戦術ですね。みんなが前を向いてプレーする中で、前線でしっかりボールを収めてくれる、前を向いてくれる選手もいて、タメを作ってくれる分、セカンドボールも拾いやすいし、前のサポートもできるという状況が生まれているんだと思っています」
ただし、自分たちのサッカーを表現することや『前へ』の選択肢を最優先に考えながらも、闇雲に縦に、とは思っていない。当然のことながら、相手の出方、スタイル、戦略もある中で試合展開によっては割り切るところ、ロストしない時間を作ることも必要だという思考は今も持ち合わせている。先に書いた浦項とのACL2ラウンド16・2ndレグもそうだったが、特にJリーグに比べてよりオープンな戦いになるACL2ではよりその意識を持つことも結果を掴む上では大事になってくるからだ。
「この先、前に行く時間帯と、ロストしないで時間を作る調整をすることで相手のベクトルをうまくコントロールできるようになれば、より試合展開としては運びやすくなるはずなので。そこは僕自身もバランスはとっているつもりだし、各々が意識しているんじゃないかなとは思います。あと、今は序盤戦でどのチームも完全には上がりきっていない状況だからうまくいっているところもあると考えれば、サッカーの質と各々のコンディションのところはまだまだ上げていかなくちゃいけない。清水戦や浦項戦の反省としても残ったように2点取ってOKではなく、3点目、4点目を確実に奪っていけるようなチームになっていければ、もう少し楽に試合を運べるはずですしね。それは僕自身にも言えることで、毎試合後には映像でプレーを確認して、自分の選択が果たしてベストだったのかを見返すようにしているんですけど、その中では自分のプレーの質ももう少し上げていける気がするし、それによってもっとチームに貢献できるんじゃないかと思っています」
そういえば、先に書いた『楽しそう』にも通じる話だが、直近の清水戦におけるPK戦。鈴木は5番目のキッカーを任された。先攻だった清水の4番目のキッカーがゴール枠を捉えられなかったことで、鈴木は、決めればPK勝ちを引き寄せられる状況下でキッカーに立つ。
「ヒガシくんをはじめ、みんなが繋いでくれたものを勝利に繋げたいなと思って蹴りました」
少し間合いを取って狙ったのは、ゴールマウス左中あたり。右足で蹴り込んだボールは相手GKの手をかすめてゴールネットを揺らし、勝利を引き寄せる。ガッツポーズとともに笑顔が弾けた。
「緊張は全然なかったです。僕が外しても次の人が蹴るだけなので(笑)。気負いなく蹴ったし、ワクワクして楽しかった。蹴れたらいいなと思っていたので、蹴れてよかったです。5番目に名前が呼ばれた時に僕で試合を決められるようなストーリーを作ってくれたら面白いなと思っていたら、その通りになりました」
痺れる局面こそ、難しい局面こそ、楽しんで。清水戦のラストシーンでも、そんな鈴木の姿が垣間見れた。
https://news.yahoo.co.jp/users/expert/takamuramisa/articles?page=1



