<ガンバ大阪・定期便150>南野遥海。爆発を予感させる始まりの『1』。

 今シーズン初ゴールは自身待望の「チームを勝たせる」ゴールになった。

 2月22日の明治安田J1百年構想リーグ第3節、ファジアーノ岡山戦。後半からピッチに立った南野遥海は1-1で試合が進んだ76分、山下諒也のシュートのこぼれ球に反応し、ダイレクトで左足を振り抜いた。

「山下(諒也)選手がドリブルで仕掛けたので、そのフォロー役というか、パスをもらうなり、何かしら起きるかなと思って(ペナルティエリア内に)入っていったら、彼のシュートのこぼれ球が自分の目の前に転がってきました。打った瞬間は入るなっていう感覚があったんですけど、後から映像を見返したら結構際どいコースだったので入って良かったです」

 ペナルティエリア内には、敵も味方も密集している状況だったが、唯一見えていたのが、ゴール右下のコースだったという。

「逆サイドの方は空いているなと思ってそっち方向に蹴れば入るかなという感じでしたけど、結果的にすごいところを通っていきました。シュートは入るか入らないか紙一重なところもありますけど、あそこで足を振れるかどうかが大事だと思うので、しっかり足を振れたのは良かったです」

 その一振りは、J1百年構想リーグ初の90分勝利に繋がった。

 『足を振る』。

 思えば、昨シーズンのJ1リーグ最終節・東京ヴェルディ戦で南野が『J1初ゴール』を決めた際にも聞いた言葉だ。

「外から試合を見ていると、シュートを打てそうやのに打たないシーンが結構多かったというか。もちろん、ピッチに立てばまた見える景色は違って、外から見るほど簡単じゃないとは思うんですけど、でも勝つためにはシュートが必要やし、ゴールを決めるにはシュートを打たないと何も始まらんから。状況を打開するためにシュートを打つという選択肢を持とうと意識していたし、とにかく足を振っていこうと思っていました。チームとしての戦いと個人のエゴのバランスは考えなアカンし、自分が、自分がってなり過ぎるのも良くないですけど、僕の今シーズンの稼働率を考えるとそんなことも言っていられないので。エゴやと思われるくらい自分を出していかないと何も変わらん気がしますしね。っていうか、最終戦ということもあって、プレーがどうこうというより点を取りに行くことしか考えていなかったです」

 彼がピッチに立った時点でチームが3点のリードを奪っていた状況に助けられた部分もあったはずだが、前線をガムシャラに走り回る姿や試合終了間際、90+4分にこじ開けたガンバでの初ゴールは、まさにその思いがヒシと伝わるものだった。

「だいぶ長かったな、っていうのが最初に思ったことです。プロになってこんなに長くゴールを決めていないシーズンはなかったし、自分としては難しい1年を過ごしてきたので、ホッとしたという気持ちもありました。軸足が滑っちゃったのは、まさかでした。もうちょい、綺麗に打てるかなと思っていたんですけど」

 プロになって初めてガンバでプレーするシーズンだったとはいえ、プロ3年目の自覚もあってだろう。ゴールを決められた事実をそこまで手放しに喜んでいなかったのも印象に残っている。彼なりに、理由はあった。

「決められた嬉しさというより、この1年間、ほんまに悔しかったので。せっかくガンバに戻ってきて何もチームの力になれないまま最終節を迎えて…って感じだったので、ホンマに最低限の1点だと思っています。ただ、点を取るのと取らないとでは来シーズンに向かうメンタルもまた変わってくる気がするので。1つ取れたのは良かったですけど、こういうシーズンになったのは全部、僕の責任というか。シーズンの序盤は結構、出場時間をもらっていたことを考えても、自分の能力が足りなかったことがこの結果を招いた1番の原因だと思うので、もう一回、今年の自分を整理して、また来シーズンに向けて準備していこうと思っています」

 その『1』を刻んで迎えた今シーズン。南野は序盤から好調ぶりを示してきた。イェンス・ヴィッシング監督が求める、前線からのプレッシング、高い位置でボールを奪った上での縦に速いサッカーへの適応も早く、「すごくやりやすい」とも手応えを口にしていた。

「前線からのプレッシングやボールへのアプローチはイェンス(監督)にも求められている部分。それが効果的にかかればより高い位置でボールを奪える機会も増えるはずだし、いい守備ができればいい攻撃ができるって予感はすごくあります。ってか、僕の特徴的にも(前線からの)守備をすることから自分の攻撃が始まっているというか、一連の動きの中でゴールを目指せる感覚もすごくいい。守備でしっかり走っていたらしっかり体も動いてきてリズムが生まれ、それがそのまま攻撃に繋がっていく、みたいな。そういう意味では、そこまで深くいろんなことを考えなくても、守備から攻撃という繋がりの中でゴールを目指せている気がします」

 であればこそ、「結果をめちゃめちゃ自分に求めています」とも続けていた。

「コンディションはめちゃめちゃいいし、練習試合でも点を取れていますけど、それって去年の初めも思っていたことやから。でもいざ試合に出たら全然何も仕事ができひんかったわけで…結局、チャンスをもらった時に仕事ができひんかったら練習試合で点を取ったとか、体が動けている、みたいなことは何の意味も持たない。プロの世界で『チャンス』なんて、そうそう何回ももらえるものでもないですしね。だから、やっぱり今年は『結果』やと思っています。周りに点を取らせるとか、いい守備でスイッチを入れるとか、そういうことじゃなくて、FWなので得点。走って、守備をするみたいなことはむしろ僕にとってはオマケで、第一の仕事は点を取ることやと思っています」

 そんなふうに『得点』への野心をギラつかせてJ1百年構想リーグの開幕戦から先発出場し、冒頭に書いた岡山戦では公式戦5試合目にして早くもシーズン初ゴールを挙げたとなればーー。

 自然と、開幕前に行っていた彼へのインタビューでの言葉が再生される。

 沖縄キャンプ中も暇さえあれば海外サッカーの試合を観ていたという『海外サッカー好き』の南野に、今シーズンの目標を尋ねた時のことだ。

「今シーズンのイメージは、サミュエル・エトーみたいな? ペップ・グラウディオラ率いるFCバルセロナ時代のエトーは最初、ペップの構想外だったらしいのに、2008-09のプレシーズンでめちゃめちゃ点を取ってペップの信頼を掴み、1シーズンを通して活躍しましたからね。僕もそのイメージで、ハーフシーズンで二桁、10点を取るのが目標です」

 実はそのインタビューはU-15日本代表で初めて顔を合わせて以来、仲が良く、今年からはチームメイトになった同級生、池谷銀姿郎との対談だったのだが偶然にも、南野がシーズン初ゴールを挙げた岡山戦は、池谷の記念すべきプロデビュー戦に。それも含めてメモリアルなゴールになったのでは? と尋ねると、仲が良いからこその『毒舌』で仲間を叱咤した。

「一緒に出れて良かったですけど、あいつにはもうちょっと集中力を持ってやって欲しかった(笑)。なんか、ボケとって、抜かれてたし!」

 おそらくは84分からピッチに立ち右ウイングバックを預かった池谷が、90+4分に岡山の白井康介に突破を許し、クロスを上げられたシーンを指しているのだろう。だが、大丈夫。そこは池谷も真摯に受け止め、ポジティブに前を向いている。もちろん、南野のゴールにも刺激を受けたようだ。

「ボールを奪おうという意識が強すぎて変に抜かれちゃったというかクロスを上げられちゃって…ボール1個分、寄せ切れなかったんですけど、あそこは上げさせない方が良かったと思います。並走はしていたし、ぶっちぎられたわけでもなかったと考えてもそんなにネガティブには考えてないけど、そこは突き詰めていかないと、とは思いました。遥海のゴールは、ベンチから見ていましたけど、決めた瞬間はすごい嬉しかったし、その場に自分がいれたのも嬉しかったです。でも、次はそのゴールを同じピッチで一緒に喜びたいです!(池谷)」

 話を戻そう。ところで、先に名前の挙がったエトーは、南野が印象に残す2008-09シーズンのリーガ・エスパニョーラで、実に30得点を量産。チャンピオンズリーグ決勝でもマンチェスター・ユナイテッドFCを相手に決勝ゴールを挙げるなど、リーガ・エスパニョーラ制覇とUEFAチャンピオンズリーグ、さらにコパ・デル・レイの3冠達成に貢献している。それを思えば、南野が「1ゴールで喜んでいる場合じゃない」と気を引き締めるのも当然だろう。

「点を取れたのはデカかったですけど、まだ始まったばかり。今後も点を取り続けられるように、しっかり練習から準備するのが大事だと思っています。この世界、続けることが一番大事やから」

 余談だが、この岡山戦、南野はゴールを決めた後、「特に深い意味はないです」と振り返ったゴールセレブレーションをいくつか披露していたが、本人によると「1つだけミスった」らしい。

「追加点を奪って、ガンバサポーターの皆さんの方により盛り上げてもらうような感じに流れを持っていけば勝てると思っていたんですけど、俺、なぜか喜びに行く方向を間違えて、メインスタンドの方に行ってしまったんです(笑)。メインスタンド、なんか反応悪いなと思ったら、そりゃそうか、と。そこだけミスりました。次はちゃんとガンバサポーターの皆さんと喜べるようにしたいと思います」

 その瞬間を狙うのは、迫りくる28日のパソニックスタジアム吹田での清水エスパルス戦だ。リーグ戦では未だチームが挙げられていない白星を、ゴールを、狙う準備もできている。彼らしく、太々しく、ギラギラと。

https://news.yahoo.co.jp/users/expert/takamuramisa/articles?page=1

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