新生ガンバが目指すスタイルとは?38歳のドイツ人指揮官イェンス・ヴィッシング監督招聘の舞台裏と始動直後に浮かび上がった輪郭
ボール保持からボール奪取へのスタイル転換
ボール保持からボール奪取へのスタイル転換――。クラブ史上ふたり目となるドイツ人指揮官を招いたガンバ大阪の新たな輪郭が始動初日にして、くっきりと浮かび上がった。
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イェンス・ヴィッシング監督がいかなるサッカーを目指すのかは1月7日の始動日に行なわれた初練習と、その後に行なわれたクラブの方針を明らかにするキックオフイベントにヒントがあった。
水谷尚人社長は、オファーをしたヴィッシング監督から、ガンバ大阪が目指すべき方向性を逆プレゼンされたと明かしたが、ポヤトス体制からの発展の鍵として新任の三上大勝フットボール本部本部長が語った言葉は「どこのエリアで攻守ともに支配をしていくのか、どこのエリアというところにもう一歩先があるのではないかと判断し、イェンスという新しい監督のもとでスタートをすることを決めた」と語った。
「どこのエリア」というのは言うまでもなく、より敵陣に近い位置でのボール奪取にこだわり、強度の高さと縦に速いスタイルを目指すということである。
イベント後に、水谷社長に複数の候補の中からヴィッシング監督に白羽の矢を立てた理由を聞いたが「ベンフィカのGMにも話を聞きましたけど、練習を託されていた彼は相当評価が良かった。後は他に会った欧州の監督は皆そうだったが、ACL2に対しての価値観も強かった」とACL2でも躍進を目指すガンバ大阪の方向性との合致も理由のひとつだと明かしてくれた。
好むサッカーのスタイルは――。イベントに登壇したドイツ人指揮官の答えに目指す方向性が凝縮していた。「まずはシンプルに勝つためのサッカーを好む。そのためにはフィジカル的な強度の高さも求めるし、アクティブで支配するサッカーに尽きると思っている。チーム全体で攻撃し、守ることを一丸となってやっていく。それが今言える範囲のスタイル」(ヴィッシング監督)。
選手らが語った新体制の印象
選手の立ち位置とボールの動かし方を追求したダニエル・ポヤトス監督とは異なり、連動したハイプレスと縦への速い攻めを志向するドイツ人指揮官の方向性は初日の練習から見てとれたが、狭いエリアで3対3対3のメニューもボールを奪うことと、縦に速くつけることの意識づけを意図。さらにややサイズの小さいコートで9対9のゲーム形式を行なったが、「初日からやると聞いていなかったのでビックリした」と奥抜侃志も本音を明かした。
ヴィッシング流の方向性は始動3日目となる9日の練習にも明確に表われた。
アップのランニングの際には最後尾のフィジカルコーチが最後尾を走る選手を後押しすると、隊列を縫うように先頭に走り、単なるアップにも変化を加えたが、8対8のゲーム形式はより密度と強度の高さが際立った。もちろん、初日に続いて分かれた3チームは勝ち点も計算され、勝負にこだわる姿勢も強調されていた。
GKのビルドアップはあえてDFラインの低い位置からスタートさせ、そこに対して相手チームが一斉にプレス。1分半の短時間に全てを出させる一方で「全体で連動しろ」「後ろが来ないと前が追っても意味がない」などとハイプレスへの意識と狙いを強調し続けたが、インターバルの間にもランを用いる徹底ぶりである。
ドイツ語で指揮官ともコミュニケーションを取っている宇佐美貴史は、今季のスタイルを成功させる上でのキーマンのひとりだが「どう繋ぐかというよりは、どう奪うかということを徹底してやっている感じがする」と話す。
もっとも、始動3日目で選手たちがまだ手応えを口にする段階でないのは言うまでもない。攻守にハードワーク出来る満田誠にとってはうってつけのスタイルではあるが「今日の切り取った練習だけだと強度高くやりたいというのは感じるが、ピッチがデカくなった時に90分できるかどうか」と冷静に見つめている。
指揮官自身も「90分間は無理と言っていた」と半田陸が明かしたように、ハイプレスを軸としながらも、コンパクトなミドルブロックも併用したい考えだが、注目はスタイルに合致した人材のチョイスである。
昨季終盤も、強度の高さとハードワークできる満田と美藤倫、安部柊斗が中盤の軸となっていたが、宇佐美の置き所とハイラインを保つうえで不可欠なCBコンビを誰に託すのかを沖縄キャンプで模索することになる。
2月に開幕する百年構想リーグは本来、腰を据えて試行錯誤が可能な大会ではあるがセレッソ大阪との大阪ダービーで開幕後、わずか5日後にはACL2のノックアウトステージ・ラウンド16の浦項スティーラーズとのアウェーゲームが待つ。
目先の結果と戦術の浸透の「二兎」を追う38歳の若き指揮官の手腕が、開幕から早速試されることになる。



