コンバートで才能開花「思い切りできる」 急上昇の成長曲線…黄金ルーキーが目指す“ガツン”
東京国際大1年DF松井イライジャ博登「関東でチャレンジしたい」
183cmのサイズと躍動的なスピード、そして明るいキャラクター。東京国際大学の1年生DF松井イライジャ博登は、大所帯で競争が激しいチームにおいて右サイドバックのレギュラーの座をガッチリと掴んでいる。
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日本人の父親とジャマイカ系イギリス人の母親を持つ松井は、FC.フェルボール愛知からガンバ大阪ユースに進み、CBとして守備力とフィード力、タイミングを見た攻撃参加でチームにアクセントを加えていた。トップ昇格こそ果たせなかったが、「大学サッカーなら関東でチャレンジしたいと思っていた」と、東海から関西を経て関東にやってきた。
関東大学サッカーリーグ1部・第13節の日本大学戦、右サイドバックとしてスタメン出場をした松井は、内定先の東京ヴェルディですでに活躍をしている相手FWの平尾勇人に対しても一歩も引くことなく、激しい球際のバトルを演じるなど、守備面での固さを披露。フル出場を果たし、3-0のクリーンシートに大きく貢献した。
「勝ちましたが、やっぱり平尾選手と五木田(季晋、水戸ホーリーホック内定)選手はうまかったですし、マッチアップをして本当にしんどかったです。でも楽しかったです」
試合後、こう満面の笑みで答えた。昔から楽しそうにサッカーをする選手で、コメントも素直で面白い。大学生になっても、「イライジャ節」は変わらない。その中でCBからサイドバックへのコンバートは大きな変化であった。
「ガンバの時からも右サイドバックはやったことがあったのですが、本当にたまにでした。なので、入学すぐにコンバートされた時はCBの方が慣れていたので、『難しそうだな』と思っていました。でも、結局どこのポジションでもサッカーはサッカーなんで。やることは一緒なので、楽しみながらやっています」
その中でサイドバックを半年続けてみると、徐々に自分の適正ポジションだと思うようになったという。
「やって行くうちにCBよりもサイドバックの方が持ち味を発揮できている印象になりました。もともと攻撃参加をすることは好きなので、CBよりそれが思い切りできるのは魅力。それに今のCBは185cm以上ないときついと思うので、僕のサイズ的な部分を考えても、サイドバックで勝負していきたいなと思っています」
もちろんまだまだサイドバック歴が浅いため、経験を積んでいかないといけないし、もともとあった課題からも目を背けてはいけない現状も理解している。 「僕は1対1の部分はユースの頃から課題で、サイドバックになったら、むしろ1対1の場面が増えるので、より対人能力の高さが求められます。攻撃でごまかすことなく、きちんとそこに目を向けて取り組んでいます。理想は出足鋭いインターセプトや追い込んで奪うなど、自分が狙った守備ができるサイドバックになること。よく海外の映像を見るのですが、向こうは日本と違って、1対1の局面などでも『待ちの姿勢』よりも、自分がボールを奪いに行くじゃないですか。僕はそういうガツンと相手に行く守備をして、ボールを奪い取りたいんです」
ユース時代はオランダ代表DFファン・ダイクなどを参考にしていた。だが、今はポルトガル代表の左サイドバックであるヌーノ・メンデス(パリ・サンジェルマン)などを参考にしているという。
メンデスは利き足こそ松井と逆の左足だが、サイズは3cm低い180cm。CBもハイレベルで出来る能力を持ちながら、左サイドバックとして攻守においてずば抜けた存在感を放っている。理想像はメンデスのように守備でボールを刈り取れて、並居る世界トップのウインガーを封じながら、攻撃でもチャンスメークと仕留める力を持ったサイドバックとなること。松井のポテンシャルであれば、その道が大きく切り開かれることだって十分にある。
「1対1の勝利、クロスのブロック、裏のカバー、オーバーラップからのクロス、ビルドアップ、シュート…。もう全部やりたいです。関東1部を戦って感じるのは、やはりスピード感と強度の部分。かなりのスピード感の中で的確な判断やプレーをしないといけないし、ワンタッチプレーなどもやらないと対応できない。そういう面では本当にこの大学を選んでよかったと思っています」
真剣に、貪欲に、かつ楽しく。松井はスポンジのような吸収力を持って、元気で溌剌としたプレーを見せながら成長曲線を描いて行く。
[著者プロフィール]
安藤隆人(あんどう・たかひと)/岐阜県出身。大学卒業後、5年半の銀行員生活を経て、フリーサッカージャーナリストに。育成年代を大学1年から全国各地に足を伸ばして取材活動をスタートし、これまで本田圭佑、岡崎慎司、香川真司、南野拓実、中村敬斗など、往年の日本代表の中心メンバーを中学、高校時代から密着取材。著書は『走り続ける才能達 彼らと僕のサッカー人生』(実業之日本社)、早川史哉の半生を描いた『そして歩き出す サッカーと白血病と僕の日常』、カタールW杯のドキュメンタリー『ドーハの歓喜』(共に徳間書店)、など15作を数える。名城大学体育会蹴球部フットボールダイレクターも兼任。



