練習参加も届かなかった古巣復帰「原動力に」 J2内定のレフティーが描く次なる夢「ここでやりたい」
関西大4年MF三木仁太「ずっと1回戦で負けていた」
9月3日に開幕し、東洋大学の優勝で幕を閉じた、大学サッカーの夏の全国大会である第49回総理大臣杯全日本大学サッカートーナメント。
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全国各地域の激戦を勝ち抜いてきた32大学が、1回戦から3回戦までシードなしの中1日の一発勝負という過酷なスケジュールの中で、東北の地を熱くする激しい戦いを演じた。ここでは王者にたどり着けなかった敗れし者たちのコラムを展開していく。
第12回は初戦で北海道教育大岩見沢校を4-0、2回戦で桐蔭横浜大を4-1、3回戦では前回準優勝の新潟医療福祉大を相手に延長戦の末に3-2で下してベスト4に進出した関西大学（関西大学サッカーリーグ1部）の大黒柱・4年生MF三木仁太について。ボランチとしてパスとテクニックを融合させたアタッキングサッカーの中枢を担うレフティーの三木は、来季からJ2・藤枝MYFC入りが内定している。 「1年の頃から総理大臣杯に出ている（4年連続の出場）のですが、ずっと1回戦で負けてきていて、そういう意味ではまずは初戦を突破できて一安心はあります」
1アシストをマークした初戦の後、安堵の表情を浮かべた。今年は最高学年を迎え、J内定という看板を背負っての4度目の挑戦だっただけに、初戦突破は最低目標だった。
ここから背番号7は東北の地で躍動をし続けた。勢いに乗った三木は2回戦の桐蔭横浜大戦、1-1で迎えた後半21分に左CKが右サイドに流れたボールをすかさず拾うと、バックパスをすると見せかけて、並行にサポートにきたMF兎澤玲大にノールックパスを入れる。同時に一気に加速をして右ポケットに走り込むと、そこに兎澤からスルーパスが届く。左足のアウトサイドで3連続タッチをしながら持ち込んで、そのままGKとの1対1を制してニアを左足で撃ち抜いた。
そして準決勝、同じ関西の最大のライバルである関西学院大との『関関戦』では、0-1で迎えた後半43分にMF黒沢偲道のシュートに反応し、こぼれを右足で蹴り込んで、執念の同点弾をたたき込んだ。その後、ラストプレーで勝ち越しを許し、関西大の快進撃はベスト4で止まったが、チームの心臓の躍動はチームに大きな影響を及ぼした。
「関西の代表として初戦すら突破できなかったというのは、歯がゆい思いがずっとあった。でも今年は最上級生になって自覚と責任というのは、かなり出てきました」
ガンバ大阪のアカデミーで育ったレフティー
三木はジュニアからユースまでガンバ大阪のアカデミーで育ってきた。ユース時代は貴重な左利きのボランチとしてリズムメークとサポートのうまさを披露し、ベルギー1部で結果を出しているFW坂本一彩（KVCウェステルロー）やMF中村仁郎（FC岐阜）、1学年下のFW南野遥海（G大阪）らが揃う強烈なアタッカー陣を後ろから巧みにコントロール。トップ昇格ができないとなった中でも、関西大学に進んで大学経由でのトップ入りを目指していた。
「ガンバユースの時は同級生に一彩や仁郎という個性の強い選手がいたので、僕も何か色を出さなあかんと思っていました。でも、出しきれずに（トップに）上がれなかった。悔しさというのはもちろんあったのですが、大学4年間で悔しい思いを持ち続けながら、苦手な部分を克服していこうと思いました」
フィジカルも強くなり、左足から繰り出すパスの精度とゴール前へのアタックという部分では着実に成長をした。だが、大学生になってからもG大阪のトップチームの練習には何度か参加したが、正式オファーまでは至らなかった。 「戻ることを目指していたので、悔しさはあります。でも、それが逆に自分の原動力になっています」
反骨心をエネルギーにして、コツコツと努力を重ねる姿を藤枝はずっと見ていた。大迫希スカウトと須藤大輔監督から熱量ある話をもらい、早々にオファーももらったことで、彼の決意は固まった。
「藤枝のサッカーはボールを持って、着実に前進していくサッカー。自分の特徴的にもフィットすると思ったし、希さんや須藤監督と話をして物凄く波長が合って、『ここでやりたい』と思いました。僕がなりたい選手像は、常にチームに必要とされる選手。藤枝は守備でかなりの強度も求められるので、そこを磨いていきたいですし、チームのやるべきことをきちんとやりながら、自分の色を出していきたいと思います」
反骨心と藤枝に対する熱い思い。藤枝の攻守一体のサッカーの中で、守備で奪い切る力がもっと磨かれれば、そのアイデアと精度が満載の左足からより勝負を決定づけるプレーが披露できる。三木の目にはより成長する自分の姿がしっかりと映し出されている。
[著者プロフィール]
安藤隆人（あんどう・たかひと）／岐阜県出身。大学卒業後、5年半の銀行員生活を経て、フリーサッカージャーナリストに。育成年代を大学1年から全国各地に足を伸ばして取材活動をスタートし、これまで本田圭佑、岡崎慎司、香川真司、南野拓実、中村敬斗など、往年の日本代表の中心メンバーを中学、高校時代から密着取材。著書は『走り続ける才能達 彼らと僕のサッカー人生』（実業之日本社）、早川史哉の半生を描いた『そして歩き出す サッカーと白血病と僕の日常』、カタールW杯のドキュメンタリー『ドーハの歓喜』(共に徳間書店)、など15作を数える。名城大学体育会蹴球部フットボールダイレクターも兼任。
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