7月はJリーグのダービーでサポーターの問題行動が多発。選手もメッセージを投稿する異例の事態に #エキスパートトピ
Jリーグを盛り上げる要素の一つがダービーマッチで、選手はもちろんですがサポーターも「街の名前の誇り」にかけて熱く盛り上がります。しかし、7月5日には横浜F.マリノスのサポーターが横浜ダービー前の違反行為で処分。同じく5日の大阪ダービーでもガンバ大阪のサポーターが暴力行為などで処分されました。J3で初めて実現した栃木ダービーでは試合前に栃木SCのサポーターが誹謗中傷する貼り紙を出し、物議に。
栃木シティの田中パウロ淳選手は自らのXで「海外に憧れすぎ。ここ日本でここJ3な」と苦言を呈しています。
エキスパートの補足・見解
プレーのレベルも選手の育成においても世界で類を見ない異例のスピードで成長を遂げてきたJリーグですが、世界に誇るべきは女性や子供が安心してスタジアムに足を運べるという環境の良さです。
筆者がブラジルに在住した当時、数多くのダービーマッチを取材しましたが、試合当日に悩んだのはスタジアムに来ていく服の色でした。というのもスタジアムへの道中にサポーターの衝突が発生しがちで最も危険なため、どちらのサポーターでないようにアピール出来るような服をチョイスする必要があったためです。
田中パウロ淳選手が苦言を呈したように「ここは日本」という言葉に尽きるでしょう。南米ではダービーマッチを巡ってサポーターの抗争事件や時に殺人に至ることも珍しくなく、スタジアムの最寄駅は片方のサポーターのみが使用したり、アウェイのサポーターを観戦させなかったりという対応が取られることもあります。もちろん、Jリーグで問題を起こすのはごく一部のサポーターですが大きな問題が生じれば、善良なサポーターまで何らかの制限の影響を受けることにもつながります。
「世界に誇れる、安全で快適なスタジアム環境を確立していきます」というのがJリーグの理念のはずです。
下薗昌記
1971年、大阪市生まれ。大阪外国語大学(現大阪大学外国語学部)でポルトガル語を学ぶ。朝日新聞記者を経て、2002年にブラジルに移住し、永住権を取得。南米各国でワールドカップやコパ・リベルタドーレスなど700試合以上を取材。2005年からはガンバ大阪を追いつつ、ブラジルにも足を運ぶ。著書に「ジャポネス・ガランチードー日系ブラジル人、王国での闘い」(サッカー小僧新書)などがあり、「ラストピース』(KADAKAWA)は2015年のサッカー本大賞で大賞と読者賞。近著は「反骨心――ガンバ大阪の育成哲学――」(三栄書房)。過去、日本テレビでコパ・リベルタドーレスの解説やクラブW杯の取材コーディネートも。



