【番記者の視点】G大阪、アデミウソン獲得の舞台裏。移籍の理由、シティは関与した?……真相に迫る フットボールチャンネル 1月9日(土)15時40分配信

G大阪がアデミウソンを獲得した。昨季マリノスでプレーしたブラジル人FWの移籍はあまりに唐突で大きな話題を呼んだ。果たしてどのような舞台裏があったのか。移籍をスクープした番記者が真相に迫る。

ACLを見据えての極秘プロジェクト。宇佐美の去就も関係ある?

 待望の新スタジアムが稼働する2016シーズン。大阪の雄がアジア制覇に向けて、本気度を見せている。

8日、サンパウロから期限付きでアデミウソンの獲得を発表したガンバ大阪。昨季は横浜F・マリノスでプレーした元ブラジルU-21代表FWの獲得は、昨年末からG大阪が極秘で進めていたビッグプロジェクトだった。

クラブとサポーターの悲願でもある2度目のACL制覇を目指した昨季、日本勢では唯一となるベスト4進出を果たし、優勝した広州恒大とも準決勝では一定の善戦は見せた。ただ、グループリーグを戦っていた段階で、梶居強化本部長は既にこう明言していた。

「アジアで高みを目指す上で、外国人枠の充実は最低限不可欠なこと。今後は実力ある外国人選手が必要だと思っている」

グループリーグの苦戦を乗り越え、ベスト4に進んだG大阪だが、クラブにとってブラジル人アタッカーの補強は既定路線。宇佐美貴史の移籍の有無にかかわらず、ターゲットとなったのがアデミウソンだった。

「昨年、プレーしているのを見てずっといい選手だなと思っていた。Jリーグを既に一年経験しているのも大きいしね」。スカウティングを続けてきた梶居強化本部長は獲得理由をそう説明した。

名門サンパウロFCの生え抜きで、U-17W杯でも大会得点王を獲得し、2013年までリオ五輪を目指す世代別代表にも選出されていたアデミウソンは、 「新スタ元年には、チーム戦力を充実させることが出来る大物選手を獲りたい」(梶居強化本部長)というクラブの意向に合致した。

手放したマリノス。シティグループの関与は?

 もっとも、シティ・フットボール・グループの関与があってこそ横浜FMが獲得出来た俊英は当初、G大阪にとって高嶺の花のはずだった。実はACLに出場 した他国のブラジル人アタッカーもリストアップした梶居強化部長だったが、「マリノスには一年間のレンタルか、買い取りのオプションしかないという情報が 入って来た。ダメもとで挑戦してみた」と交渉の舞台裏を明かす。

1月1日でレンタル移籍が終了する横浜FMにとって残された選択肢は10億円と言われる買い取りのみだった。

11月末から、本格的に動き出した獲得プロジェクトは12月末にアデミウソンサイドと仮契約を終え、1月上旬にクラブ間での正式契約という結論を見た。もちろん、G大阪への再レンタルに関して、シティ・フットボール・グループの関与はない。

名門サンパウロが生んだ俊英は、長谷川健太監督にとっても待ち人である。

ACLの敗退後、アジア初挑戦となった指揮官が出した結論は「セレソンとは言わないまでも、その下ぐらいのレベルの選手が必要」だった。世代別代表の常連でU-21まではブラジル代表の主力だったアデミウソンの獲得を相談されたという長谷川監督も「ああいうタイプのFWが必要」と話したという。

戦術面では大きな補強。今季のキーパーソンに

 ああいうタイプ=技術のあるブラジル人。

圧倒的なフィジカルと走力を持つパトリックを軸に「戦術パトリック」を確立させてはいるG大阪だが、パトリックのフィジカルでごり押ししきれないACLやスペースを徹底的に消して来るJリーグの対戦相手にはその限界を見せていたのもまた事実。

「アデミウソンは色んな使い方が出来る」(梶居強化本部長)。

ワントップだけでなく、1.5列目もこなし周囲を活かしうるアデミウソンは、前線に新たな化学反応やバリエーションをもたらす起爆剤となるのは間違いない。

もっとも、サンパウロ時代からの悪癖であるイージーなシュートミスやメンタル面での波があるのはアデミウソンがブラジルでブレークしきれなかった要因の一つではあるが、9日に22歳を迎えたばかりのブラジル人アタッカーには大きな伸びしろが残されている。

サンパウロへのレンタル料や年俸など総額で150万ドル(約1億7550万円。レートは2016年1月8日のもの)を要したアデミウソンは名実ともに今季の補強の目玉である。そのフィットぶりが今季の大阪の明暗を分ける。

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