長谷川監督「一つになって戦った結果」 天皇杯決勝後 G大阪、浦和の監督会見 スポーツナビ 1月1日(金) 21時00分配信

第95回天皇杯全日本サッカー選手権決勝が1日、東京・味の素スタジアムで行われ、ガンバ大阪が浦和レッズを2−1で破り、大会2連覇を果たした。 G大阪は前半32分にパトリックが幸先よく先制ゴールを挙げるも、36分に興梠慎三のゴールを許して前半を1−1で折り返す。後半8点にCKから再びパト リックが決めて勝ち越しに成功。終盤には浦和の猛攻を受けるも、GK東口順昭を中心とした粘り強い守備でなんとか逃げ切った。G大阪はヤマザキナビスコ カップ、Jリーグチャンピオンシップ(CS)と2つのタイトルを懸けた決勝で敗れており、3度目の正直で今季初タイトルを獲得した。

G大阪の長谷川健太監督は「選手とスタッフが一つになって戦った結果」とチーム全体での勝利であることを強調。また、「負けたところから選手やチームとい うのは学習して成長していく」と語り、ナビスコカップ決勝で鹿島アントラーズに0−3で敗れた経験が大きかったと今季を振り返った。

一方、敗れた浦和のミハイロ・ペトロヴィッチ監督は、「敗戦についてはがっかりしている」と語ったが、「小さい一つ一つのことを積み重ねていくこと。それが来季の成功につながると思っている」と気持ちを切り替えた。

試合後、長谷川健太監督のコメント

「井手口の成長が大きなポイントになった」

長谷川 もっと素直にうれしさがこみ上げるかと思っていましたが、意外とホッとした感じの方が強いです。今季を振り返ると、ゼロック ススーパーカップでの浦和戦(2−0)からスタートして、天皇杯決勝でまた浦和と対戦しました。最初と最後のゲームで素晴らしい浦和を相手に勝って優勝で きたことについては選手に感謝したいと思いますし、G大阪を応援し続けてくれたサポーターに心から感謝したいと思います。

今日の ゲームですが、右サイドバック(SB)に何かあったらどうしようかなと。SBがいない中、左SBだったらコンちゃん(今野泰幸)がスムーズにできるだろう けれど、右SBは昨年一度やらせてあまり良いイメージがなかったので、そこをどうしようかと考えていたらそのとおりになった(苦笑)。右SBの米倉(恒 貴)がけがをしてしまって、コンちゃんが急きょ入ることになり、井手口(陽介)がボランチに入りましたけれど、コンちゃんが最後まで素晴らしいパフォーマ ンスを見せてくれて、井手口も試合の入りは良くなかったけれど、時間の経過とともにきちっと仕事をこなしてくれた。その意味では、井手口が今シーズンしっ かり成長してくれたことが、この試合の大きなポイントになったと思っています。

3−6−1という(ミハイロ・)ペトロヴィッチ監 督の十八番(おはこ)のシステムですけど、川崎フロンターレ、サガン鳥栖、サンフレッチェ広島と戦ってきたので、相手の特徴というか、どこをケアしなけれ ばならないかはある程度予想できていました。今日は柏木(陽介)がいないということで、サイドからパワーのある攻撃を仕掛けてきて、最後の時間帯でズラタ ンが途中出場してからは、危ない場面が何度もありました。そんな中でけがから戻ってきた内田(達也)がしっかりプレーをしてくれた。

この天皇杯、スタート(メンバー)もベンチも含めて、しっかりと勝利に向けて仕事をしてくれたことが、優勝という結果になったと思います。ベンチ に、本来ならば入れたかった明神(智和)を入れられなかった。明神も理解してくれたと思いますが、今日のベンチに入れなかった二川(孝広)や明神、あとリ ンスなんかもしっかりトレーニングを積んでくれた。素晴らしいチームで1年間やれて、最後の最後で天皇杯を獲ることができたので、みんなに感謝したいと思 います。

セットプレーは準備していた

柏木のいない浦和について、どういう戦い方を想定して対策したのか?

長谷川 浦和は柏木が準決 勝でけがをしたあとに青木(拓矢)を入れました。そうなるとダブルボランチ(青木と阿部勇樹)が2枚とも下がって(3バックの)両脇の選手がローテーショ ンで上がってくる。サイドからの攻撃の圧力が上がることを想定していました。こちらが1点取った後、相手のサイドから押し込んでくる選手に圧力を感じてこ ちらのラインが下がってしまったので、ハーフラインでもう少し前線の選手がプレッシャーをかけてラインを高くするように話をしました。後半は槙野(智章) があまり上がってこなかったですけれど、上がってくるとパトリックのスピードと推進力を生かしやすくなっていたと思います。

2点 目を取って勝ち越してからは(倉田)秋の守備力と(宇佐美)貴史の推進力を生かすことで、受け身になるのではなく、攻めようとしてメンバーを少し入れ替え ました。柏木がいる場合、レッズは真ん中と外を自在に使い分けてくるのですが、柏木がいないとよりサイドの圧力が高まってくると思っています。後半は那須 (大亮)が若干前めのポジションを取り、対応が難しくなった部分もありましたけれど、選手が理解して最後まで集中力を切らさずにやってくれたと思っていま す。

2点目は2人(遠藤保仁とパトリック)の意図がぴったり合ったというよりも、チームとしてしっかり準備していたのか?

長谷川  決勝ではセットプレーが重要な意味を持つということで、そこがポイントになるということは選手にも伝えました。この中2日という日程の中で、(コーチの) マルキーニョスやシジクレイが中心となって相手の攻守についてきちっと分析し、その準備を選手がしっかり理解してくれた結果が決勝点につながったと思って います。

今季はナビスコカップとCSで2位、ACL(AFCチャンピオンズリーグ)もベスト4だった。天皇杯というタイトルを獲得した意義をどう捉えているか?

長谷川  分からないです。「負けなくてよかった」というホッとした感じの方が強いですね。これで主要タイトル3つとも2位だったら立ち直れないなと(笑)。10個 シルバーを集めても金にはならないんで。金色のメダルを最後に取れたのは、選手とスタッフがひとつになって戦った結果。最後は金正也が空振りしましたけれ ど、ああいう運にも助けられた部分もあったのではないかと思います。

今日も普段スタメンではない選手をスタメンにしたり、出場機会のない選手を起用して、その選手が活躍することが多かった。どうやって選手を見極め、どんな言葉をかけて送り出しているのか?

長谷川  「スタメンでもいけるだろう」ということで、選手を信頼して送り出しています。難しい局面もありましたけれど、それなりの覚悟でベンチに入れているので、 そこは選手を信頼して使っています。内田は今日が久々のゲームでしたけれど、「1年の思いを全部出してこい」と言って送り出しました。井手口にしても長沢 (駿)にしても、今季は厳しい戦いを経験していますので、それほど心配はしていませんでした。

ゼロックススーパーカップとCS、そして今日も活躍していたパトリックの評価は?

長谷川 今日 も素晴らしいプレーをしてくれたと思っています。なかなかCSで使えず、彼もストレスが溜まっていたと思いますが、長沢がきっちり仕事をしたという結果を 踏まえて、パトリックが献身性を見せてくれるようになったのは、チームにとって特に守備面での大きな武器になりました。広島との試合でもプレスバックして 助けると。今日も守備に攻撃に大活躍してくれました。パトリックは下手ですけれど、ゆっくりとうまくなっていくし、こちらの意図をしっかり聞いて成長して くれている。そういう意味では、もう一人のエースが活躍してくれたと思っています。

スタートで宇佐美を左、真ん中に倉田を起用していたがその狙いは? また逆に使うことは考えていなかったか?

長谷川  初めから逆にしようと考えてはいなかったし、受けるつもりもなかったです。試合を通して、そうせざるをえない状況であれば、倉田をサイドに回すことも考え ましたが、初めから貴史を真ん中で使うことは考えていなかったです。貴史をサイドで使った狙いは、準決勝の広島戦や準々決勝の鳥栖戦でもサイドで非常に良 いプレーをしていたので、流れを変えたくないということであのポジションにしました。

パトリックと宇佐美が良くなってきているという実感について教えてほしい。

長谷川 悔しい思いが選手、チームを成長させているのではないかと思います。ナビスコ(決勝)で負けるという衝撃や、CSというシス テムが導入されて、浦和には勝ったけれど広島に悔しい負け方をしたと。負けたところから選手やチームというのは学習して成長していくのだと思います。(ナ ビスコ決勝で)鹿島に何もできずに0−3で敗れるという経験がなければ、ここまでチームが終盤に成長することはなかったと思います。

ご自身が良い仕事をしているという自覚は?

長谷川 どうですかね(苦笑)。そんなふうには思っていないです。

試合後、ミハイロ・ペトロヴィッチ監督のコメント

「何かが足りなかった」

ペトロヴィッチ 試合後のコメントの前にごあいさつしたい。新年おめでとう。今年の皆さんの健康と活躍を祈りたい。

今日の敗戦という結果はチームとして残念だが、試合自体は観客にとって緊迫感のある内容だった。前半、われわれの立ち上がりは良くなかった。中盤で相手に フリーでボールを持たせてしまう時間帯があった。G大阪の方が前半は決定機が多くあり、リードを許してしまったが、われわれも良くないなりに1−1で折り 返すことができた。後半に入って相手に対して主導権を握り、チャンスもわれわれの方が多く作っていた。それでもCKから先に失点してしまい、その後もチャ ンスを作っていたが同点に追いつけなかった。

敗戦についてはがっかりしているが、選手たちはカップを手にするべく最後まで全力で 戦ってくれた。今日で今シーズンが終わるが、残念ながらタイトルを手にすることはできなかった。がっかりはしているが、ポジティブな面も見ることができた し、シーズンを通して良い戦いができた。勝てなかったことに関しては、何かが足りなかったと思っているし、小さい一つ一つのことを積み重ねていくこと。そ れが来季の成功につながると思っている。

柏木不在の中、どのように攻撃を組み立てようとしたのか?

ペトロヴィッチ 私としては、敗戦後のゲームでチームのキーになる選手がいなかったことを言い訳にはしたくない。陽介は確かに素晴ら しい選手だが、阿部や青木も素晴らしい選手だ。彼らがボールを前に運んだり、縦に(パスを)入れたり、サイドを変えたりして良いプレーをしてくれた。相手 は強いガンバなので、見ている人たちが考えるほど簡単な試合ではなかった。

今日は関根(貴大)をベンチに置いたが、その狙いは?

ペトロヴィッチ  (準々決勝から決勝まで)1週間で3試合目ということで、ウチは特にサイドの選手は運動量が必要とされる。関根はここ2試合フル出場しているので、途中か ら入れたほうが、スピードや1対1でのドリブルが生きると考えた。前半は拮抗(きっこう)した展開を予想していたし、相手が疲労してからの方が彼の良さが 出ると考えた。実際、投入されてからは、サイドから効果的なプレーを見せてくれた。

パトリックの脅威は十分に認識していたと思うが、止めきれなかった原因は何だったと思うか?

ペトロヴィッチ パトリックについては槙野がよく対応してくれていた。逆に彼が槙野を上回れずに途中交代した試合もあった。今日の得 点だが、われわれが対応しきれなかったと思っているだろうが、きわどい角度からのシュートだった。もしかしたら最後のところで止められたかもしれない。 (2点目の)CKのシーンは槙野がマンマークで見ていたが、ブロックされてマークが外れたところで相手がタイミング良く入っていた。槙野が(マークを)外 してしまったが、それ以外の選手がボールに対して反応できていた。そこのところは選手一人一人が責任感をもって対応すべきだと思うが、最後まで集中して身 体を寄せるということをやらなければならない。槙野だけでなく周りの選手もそういう場面では、うまくカバーしなければならない。

これまでのガンバ戦ではパトリックと宇佐美に対してわれわれの守備のほうが良い対応ができていた。今日はパトリックにやられてしまったが、過去の試合を振り返ってみたら、彼に対して特に大きな問題を抱えてはいなかった。

 

 

Share Button