“岡山のゲームメーカー”江坂任が衝撃を受けたのは大宮時代のチームメイト「彼が勝たせていた」「難しいことも簡単にできる」

「幼少期に憧れていたのはカズさん」

攻守の重要局面となる「バイタルエリア」で輝く選手たちのサッカー観に迫る連載インタビューシリーズ「バイタルエリアの仕事人」。第49回は、ファジアーノ岡山のMF江坂任だ。

【画像】際立つデザインがずらり! Jクラブの2025年シーズン新ユニホームを特集!

前編では、岡山への移籍を決断した理由や初の海外挑戦となった韓国での成長について語ってもらった。後編となる本稿ではまず、理想の選手像や衝撃を受けた選手について訊いた。

――◆――◆――

幼少期に憧れていたのはカズ(三浦知良)さん(現:アトレチコ鈴鹿)ですね。自分は兵庫県出身で、カズさんもヴィッセル神戸でプレーされていたことがあるのでよく見ていました。だから昔は10番よりも11番をつけたいとも思っていました。海外の選手で言えば、(アンドリー・)シェフチェンコですかね。自分がフォワードをやっていたというのもあって、彼のプレーが好きでした。

プレーヤーとしての理想像はやはり、チームを勝たせられる選手です。今、名前を挙げた2人のように得点を量産できれば1番ですが、たとえゴールやアシストがなくても、試合が終わった時に「江坂がいたから勝てたよね」と言われるようになりたいです。参考にしている選手は特にいないですが、いろんな人のいいところを盗んで、吸収できればと思っています。

これまでプレーしてきて衝撃を受けたのは大宮(アルディージャ:現・RB大宮アルディージャ)時代のチームメイトでもあるアキ(家長昭博)さん(現:川崎フロンターレ)ですね。それこそ当時の大宮は、彼がチームを勝たせていたみたいなところがありました。

よくフォーカスされるキープ力はもちろん、試合全体を見ながらプレーできて、ゲームを落ち着かせられる能力、あの人がいるから勝てるという雰囲気もあって、淡々と仕事をするところが凄いです。めちゃくちゃ派手なことをするわけではないけど、難しいことも簡単にできるし、人としてもかっこいいですよね。

大宮時代には自分がアキさんをリスペクトしすぎていたのか、そこまで多くコミュニケーションを取った記憶はなくて、逆に違うチームになってからのほうが話す機会が多い気がします。蔚山(HD)にいた時にACL(アジア・チャンピオンズリーグ)で川崎と戦った時にも他愛もない会話をしましたし、また試合会場で会えたらといいなと思います。

対戦相手として印象に残っているのは、サンフレッチェ広島の塩谷(司)さんです。自分が対峙した時にとても驚いたのを覚えています。フィジカル的にもそうですし、クレバーなところを含めて1番すごいと思ったディフェンダーです。

「球際でより戦えるようになった」

類まれなサッカーセンスで見る者を魅了するファンタジスタにとってのバイタルエリアとは――。4年前の本企画のインタビューでは「自分にとっての生命線」と表現。スペースの使い方などを緻密に考え、相手と身体で勝負しないポジショニングを意識していると答えていたが、多くの経験や年齢を重ねた今はどう捉えているのか。

――◆――◆――

若い時に比べるとメンタル面に関してはすごく余裕ができました。韓国に行ったのも大きくて、あまりボールがこなかったり、良い形で受ける機会が限られるなかでも、焦れずに我慢しながら来たチャンスをものにすればいいという気持ちでいられるし、良くない時の考え方も海外に行ったことと、年齢を重ねたことによって成長できています。今まではストレスを感じることもありましたが、大人になったなと思います。

プレーについては若い頃はイケイケで、勢いでやっていたところもありましたが、よりサッカーを勉強して、いろいろと見える部分が多くなりました。昔に比べると、頭を使ってプレーしている感覚があります。でも逆に考えすぎずにいけてしまう良さもあると思うので、どちらがいいとは一概には言えないです。

だからバイタルエリアでは、もちろんいろんなことを考えながらも、今は直感的な部分であったり大胆さも大事にしています。頭で考えているだけではできないところもありますし、勢いでプレーした結果いいことが起こる場合もありますから。要はその状況で1番良い選択ができるように、それができるような準備をすることが重要です。

この前の京都(サンガF.C.)戦(2-0)の2点目のゴールで起点になったプレーは理想的で、5本ぐらいダイレクトパスが続いて、ボールが動いている間に柳(貴博)の動きも把握できていましたし、木村(太哉)に敵がつられたのも見えていました。頭で考えつつ、瞬時に判断して良いパスが出せました。相手にとっては嫌で自分たちにはチャンスになる選択ができたかなと思います。

あとは、今までならフィジカルが強い相手に対しては真っすぐぶつかっていくのではなくて、良いポジショニングやタイミングで勝負していました。今でも位置取りが一番大事なのは変わらないですが、韓国でのプレーを経験して身体的にもタフになり、球際でもより戦えるようになっています。

韓国のほうが人に対してプレスをかけてくるので、Jリーグに復帰して、多少のプレッシャーに対して速さや強さは感じなくなりました。

「同世代の活躍は刺激になる」

自身も2021年3月に初招集された森保ジャパンや、同世代の活躍には刺激受けている。そして、最後には岡山で思い描くビジョンを語ってくれた。    ――◆――◆――

今の日本代表は、めちゃくちゃ強いんじゃないですかね。僕が呼んでもらった当時もすごかったですが、今はより強度が上がっているように感じます。  代表には今でもいきたい気持ちはありますが、相当な結果を出してかなりの活躍をしないと立てない場所だと思いますし、ヨーロッパのトップでやってて、入れるレベルなので簡単ではありません。

でも、あのインテンシティは参考になるし、あのレベルでやらないと成長できないです。世界で活躍している選手たちが、あれだけ切り替え早くプレーしているのに、僕たちがやらないわけにはいかないですね。

同世代の活躍ももちろん刺激にもなっています。僕は韓国にいましたけど、昨季は神戸の武藤嘉紀選手がJリーグでMVPを獲ったり、ガンバ大阪の宇佐美貴史選手もチームを牽引しています。彼らはまだまだ年齢を重ねても、進化していけると証明してくれている選手たちだと思います。

今季の目標は岡山が1試合でも多く勝って、1つでも上の順位にいけるように自分の力を使うことです。個人的に目標の数字は設けていないですが、昨年のチームで少なかったゴール数を増やしたいです。そして、岡山をJ1に定着させて、ゆくゆくは上位を争えるチームにしたいと思います。

https://www.soccerdigestweb.com/

Share Button