「やっとスタートラインに立てた」――ガンバ大阪が新しいビジネスを創造し続ける理由

「ガンバが好き」で繋がり、継続的な関係に

変化するスポーツの役割

――GBSでディスカッションされた新規ビジネスの具体案を教えてもらえませんか?

「色々ありますが……例えば、システムを導入し駐車料金を変動させることで万博公園周辺の駐車場利用時間を分散し、渋滞を軽減する仕組みがアイデアとしてありましたクラブとして『アクセス改善』は課題として認識していることもあり、興味深いアイデアでした」

――ガンバと共創事業者とWIN=WINの関係ですね。

「仮に本当に導入したとして、各所の滞在時間が減ることで飲食やグッズの売上が減る可能性など、解決しなければいけないハードルは色々あると思いますが、新しい課題解決の方法があることを知ること自体が大切だと思っています。GBSを開催しなければ、そのような発想すら生まれなかったので、色んな課題の解決の糸口を知れるだけでも(GBS開催の)意義がありました」

――同様の気付きはクラブだけではなく、GBSに参加された方々にもあったでしょうね。正にクラブがハブの役割を果たしている。

.「それは今回GBSを開催してあらためて実感したことです。Jリーククラブはここまで広い業界のステークホルダーを繋げることができるのだなと。しかも、利害関係なく、強い仲間意識で地域を良くしていこうと連携できる。今は人間関係が希薄化している中で『好き』という気持ちで集まったコミュニティであれば多少苦しいことも乗り越えることができると思います」

――私も1人のサッカーファンとしてコロナ禍を経てリモートコミュニケーションが増えた中で、Jクラブが持つオフラインコミュニティを形成する力の価値は高まっていると感じます。

「私はスポーツに求められるもの、社会に対する役割は時代によって変化すると考えています。昔であれば、王(貞治)・長嶋(茂雄)のようなスター選手が活躍する姿をTVで伝えることが成長期の日本社会を活気づけた。それが当時のスポーツの役割。今は変化して、Jクラブであれば公共性の高い存在として自治体、企業、ファン・サポーター……様々な強みを持った方との共創施策の中心として活動することが求められていると感じますね」

実力も人気も圧倒的なクラブに

――今回のインタビューでキーワードとなっている「繋ぐ」を切り口にに質問します。竹井さんが部長を務める経営企画部は組織図などを見ると、クラブ内における《競技側》と《事業側》を繋ぐ部署という印象を持っているのですが、その認識は正しいでしょうか?

「私の認識では繋ぐというよりも『同じ方向を向く』といった方が近いかもしれません。同じクラブでも強化、試合運営、広報、チケット販売促進……それぞれの部署で役割は違いますが、目指すところは一緒。それが言語化されたのが(2021年に発表された)クラブコンセプトですし、よく言われる『競技側はお金を使う、事業側はお金を稼ぐ』のような認識を埋めることも役割ですね」

――《競技側》と《事業側》という分け方自体がナンセンスなのかもしれませんね。経営企画部として2025シーズンに注力することは何でしょうか?

「それはもう明確に来年のシーズン移行にむけた準備です。シーズン開催時期が欧州やアジアの各国と合うことで選手の移籍が活性化することはもちろん、海外からのスポンサー獲得など、活動がよりグローバル化されます。もうドメスティックな視野やスピードでは成長できない時代で、ガンバがアジアでも突出したクラブになるためにやるべきことは多いですね」

――ガンバだけではなく、各Jクラブが「売上100億円クラブ」を中期目標に掲げますが、シーズン移行はそのターニングポイントになるかもしれません。

「(同じパナソニックスポーツグループである男子バレーボールチームの)大阪ブルテオンがフィリピンとタイで国際親善試合を開催して多くの観客を集めましたが、ガンバも参考にできる取組みです。東南アジアは人口も多いですし、活動する場所としてのポテンシャルは高い。チームがACLやクラブワールドカップに出場して国際的なクラブの知名度を高めることは事業的にも重要です」

――競技面は昨シーズンリーグ4位、天皇杯準優勝で上昇傾向。事業面ではGBSなどで新しい施策が生まれつつあり、年間パスやユニフォームの売上も増えていると聞いています。クラブ経営における両輪の回転数が上がってきていますね。

「ガンバは2008年のACL優勝や、2014年の三冠などチーム(競技面)がクラブを牽引してきた歴史があると思います。ただ、チームが好調だった時期も(当時試合会場として使用していた)万博記念競技場が満席になる試合ばかりではなかった。近年は逆にチームが苦しい時期が続きましたけど、事業面ではコロナ禍のリカバリーも短期間で成功しましたし、スタッフが誠実にファン・サポーター、スポンサー、地域の皆様と向き合って施策を積みかねたことで地力がついた。だから、『チームの成績が良いから売上も上がった』とよく言われますけど、『いや、それだけじゃないぞ』という思いは正直あります」

――竹井さん個人としては、2016年11月からガンバ大阪に在籍されて今年で9年目です。シーズン移行が予定されている来シーズンは節目の10年目です。最後に今後のビジョンを教えてください。

「昨年はリーグ戦ホームゲーム入場者数が過去最多(495,832人)を記録し、天皇杯は決勝まで進出しましたけど、感じたのは『やっとスタートラインに立てた』ということでした。私がガンバでやりたいのはその先。優勝争いが目標ではない。毎年ACLに出場して、タイトル争いをして、実力も人気も圧倒的なクラブにしたい。一流クラブを超一流クラブにする仕事の一員になるためにガンバに来たと思っているので。そういうポテンシャルのあるクラブで自分のキャリアを試せるのは幸せなこと。そのためにもシーズン移行後はグローバル化により挑戦しなきゃいけないですし、次の成長を生み出すためにGBSを通じて新しいビジネスも創造していきたいですね」

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https://www.footballista.jp/

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