ガンバが次の領域に到達するために。ポイントは「前線からのハイプレス」と「後ろからの優位性」。名和田ら若手の突き上げも重要だ
坂本、ダワンのマイナス面をいかに補うか
ダニエル・ポヤトス監督体制2年目の2024年はJ1で4位、天皇杯準優勝と大きな飛躍を遂げたガンバ大阪。
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しかしながら、その原動力になった21歳の若きFW坂本一彩(現・ウェステルロー)とアグレッシブなブラジル人ボランチのダワンが昨季限りでチームを離れた。そのマイナス面をいかにして補うのか。それが今季最初の大きなテーマと言っていい。
1月28日の浦和レッズとの練習試合(45分×3本)を見る限りだと、ダワンのところにはネタ・ラヴィが入ってそつなくプレー。途中から大卒2年目の美藤倫、36歳のベテラン倉田秋らが良いアピールを見せた。彼らの一挙手一投足を見ていると、ボランチに関してはある程度、回りそうだ。
その一方で、FWはやはり昨季12ゴールの宇佐美貴史への依存度がまだまだ高そうだ。坂本の代役候補としては、イッサム・ジェバリ、栃木SCからレンタルバックした20歳の南野遥海らがいるが、未知数と言わざるを得ない。一部ではトルコ人FWデニズ・ヒュメットの獲得報道も流れているが、仮に本決まりになったとしても、2月14日の開幕・セレッソ大阪戦には間に合わないだろう。
新加入の奥抜侃志は「僕自身ももっとゴールに関わっていきたいですし、そこでチームの助けになれたら、すごく良い循環で回ると思う。全員が取れるチームになっていきたい」と強調していたが、多彩なアタッカー陣が得点源になるようなバリエーションが作れれば理想的だ。
そこで、1つ重要になるのが、前線からのハイプレスだ。ポヤトス監督の思惑を倉田が代弁してくれた。
「始動直後のミーティングで、ダニが昨年のデータを使って説明したんですけど、昨季は自陣でボールを奪った回数は多かった反面、相手陣内で奪う回数はリーグでも下の方だった。今季は相手陣内でボールを奪う回数をより多くしていく必要があると強調していました。そうすれば、自ずと得点シーンやゴールに迫る回数は増えていく。今はそこを特に意識して取り組んでいます」
浦和戦の1本目を見ても、宇佐美や奥抜らが高い位置からプレスをかけ、それがうまくハマってビッグチャンスになったシーンが確かにあった。それを公式戦で具現化し、回数を増やしていけば、これまで以上に敵に脅威を与えられるはずだ。
「1本目はある程度、守備がうまく行きましたけど、2本目は停滞してしまった。あと少しの部分を改善できればもっと良いチームになれるし、いろんな選手が点を取れるチームになる。そこの強度や精度を上げていきたいと思います」と、奥抜も開幕までの2週間で細かい部分を詰めていく構え。それはチーム全員の共通認識ではないか。
「ハイプレッシャーで相手陣内でボールを取ってカウンターをしようとすると、多少は失点が増えるかもしれない。でも優勝を目ざそうと思うなら、やっぱりそれは必須。神戸、広島を見ていても、多少リスクを負ってインテンシティを高くやっている。そこは僕らもアップデートしないといけない点ですね」と、中谷進之介も沖縄キャンプ中に発言。今季のG大阪は強度や運動量をより強く押し出していくことになりそうだ。
過去2年間のベースを活かし、戦術の幅を広げていきたい
もう1つのポイントは、後ろからの優位性を作ること。それは30日の練習でも取り組んでいた点だ。この日は途中から攻撃陣とボランチ&DF陣の2グループに分かれる形になり、ポヤトス監督はボランチ&DF陣に対して自ら指導。パスのつなぎ、立ち位置、それぞれの関係性などを身振り手振りで熱っぽく語りかけていたのだ。
「ダニからは『後ろから優位性を持ってボールを運んでくれ』というのは口酸っぱく言われています」と中谷も語っている。最後尾からミスのない組み立てができるようになれば、敵をグッと押し込むことができるし、チーム全体に余裕が生まれる。個々のストロングも発揮しやすくなる。
もう一段階上の領域に到達すべく、彼らは過去2年間のベースを活かしながら、チームとしての幅を広げていく必要があるのだ。
そのうえで、レンタルバックした南野や唐山翔自、神村学園高から加入したスーパールーキーの名和田我空ら若い世代がブレイクし、下からの突き上げを見せることが肝要だ。今年33歳になる宇佐美を彼らが脅かすようになれば、チームに新たな活力が生まれるのは間違いない。
スペインのエスパニョールやアトレティコ・マドリー、レアル・マドリーで長く育成年代に携わってきた指揮官は、20歳前後の世代を伸ばす手腕に長けている。その能力と経験値を遺憾なく発揮することで、2025年のG大阪には新たな風が吹くだろう。そうなることを祈りつつ、大阪ダービーの開幕戦を楽しみに待ちたいものである。