東京都2部の『スペリオ城北』を複数選手オーナー制に。大津祐樹らが手がける新たなクラブ運営の全貌

北区・板橋区・豊島区・荒川区・足立区がホームタウン

2025年から関東サッカーリーグ2部に参戦するEDO ALL UNITEDを発起人となって立ち上げた本田圭佑、オーナーを務めるドイツ6部のバサラ・マインツで監督業に乗り出した岡崎慎司など、昨今は元日本代表クラスのビッグネームが自らクラブ運営を手がける例が目立つ。

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しかしながら、「複数の現役・OB選手がオーナーとなって多彩な角度から成長を目ざすクラブ」というのは存在していなかった。その領域に今回、足を踏み入れようとしているのが、2023年限りで現役引退し、現在は実業家として様々なビジネスを展開する大津祐樹である。

彼は宇佐美貴史、中谷進之介(ともにG大阪)、水沼宏太(ニューカッスル・ジェッツ)、中山雄太(町田)、山中亮輔(名古屋)、朴一圭(横浜)とともに、東京都社会人サッカーリーグ2部(8部相当)のスペリオ城北の経営に参画。2025年シーズンは大津が監督、彼の会社(株)ASSISTのスタッフである元Jリーガーの木暮郁哉がコーチに就任し、現場を率いていくことになったという。

「僕自身が東京都北区にある成立学園高校出身。城北エリアには強い思い入れがあります。高校時代に素晴らしい時間を過ごせたからこそ、プロになれましたし、今もサッカーに携わり続けていられる。プロの世界で16年間プレーする事ができた。スタッフの木暮も北区出身のJリーガーで『城北エリアに貢献したい』という夢をよく2人で語り合っていました。

そんな時、スペリオ城北に経営参加するという話が持ち上がりました。このクラブは北区・板橋区・豊島区・荒川区・足立区をホームタウンとし、発足から20年を迎えたクラブ。昨年、宮坂一朗オーナーと会う機会があり、『選手が作るクラブ』の意義と可能性を伝えると、快く共同運営に合意してくれました。

僕はいろんな選手が自身の経験を持ち込んでベストな形のクラブを構築していくのが理想。前々からやりたかったこと。それを実際にスタートさせられる環境ができて、心から感謝しています」と大津はしみじみと語る。

確かに選手個々の経験値が還元されれば、クラブの成長スピードはグッと上がるはずだ。

高度な知見を基に的確なアドバイス

大津であれば、柏レイソルを皮切りに、国内は横浜F・マリノス、ジュビロ磐田の3クラブを経験。海外もボルシアMGのようなビッグクラブから、VVVフェンロのような小規模クラブまで幅広く渡り歩いている。

宇佐美の場合だと、国内はG大阪だけだが、ドイツでは世界最高峰のバイエルン・ミュンヘンから小都市にあるホッフェンハイム、1部と2部を行き来するアウクスブルク、デュッセルドルフと環境の違いを経験している。

このうち、ホッフェンハイムは、欧州最大級のソフトウェア会社・SAPの創設者であるディートマー・ホップの資金力で成長したクラブ。そういった事例を内部から見てきた選手が高度な知見を基に的確なアドバイスをできるのは、スペリオ城北にとってプラス以外の何物でもないと言っていい。

「選手たちは国内外の様々なクラブでプレーしてきた。今年から水沼はAリーグに行きましたし、木暮もシンガポールやカンボジアでプレーしています。僕らは現場のみならず、運営やビジネス面についても見てきたという強みがある。それをスペリオ城北に還元していけば、他にはない強固な組織ができると考えています。

加えて言うと、多くの選手が出資することで資金的なボリュームも確実にアップする。最初の出資は名前を挙げた6人だけですけど、これからどんどん参加者も増えていく予定。規模の拡大が見込めます。

現場に関しても、すでにオフシーズンの12月に宇佐美や中谷らが続々と練習に来て、指導してくれました。選手の中には将来的に指導者を目ざしている人間も数多くいますけど、サッカー教室で子どもたちを教える機会はあっても、大人を指導するチャンスはそうそうない。そういう意味でもすごく良い経験になるんです。

シーズン中はなかなか難しいですが、今後も彼らには実際に教えてもらう場面を作りたいと思っています」と大津は前向きなビジョンを描いている。

さしあたって2025年は、昨季7位という反省を踏まえ、選手を25人から40人へと増強。3月末に開幕する東京都2部に挑んでいく。大津と木暮でタッグを組み、それぞれ役割を分けてチームをマネジメントしていくという。

「一つひとつ前進していくつもりです」

東京都2部は全42チームが3ブロックに分かれて、各1位のみが1部に昇格できる。その上には関東リーグ2部、同1部、JFLがあり、J3に上がるためには5カテゴリーを駆け抜けなければならない。すでに関東1部にいる南葛SCもJFL昇格が叶わず、3シーズン足踏みを強いられているほどだ。

それでも、大津は「将来的にはJ1で優勝できるくらいのビッグクラブを作るというのを目標に掲げています」と断言。地域密着も推し進めて、町おこしもしながらステップアップを追い求めていくという。

「『スペリオ城北に関わって良かった』と思えるチームにしたいというのが僕の理想。週末には試合を楽しみにしてもらい、生きる活力になるような環境を作りたいんです。

僕はプロ選手を引退してからサッカーの価値、スポーツの価値を再認識することがすごく多かった。それをより引き上げたいというのは、出資する全選手の共通認識なんです。

そのチャレンジをあえて東京でやることに意味がある。東京にはFC東京、東京ヴェルディ、町田ゼルビアという3つのJ1クラブがありますし、JFLにも東京武蔵野ユナイテッドやクリアソン新宿が参戦している。その下のカテゴリーには南葛のようなチームもあります。

それでも僕は城北エリアにポテンシャルがすごくあると感じている。自分が愛着を持っているこの地域で、多くの選手の経験やネットワークを活かしながら、一つひとつ前進していくつもりです」

こう力を込める大津らの挑戦がどのような展開を見せるのか。まずは今季の東京都2部の戦いとクラブの活動に注目したいところだ。

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