日本人7名を擁するSTVVはいよいよ正念場。ガンバ時代に残留争い経験の“年男”山本理仁は「落ちていったら勝てる試合も勝てなくなる」と危機感【現地発】
何度も繰り返したフレーズ「決め切りたい」
シント・トロイデン(STVV)は1月7日、ヘンクに0-4のスコアで敗れ、ベスト8でベルギーカップを去った。ヘンクに負けず劣らず、STVVも多くのスコアリングチャンスを作ったが、19歳の新鋭GKマイク・ペンダースのビッグセーブにことごとく防がれて無得点。拙攻続きの今季を象徴するようなゲームだった。
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この日、先発した日本人選手は3名。左サイドの仕掛け人、DF小川諒也はゴール前でのフィニッシャー役も担い、2度絶好機を迎えた。MF伊藤涼太郎は卓越した個人技でヘンクの巨漢アンカー、バングラを翻弄するなど調子の良さを見せつけたが、最初の失点につながるボールロストがあったのはもったいなかった。そしてMF山本理仁は前半、早い寄せでボールを回収し、STVVの2次攻撃、3次攻撃の起点になった。
0-1のビハインドで始まった後半からMF藤田譲瑠チマが投入され、山本と伊藤がより前掛かりになることでSTVVが試合を支配しかけ、小川にはビッグチャンスがあった。しかし52分、ヘンクのFWオ・ヒュンギュのドリブルシュートが決まって0-2となった時点で勝負が付いた。
小川とともにフル出場を果たした山本が、この試合を振り返る。 「前半は僕らのほうがチャンスはありましたし、後半も最初の10分は僕らのペースでした。そこで仕留め切れないのが、今の僕たち。チャンスを逃し続けているから、この順位(ベルギーリーグ16チーム中14位)にいる。決め切れないと苦しい結果になってしまう。個人的にはフィーリングは悪くなく、良かったと思います。しかし僕自身、前半にチャンスがひとつあった。そこを決め切る力を付けていきたいです」
欧州デビューイヤーとなった昨季、山本は公式戦35試合(リーグ戦28試合。プレーオフ5試合。カップ戦2試合)と多くの試合に絡んだが、出場時間は1075分(1試合あたり30分)に過ぎなかった。今季はパリ五輪出場で序盤戦を欠場し、10月から11月にかけて負傷もあったことで公式戦出場14試合(リーグ戦12試合、カップ戦2試合)と昨季よりペースが鈍いが、出場時間は933分間(1試合あたり66分)と、もう少しで昨季の出場時間を超す勢いだ。
「今年の前監督(クリスチャン・ラタンツィオ)のときは5-3-2だったので、中盤が真ん中3枚になり、必然的に出場時間が長くなりました。フェリチェ・マッズ監督(主に5-4-1)になり、試合に出られないときもありますが、昨シーズンよりは確実に出場時間が伸びている。試合に出ながらプレーの感触を掴んで修正しながらやってます」
ラタンツィオ前監督のときは、伊藤、藤田、山本の日本人トリオで中盤を司ることが多かった。今はこの3人が中盤の真ん中2枠を争う。ヘンク戦のように伊藤と山本がコンビを組むこともあれば、山本と藤田がセントラルMFを務め、伊藤が左寄りにポジションを取って攻撃にアクセントを置くプレーをすることもある。
「昨シーズンの僕は先発したときも、途中出場のときも右ウイングをやることが多かった。今は真ん中をやれて楽しい気持ちがある。“本職のポジション”で試合に出ているので、ここからもっと成長していきたいです」
「中谷選手が今年から入って、すごくチームが変わったみたいです」
今週末からリーグ戦が再開する。レギュラーシーズンの残りは10試合。STVVは差し当たり、12位よりの上の順位でリーグ戦を終え、1部残留を決め切りたいところ。さもなければ13位以下、4チームで行なわれる「プレーオフ3」で1.5枠の残留レースを競わなければならない。
これまでのキャリアで山本は、残留争いの経験はあるのだろうか? 「ガンバ大阪で経験しました。最終節で引き分けて残留を決めたんです。もし負けてたら落ちていた。ホント、ギリギリでした」
2022年11月5日、鹿島とのアウェーゲームを0-0で引き分けた後、他会場の結果を待って決めたJ1残留。このシーズン、足の骨折もあり、山本はなかなか試合に出られなかったが、それでも残留争いに巻き込まれたチームの雰囲気はよく覚えている。
「負けちゃうチームはメンタル的に沈んでいくというか、ロッカールームからそういう雰囲気が出てしまう。2024年のガンバはJ1で4位だったんです。今いる選手に『今年のガンバはどこが変わったか?』と訊くと、『新しい風が入って明るくなった』と言うんです」
24年シーズンのガンバに新しい風を吹き込んだのは、名古屋グランパスから加入した中谷進之介だった。
「中谷選手が今年から入って、すごくチームが変わったみたいです。彼は“コミュニケーション能力の塊”みたいな選手。そういう選手がガンバを盛り上げているんじゃないでしょうか。ここからシント・トロイデンも残留争いに入っていくと思いますけれど、自分たちが(メンタル的に)落ちていったら勝てる試合も勝てなくなる。変に自分たちで落としていくことなく、1試合1試合戦っていきたいと思います」
束の間のウインターブレイクをロサンゼルスで過ごし、英気を養ったという山本の新年の誓いはなんだろうか。
「STVVでコンスタントにプレーしているジョエル(藤田)がA代表に入っている。STVVでずっと出続ければ見てくれる。23歳の今年、代表に招集されたいというのはある。そのためにもここでの活躍が必須です」
ドイツ語の「licht(光)」からとった理人という名。ベルギーのオランダ語圏でもlichtは光だ。
「でも俺、ヤマって呼ばれてるんです。ベルギー人にはRihitoって呼びづらいのかな?」
――名前のように今年は光り輝くような年になると良いですね。
「そうですね。年男なんで(笑)」
12月に24歳を迎えるMFは若手から中堅へと差し掛かる。その前に「決め切る力」という課題を克服し、STVVに輝きを与える存在になってほしいと願う。