天皇杯決勝が示す「日本サッカーの大変化」(2)不都合の多かった「元旦開催」と、必要とされる「開催日の固定」、「秋冬制」移行後は
2024年の天皇杯覇者が決まった。11月23日に国立競技場で行われた決勝で、ヴィッセル神戸がガンバ大阪を1-0で破って、5大会ぶり2度目の優勝を果たしたのだ。サッカージャーナリスト後藤健生が、関西勢同士の頂上決戦で感じた、日本サッカー界の「大きな変化」とは?
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■出場せずに「帰国してしまう」選手も
ご承知のように、「元日決勝」というのはJリーグクラブにとっては不都合が多かった。
Jリーグは通常12月上旬に終了するので、各チームはすぐにシーズンオフに入る中で、天皇杯で上位に進出したチームだけが、オフ入りするのが遅れてしまい、その分、次のシーズンへの準備が遅れてしまうのだ。
また、12月には翌シーズンに向けた選手との契約更改も行われる。そのため、勝ち残ったチームは「戦力外通告」を受けた選手も一緒に戦わなければならなくなってしまう。外国籍選手の中には、天皇杯に出場せずに帰国してしまう選手もいた。
そうしたさまざまな問題があったため、Jリーグクラブ側からは元日開催に疑問を呈する声も強かったのだ。
だから、このところ日本代表の都合などの理由で元日以外の開催が続いた流れに乗って、なし崩し的に今年度も11月開催となったのではないだろうか。もはや、元日開催に戻すことは難しそうだ。
■「認知度を上げる」ために必要なこと
だが、かつてのように日程を固定しないと、なかなか天皇杯決勝に関する認知度も上がらない。
はっきり言って、サッカーファンの間でも、神戸やG大阪のサポーター以外では、この日に天皇杯決勝があることを知らなかった人もいたのではないか。
Jリーグは、2026年以降はいわゆる「秋冬制」に移行することがすでに決まっている。Jリーグは毎年8月に開幕して、降雪期の長いウィンターブレークをはさんで、5月に閉幕するという日程になる。
これによって、ヨーロッパのシーズンに合わせられ、たとえばリーグ戦終盤の優勝争いがヒートアップしている時期に代表の活動で何度もリーグ戦が中断するようなことがなくなる。
■「難しい」リーグ閉幕後の5月決勝
では、「秋春制」に移行した後、天皇杯の日程はどうすべきなのだろうか?
ヨーロッパの多くの国がそうであるように、リーグ戦が閉幕する5月に決勝を行うというのが順当なプランと言えるだろう。
だが、日本ではJリーグ以外のリーグは「春秋制」のままだ。学校のチームや企業のチームにとっては、日本の会計年度や学校の入学・卒業の時期が変わらない限り、「秋春制」に変えることは難しいはずだ。
こうした、Jリーグ以外のチームにとっては、天皇杯の日程はどうあるべきなのだろうか? 今でも、都道府県予選は年度が変わる前から行われて、2シーズンにまたがって行われている。
場合によっては、Jリーグのシーズンの折り返し、ウィンターブレーク入りの前のタイミングで天皇杯決勝を行うこともできる。つまり、「元日開催」の復活である。それなら、「元日開催」もJリーグクラブにとって受け入れられる日程となるだろう。
いずれにしても、かつてのように「固定ファン」を取り戻すためにも、天皇杯の日程を固定すべきであるのは間違いない。