【宇佐美貴史不在のガンバ大阪が天皇杯決勝で直面したもの(1)】「言い訳はしたくない」とポヤトス監督は言うも、守備の大黒柱は「貴史君がいないと点が取れない課題が出た」と指摘
2023年J1王者・ヴィッセル神戸に同じ関西のガンバ大阪が挑む構図になった第104回天皇杯決勝。最終的にタイトルをつかんだのは、試合後者の神戸だった。
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GK前川黛也が出したロングフィードを佐々木大樹が競り、中谷進之介が落としたこぼれ球を大迫勇也がフォロー。左から駆け上がってきた武藤嘉紀が鋭いクロスを入れ、福岡将太がいったんは防いだものの、宮代大聖が詰め、値千金の決勝弾をゲット。この1点が重くのしかかったガンバは、2000年の第100回大会に続いて準優勝にとどまった。
「ファンのみなさまにタイトルを届けられなかった悔しさでいっぱいです。前半はガンバの方が素晴らしく、神戸を上回ったと思います。決定機をしっかりと決めきりたかった」とダニエル・ポヤトスは悔しさを吐露したが、絶対的エースの宇佐美貴史を右ハムストリング肉離れで欠くというアクシデントに見舞われていただけに、この時間帯に先手を取っておきたかったのは確かだろう。
失点後、時間は25分以上残されていたが、ガンバはウェルトン、イッサム・ジェバリ、ファン・アラーノといった持ち駒を投入しても強固な守備ブロックをこじ開けられない。0-1のままタイムアップの笛が東京・国立競技場に鳴り響いた瞬間、「宇佐美がいたら…」と感じた人も少なくなかっただろう。
■宇佐美の欠場について「言い訳はしたくない」
「(宇佐美の欠場は)言い訳はしたくない。他の選手もそれにより、しっかりと気持ちを高めていってくれたし、感覚的に影響はなかったと思っています」
試合後の会見でポヤトス監督は前向きにコメントしたが、実際にピッチで戦っている選手たちは違う感覚を覚えたようだ。最終ラインを統率していた中谷はストレートにこう指摘していた。
「今年は本当に彼の力で上まで来ることができた。僕らも『貴史くんのために』『プレーしたくてもできない選手のために』というのを意識していたし、『本当に仲間のために』っていう言葉が今日ほど似合う試合はなかったと思います。だけど、夏以降、貴史君以外に得点を取れる人がいないっていうところはチームとして明確にあったし、改めてその課題が出たかなと感じています」
今季J1のガンバを見ると、宇佐美の12ゴールがダントツトップ。21歳の坂本一彩が8点で、外国人助っ人のウェルトン、ジェバリ、アラーノはそれぞれ4点、2点、1点にとどまった。夏の新戦力として期待された林大地も10月18日の川崎フロンターレ戦に5分間出場しただけで、ケガからの完全回復は果たせなかった。
■失点数はクリアしているものの…
失点数は2023年の61から、ここまで36試合で34まで激減しており、中谷がシーズン途中に語っていた「1試合平均1失点以下」を今のところクリアしている。この日の神戸戦を見ても、失点シーン以外はほぼ大迫や武藤にやられることはなく、リスタートの場面でも不用意にマークを外したりもしなかった。中谷のリーダーシップと守護神・一森純の存在が非常に大きいのは紛れもない事実。彼らが奮闘している分、得点力不足がより一層、鮮明になってしまうのだ。
「今日の試合は宇佐美さんがいなくて、やっぱ自分がやらないといけない、自分が点を取らないとっていう思いもありましたし、やっぱそこで決めきっていかないと頼れる選手になっていかないと思う、やっぱこういう舞台でもしっかり結果を残していける選手に今後、なっていきたいと思います」
成長株の坂本は神妙な面持ちで語っていたが、彼と宇佐美以外にもう1~2枚は明確な得点源がほしいところ。今季ガンバの総得点45というのは、下位に沈むアルビレックス新潟やジュビロ磐田と同じ水準というのは重い事実だ。そこを改善していかない限り、タイトルに手が届かない。そのあたりは来季以降の大きな課題と言っていい。
「やっぱ勝負強さっていうのは神戸の方があったと思うし、相手も前半からチャンスがない中でああいう一発で決め切った。その差はあるかなと思ってます」と大ベテランの倉田秋も話していたが、その勝負強さをどう研ぎ澄ませていくのか。ガンバは悔しい敗戦を糧にしていくべきだろう。 (取材・文/元川悦子)
(後編へつづく)