緊急提言「天皇杯決勝はリーグ終了の翌週にやるべし」(2)空席が目立った「G大阪VS山形」、大きく沸いた「浦和VS仙台」、史上最多の観客数「川崎VS柏」が示すこと
残すところ、あと1試合となった。佳境に入ったJリーグではなく、天皇杯の話である。伝統ある大会だが、今後、考えなければならない問題があるという。サッカージャーナリスト大住良之が、数々の名勝負を生んだ天皇杯決勝の「開催日」について訴える!
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■終止符が打たれた「2つの事情」
こうして、「国立競技場元日決勝」は、2013年度の第93回大会まで、実に半世紀近く、46大会にわたって続いた。終止符が打たれたのは、2つの事情が重なったためだった。
夏季オリンピック競技大会が2020年に東京で開催されることが決まり、国立競技場が完全に建て替えられることになったことが最大の「事情」だった。これによって、旧国立競技場は2014年の春までで競技会使用を終え、取り壊しが始まった。当然、2014年度の天皇杯決勝は他会場を探さなければならない。
第2の理由は、AFCアジアカップが2015年の1月9日に開幕することだった。
アジアカップは2011年カタール大会も1月7日開幕という日程だったが、このときには「元日決勝」は動かさず、鹿島アントラーズ×清水エスパルスの決勝戦にはDF伊野波雅彦(鹿島)とFW岡崎慎司(清水)がフル出場し、そのままカタールに向かっている。しかし、2015年オーストラリア大会に向けては、当時23人の日本代表中12人が所属していたJリーグの選手たちを休ませるため、12月6日(一部は8日)のリーグ最終節の翌週、12月13日に天皇杯決勝を行ったのである。
第94回大会(2014年度)の決勝戦はガンバ大阪×モンテディオ山形。G大阪にはGK東口順昭、MF遠藤保仁、MF今野泰幸という3人のアジアカップ代表選手がいた。
会場は横浜国際総合競技場。2002年ワールドカップの決勝会場である、しかし、大阪のチームとJ2チームの対戦ということもあってか、観客は4万7829人。7万人収容の日本最大のサッカー会場には空席が目立った。カードが原因だったのか、「横浜」がなじまなかったのか―。私は、「元日でなかった」ことが最大の原因と感じた。
■新国立で「初のメジャータイトル」
半世紀近くにわたる歴史で、「元日・国立」は、サッカーファンの生活に完全に刷り込まれたものになっていたのである。
以後、2020年元日に、落成したばかりの国立競技場で第99回天皇杯の決勝戦が行われるまで、会場はさまざまに変わった。第95回大会(2015年度)の決勝戦は、味の素スタジアムで開催された。翌年は、完成したばかりの吹田サッカー場だった。そして第98回、第99回の2大会は、埼玉スタジアムが決勝戦の会場となった。
それでも、開催日は原則として「元日」だった。しかし、2018年度の第98回大会は、2019年アジアカップ(UAE)がまた1月開幕となったため、Jリーグ最終節の翌週、12月9日に行われた。埼玉スタジアムでの現時点での「最後の天皇杯決勝」は、浦和レッズ×ベガルタ仙台。浦和が1-0で勝ち、スタジアムは大きく沸いた。
「新国立」に戻った第99回大会(2019年度、2020年元日)は、5万7597人の大観衆の前でヴィッセル神戸が鹿島アントラーズを2-1で下し、初のメジャータイトルを獲得した。だが、この後、世界は「新型コロナウイルス」の脅威にさらされ、日本では数か月間の「完全中断」の後で試合は再開されたものの、入場者数は制限され、声を出しての応援は禁止され、天皇杯決勝も寂しいものとなった。
■6万人の前での「2回目」が示すこと
そして1万3318人の「無口なサポーター」の前で行われた第100回大会(2020年度)、川崎フロンターレ×ガンバ大阪を最後に、「元日・国立」は大きく崩れていく。第101回大会(2021年度)は12月19日に国立で、第102回大会(2022)年度は、11月から12月にかけて行われるワールドカップのために10月16日に日産スタジアムで、そして昨年の第103回大会(2023年度)は、1月開幕のアジアカップ(カタール)を考慮して12月9日に開催された。
Jリーグ閉幕の翌週のこの日、大会史上最多の6万2837人のファンの前、国立競技場で繰り広げられた「川崎フロンターレ×柏レイソル」は、0-0のまま決着がつかず、PK戦は10人目まで回る熱戦となった。そして最後は川崎のGK鄭成龍(チョン・ソンリョン)が自ら蹴って右上隅に美しく決め、次にスポットに立った柏GK松本健太のキックを左に跳んでセーブ、川崎に2回目の優勝をもたらした。