J1に引き抜かれそうな「助っ人注目株」…J2&J3で躍動、再来日ブラジル人が“大化け”【コラム】
J1のステージでも活躍が期待できそうな助っ人タレントを厳選
J2&J3リーグの昇格争いがヒートアップしているなかで、外国人選手の活躍も目立っている。インパクトを残す助っ人たちの中でもJ1にステップアップできる、またはJ1のステージでも活躍が期待できそうなタレントを筆者の目線でピックアップした。所属チームがJ1昇格の可能性を残す選手もいるが、今回はあくまで能力とパフォーマンスを評価したものとした。(文=河治良幸)
【実際】「あと数センチで直やん」「これはいかん」 J助っ人が観客席に向けてボトルを蹴り込む衝撃シーン
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■マテウス・ジェズス(MF/V・ファーレン長崎/出身:ブラジル)
文句なしに、J2でナンバーワンのパフォーマンスを見せている外国人選手だ。2018年にガンバ大阪でJ1を経験。昨年に再来日して、長崎でプレーしているが、下平隆宏監督が就任した今シーズン、まるで別人のように得点力が覚醒した。FWとしても起用されるなかで、前半戦は中盤からで驚異的な推進力を発揮して得点に絡んでおり、今年3月にはクロスのクッションボールを豪快なオーバーヘッドで叩き込み、J2の月間ベストゴールを受賞した。指揮官の指摘によるコンディションの徹底管理とゴールに矢印を向ける意識によって“大化け”したハイスケールなタレントが、長崎の選手としてJ1で躍動する姿は見てみたい。一方で、J1クラブから熱視線が送られても不思議ではないだろう。
■エドゥアルド(MF/ジェフユナイテッド千葉/出身:ブラジル)
2022年にジュビロ磐田で“ドゥドゥ”の登録名でJリーグのキャリアをスタートさせたが、当時の伊藤彰監督にはほとんど起用されることがなかった。J2に降格して迎えた2年目は横内昭展監督の下、ボランチとサイドハーフでポリバレントな能力を発揮して、シーズン9得点4アシスト。1年でのJ1復帰の立役者の1人となった。新天地の千葉にはドゥドゥがいたため登録名はエドゥアルドになり、仲間からは“エドゥ”と呼ばれている。前半戦は怪我に苦しんだが、8月になると中盤の主力に定着して、高いボール奪取力と鋭い攻撃参加、171センチのサイズに見合わない空中戦の強さで、勝利に貢献している。非凡な個人能力もさることながら、戦術的なタスクも柔軟いこなせる選手であり、誰と組んでも試合から消えない運動量とセンスはJ1でも十分に通用するはずだ。
■ヘナン(DF/レノファ山口FC/出身:ブラジル)
7年目を迎えた山口ではすっかり重鎮になりつつあるが、守備の構築に定評のある志垣良監督の下で、対応力に磨きをかけている。人に強いだけでなく、イージーなミスが少なく、空中戦の強さは攻撃面でも発揮される。第28節のV・ファーレン長崎戦で、マテウス・ジェズスに対する危険なタックルで2試合の出場停止処分になったシーンなど、カードが増えているのは玉に瑕だが、彼を欠いたファジアーノ岡山戦(第29節)と徳島ヴォルティス戦(第30節)で、逆に存在の大きさが示される結果となった。3バックの左でも幅広く機能できるが、4バックの中央で1対1の守備を完結できる選手はJ1でも多くはない。貴重な左利きセンターバックであることもJ1クラブからの関心を高めそうだが、昇格プレーオフの手前まで躍進した志垣監督が引き続き率いる山口で、来年こそJ1昇格という想いは強いかもしれない。
■カイケ(DF/徳島ヴォルティス/出身:ブラジル)
2001年生まれで、ブラジルの名門パルメイラスで育った伸び盛りのセンターバックだ。Jリーグきってのフィジカルモンスターで、ポテンシャルの高さは明らか。驚異的な空中戦の強さを誇り、自陣でのクリア能力が高い上に、単独でボールを奪い切ることもできる。V・ファーレン長崎でなかなか芽が出ず、昨シーズンの後半戦はJ2だった大宮アルディージャに期限付き移籍したが、チームはJ3に降格。今年は徳島に活躍の場を求めた。徳島では3バックの右で、攻撃的なウイングバックのエウシーニョを攻守にサポートして、しばしば危険なカウンターを阻止している。攻撃面は持ち上がりや縦に差し込むパスなど、徳島で伸ばしている部分も大きく、まだまだ成長の余地がある。長崎からの期限付き移籍でもあるだけに、シーズン後の動向が気になるところだ。
■マルクス・ヴィニシウス(FW/FC今治/出身:ブラジル)
J3の2位で自動昇格が現実的になっている今治の絶対的なエースとして、爆発的な得点力を見せている。来日2年目だった昨シーズンは背番号10を付けて、8得点10アシスト。J3のベスト11に輝いた。卓越したテクニックに加えて、今シーズンはさらにゴール前の勝負強さを発揮しており、ここまで15得点を叩き出している。今治が順調にJ2昇格を果たせば、そのままチームの中心として攻撃を引っ張るはずだが、ポテンシャルはJ1でも通用すると見られるだけに、点を取れるFWが必要なJ1クラブが獲得に動いてもおかしくないだろう。大柄ではないが、ボディバランスが圧倒的で、屈強なセンターバックにコンタクトされてもボールを失わない。J3では1トップもこなしているが、上のカテゴリーでは2トップの一角やシャドーのポジションが、より能力を発揮しやすいかもしれない。
[著者プロフィール]
河治良幸(かわじ・よしゆき)/東京都出身。「エル・ゴラッソ」創刊に携わり、日本代表を担当。著書は「サッカーの見方が180度変わる データ進化論」(ソル・メディア)など。NHK「ミラクルボディー」の「スペイン代表 世界最強の“天才脳”」を監修。タグマのウェブマガジン「サッカーの羅針盤」を運営。国内外で取材を続けながら、プレー分析を軸にサッカーの潮流を見守る。