ルヴァンカップ決勝直前!歴代ニューヒーロー賞受賞者が決勝戦の展望や当時の裏話を語る
数々のドラマ、名場面を生んできたルヴァンカップ。32回目となる今大会の決勝はどんな戦いになるのか。今回は決勝を前に、かつて大会に情熱を注いだ3人、2000年に鹿島アントラーズで当時のヤマザキナビスコカップを制してニューヒーロー賞を受賞した鈴木隆行氏、2003年に浦和レッズで初優勝を果たし、ニューヒーロー賞を受賞した坪井慶介氏、2007年にガンバ大阪で優勝し、ニューヒーロー賞に加えて決勝でゴールを決めたことによりMVPにも輝いた安田理大氏にルヴァンカップを語ってもらった。
まず今大会の大きな変化として、32回目にして初めて、J1からJ3までの全60クラブが参加した。新たな大会方式をどう見ていたのだろうか。
安田「めっちゃいいですよ。J3の若い選手がJ1のビッグクラブ相手にゴール決めて移籍みたいな話もありますからね」
鈴木「下のカテゴリーの選手はうれしいよね。チャンスが増えるんだから。そこで活躍できれば、って絶対に思うはずだし、いい試みだと思いますね」
坪井「Jリーグとして底上げができるし、チームとしての経験値も増えるし、個人としてもミチ(安田)が言ったように個人昇格のチャンスも増えてくるというのはいいんじゃないかなって」
安田「J1のチームはややこしいですよね。下のチームとやるのは」
坪井「ややこしい。あれ何なんだろうね? ジャイアントキリングという言葉があるけど」
坪井「J1にいると『集中してないだろ』とか言われるじゃないですか。集中しているよね?」
安田「集中してます」
鈴木「(うなずく)」
鈴木「負けちゃいけないというプレッシャーがかかるから、下手なミスとかできないし、積極性が失われる」
坪井「積極性が失われる、よくない展開になる、点がなかなか入らない、今度は焦って一人でやりたがる」
鈴木「焦るから雑になる、雑になると相手に取られて急にカウンターとかある、時々入っちゃう、すげー焦る」
坪井「負のサイクル」
安田「カウンター一発とかセットプレー一発とかで入れられて、さらに焦るみたいな」
坪井「鬼の負のサイクルだね。J1のチームはそういうことがある。でもそれを含めて面白いよね」
安田「J3のチームが優勝する可能性はあるわけですから。でも僕とか現役の最後の方はJ2にもJ3にも行ったんですけど、そのときあってくれよと思います(笑)」
坪井「そうだ。古巣じゃん、両方」
安田「どっちを応援していいかわからないですけど、やっているサッカーは全く違うというか、新潟はGKからパスをつないでポゼッションしながら戦っていくスタイルで、名古屋は堅守速攻」
鈴木「名古屋は監督が長谷川健太さんなので、しっかりと守って縦に速い攻撃。つないできてゴール前にどんどん人が入ってくるようなチームに対して、ボールを取ったときに裏が空いているので、そういうチームにはカウンターが一番効きやすいので、相性としては名古屋は新潟とはいいと思うんですよ」
安田「ポゼッション自体は新潟はリーグでもだいぶ上の方なので、名古屋に対してボールを持って試合を優位に進めるのは新潟かもしれないですね。それぞれのポジションに適した選手がいて、途中から入ってくる選手もしっかり役割をこなせる選手なので」
坪井「その真逆のチーム同士でどちらがタイトルを獲るのかというところがすごく楽しみな決勝になるのかな。メンバー的には新潟の方が初めての選手が多いんじゃないかな。名古屋は決勝を経験している選手も結構いるよね」
安田「名古屋はチームとしてリーグも獲っているし、優勝経験もある。ただ、新潟の勢いはすごいですよ。Jリーグで快進撃を続けている町田にホームで5-0で勝っているし、準決勝も川崎F相手に大量得点で勝っている」
鈴木「国立競技場でお客さんがたくさん入るから、経験値がなくてもモチベーションがすごく上がる」
鈴木「雰囲気を作ってどんどんチームの選手を押すかもしれないよね。そしたら経験値がなくてもすごくいい試合、いいプレーをするかも」
大会の歴史に名を刻んだ3人。彼らがプレーした決勝の景色とは
安田「国立競技場で昼の試合でしたけど、『今日やれそうやな』という気が満々だったんですよ。よくスポーツ選手がゾーンに入るというじゃないですか。そういう感じの試合でした」
坪井「初めての決勝は2002年に鹿島アントラーズとの対戦で、浦和レッズの初タイトルが懸かっていて、監督が(ハンス)オフトで、レッズが変わっていこうという時代。サポーターも選手も初めての決勝。選手もそうだし、サポーターも初めての決勝だから国立にすごく人が来たんだけど、みんなが浮き足だっていた。そこで初タイトルが獲れなくて。そのときの鹿島って勝つ集団みたいなものが出来上がっていて」
鈴木「決勝に慣れているしね」
坪井「僕の同世代も(小笠原)満男、モト(本山雅志)、(中田)浩二、ソガ(曽ヶ端準)、みんな優勝とか慣れているメンバーで余裕なわけ。結局最後に満男の枠を外れているシュートが井原(正巳)さんに当たって枠に入ってゴールっていう」
安田「結構、不運な形で」
坪井「そう。それで幕切れで、結局勝てなかった。でもドラマがあって、次の年、2003年も決勝に行って、相手が鹿島だった。2年連続で浦和対鹿島。国立はまた真っ赤っか」
安田「でも2年目だから浮き足だってないですよね」
坪井「2年目だからすごく成長していて、みんな地に足がついてるの。いい準備をして2003年に臨んで、その試合は4-0。その2年間の思い出は、1年目に獲れなくて次の2年目で獲ったというチームの成長を感じられたいい時期だったのもあるけど、結局、福田正博さんに優勝させたかったんだよね。ずっとレッズのために一筋でやっていたんだけど、1回も優勝してない。最後のチャンスが2002年だったんだけど、選手たちはそれで優勝できなくて悔しくて、次の年に『福田さん、やったよ!』って」
安田「ドラマがありますね」
坪井「で、『福田さん、やったよ!』って思ったけど、フクさん的には『去年やれよ』っていう感じがあったみたい(笑)」
※鈴木隆行氏の決勝裏話は、Jリーグの公式YouTubeチャンネルをご覧ください!
安田「決勝でMVPとなると…」
坪井「得点を取る選手にはなってくるよね」
鈴木「基本的には攻撃の選手が獲ることが多いよね」
坪井「あとは競った試合でのGK、もしくはセットプレーでゴール」
安田「永井謙佑。リーグでも調子がいいですし、あのスピードは武器なので」
鈴木「つないでくる新潟に対してカウンターが効く可能性は高いよね。つないでいくということはみんなが相手陣地に入っていくからね。そうなると裏が空く」
安田「新潟はGKからもつなぐので、かっさらってショートカウンターとかもあると思う。逆に新潟はベテランとしてチームを引っ張っている小野裕二とか」
坪井「いいね」
安田「未だに新潟では群を抜くテクニック、フィニッシュに絡んでいける選手なので」
坪井「新潟もつなぎ倒していく可能性があるからね。そのまま勢いに乗って。俺はだから谷口(海斗)」
坪井「すごいシュートを決めるから。えぐいシュートを決める。角度のないところから急に打ったり。四中工(四日市中央工業高校)の後輩だから。ちょっとそれもある」