G大阪とACLで対戦した「中国の強豪」、理事長との「無言の車内」を救ったセリエA【大連の中国人と会話が弾んだ「意外な言語」】(1)
蹴球放浪家・後藤健生は世界を渡り歩き、さまざまな人と言葉を交わす。その国の言語を使うこともあれば、思わぬ言語が通じることもある。中国人とイタリア語で会話することも…。
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■蔚山監督の会見で使われた「2つの言語」
先日行われたAFCチャンピオンズリーグ(ACL)エリートの横浜F・マリノスと蔚山HD FCの試合後、韓国の金判坤(キム・パンゴン)監督は英語を使って会見を行いました。日本人記者の質問には英語で答え、韓国人記者の質問には韓国語で答えたのです。
ACLの記者会見は英語が媒介言語となっていて、韓国語の発言はまず英語に翻訳され、それを英語→日本語の通訳が日本語に直すのです。
しかし、こうした媒介言語を通すたびに、もとの発言の原意からは離れていってしまいます。その点、監督が英語で話してくれれば、誤解は生じません。
本当なら、韓国語→日本語の通訳が担当するのがいちばん間違いが少ないと思います(別に英語訳が必要なら、韓国語→英語の通訳が翻訳すればいいのです)。
それはともかく、日本人と韓国人が会話しようとするときには、英語を使うことが多いと思います。僕もそうします。
しかし、日本語と英語は(韓国語と英語も)文法的にも、語彙的にもまったく違う言語です。それはそうでしょう。ユーラシア大陸の東の端の2つの言語と、同大陸の西の端の言語なのですから……。
逆に日本語と韓国語は、文法も語彙もそっくりなのですから、英語より正確に楽に話すことができます(韓国語の発音は日本人にとって、ちょっと難しいですが)。ですから、韓国人には漢字を覚えてもらって、日本人はハングルを学んで、両国語を共通化していくのがいいと思うのですが……。
まあ、いずれにしても英語は世界の共通語。他に方法がない場合は、英語で話すしかありません。
■ガンバ大阪とACLで対戦した「強豪チーム」
1978年に、僕が初めて南米に行った頃は南米人はほとんど英語を話せませんでした。また、「英国嫌いのフランス人は英語を話さない」とも言われていました。
しかし、21世紀の現在、南米人でもフランス人でも英語を話す人が増えたので、英語をある程度、理解できれば世界中どこに行ってもそれほど不自由はしません。
もちろん、そうはいかない場合もあります。つまり、相手の外国人が英語をしゃべれなかったときです。
かつて、中国に大連実徳足球倶楽部という強豪チームがありました(2012年に解散)。遼寧省大連を本拠地にしたチームで、1994年に1部リーグ(甲級聯賽)で初優勝。2004年に中国スーパーリーグ(超級聯賽)が設立されたときのオリジナル・メンバーで、2005年には超級で優勝しています。
その大連実徳とガンバ大阪がACLで対戦したことがあります。その試合を取材に大連まで行って、ついでに最近完成したという大連実徳のご自慢のトレーニングセンターを見学しました。そして、その後、市内のオフィスまで移動するのに、クラブの理事長の車に乗せてもらったのです。
■英語が話せない理事長と「会話」が弾んだ!
高級車の後ろの座席に理事長と2人で座りました。ところが、この理事長は英語がしゃべれなかったので、2人とも無口なままでした。中国人となら、漢字を書いて筆談をするという裏技もありますが、車が揺れるので紙に文字を書くのは大変です。
そういえば、さっき、通訳を交えて話をしていたときに、この理事長はイタリアのクラブで半年間くらいクラブ経営について学んできたと言っていたことを思い出しました。
それなら……。「イオ・ポッソ・パルラーレ・ウンポ・イタリアーノ」(僕、イタリア語なら少し話せますが……)と言ってみたのです。
バッチリ、でした。
理事長も、僕とほとんど同じ程度のイタリア語を話せたのです。こうして、大連市内の車内でイタリア語で会話が弾んだ(?)というわけです。