U-19代表を率いる船越優蔵監督が訴えかけた“世界基準”と“大人のサッカー”「次に繋げることで選手たちも成長していけるはず」
ホスト国キルギスとは1-1ドロー
U-19日本代表にとって、先のU-20アジアカップ予選は“良薬は口に苦し”となった。
日本から遠く離れた中央アジアのキルギスで繰り広げられた激闘。本来であれば、来年5月にチリで開催されるU-20ワールドカップの1次予選にあたる今大会を難なく勝ち上がり、次に向けて準備を進めてほしいところではあった。
しかし――。各組1位と2位の上位5チームが最終予選となるアジアカップ本選に勝ち進めるレギュレーションにおいて、日本は2勝1分という想定外のドローを経て首位突破を決めた。
初戦はトルクメニスタンに2-0、続くミャンマー戦は6-0。ここまではよかった。だが最後のホスト国キルギスとの一戦では先制を許し、しぶとく追いついて1-1のドロー。試合後、喜びを爆発させるキルギスの選手たちの横で、うなだれる日本の選手たちはまるで敗者のようだった。
そんな様子を見守っていたのが、U-19日本代表を率いる船越優蔵監督だ。
現役時代は大型FWとして国見高時代から注目され、1993年のU-17ワールドカップにも中田英寿らと出場。G大阪や新潟、東京Vなどで活躍した。引退後に指導者となり、2015年からは日本サッカー協会へ。JFAアカデミー福島を経て、前回のU-20ワールドカップを目ざすチームではコーチとしてU-20アジアカップ予選、アジアカップも経験した。
今予選では大会前の会見で流暢な英語を披露し、同席していた主将のDF市原吏音(大宮)を驚かせたが、ピッチ内でも過去の体験を踏まえて選手に伝えたいことがある。
「1つ前の世代を知っている僕や高原寿康ゴールキーパーコーチは(昨年のU-20ワールドカップのGS最終戦で逆転負けした)イスラエル戦が頭に残っている。次に繋げることで選手たちも成長していけるはず」
2028年のロス五輪を目ざすチームが正式に発足するのはまだ先だが、まずは来年5月のU-20ワールドカップ出場を視野に入れるチームに対し、船越監督は今予選が始まる前から選手たちにこんな言葉を伝えていたという。
「ワールドカップを目ざして、世界基準を持ってやる」
最終的な目標はA代表のワールドカップ。U-20の頂点を決める戦いや五輪がゴールではない。もっと高い頂に上るために、このU-19世代が存在しているという意味で選手に発破をかけた。
だからこそ、個で殴り倒すような力任せのサッカーをアジアの戦いではしない。世界を見据え、シンプルかついろんな戦いができるチームにしたい。「ミドルシュートは日本の課題としてある」としつつ、指揮官はこう話した。
「セオリーというか、中央攻撃をすることが良いわけではない。相手を見て、相手が守っていないところを攻める。相手がいるんだったら、いないところから攻める。そうすれば、最短、最速のルートが空く。いわゆる大人のサッカー。何かにこだわらない。そこは我々のスタッフだけではなく、A代表のスタッフとも話しています」
その意味では、自分たちのスタンスを貫いて、今予選で苦戦した点はポジティブに捉えられる。内容としては決して褒められないが、圧倒的な得点差で勝利して課題がぼやけてしまう状況のほうが、選手の未来を考えればマイナスになるからだ。
「最低限の結果、次に繋げられたのは良かった。もちろん課題はあるので、そこにちゃんと真摯に向き合いながらやっていかないといけないけど、この経験は活きると思う。あれだけ外せば、決められなければこうなるというのは、改めて彼らも実感したと思うので」
アジア、世界を知っていることは何よりの武器。船越監督は今まで積み上げてきた知見をフルに活用し、ロス五輪世代の選手たちをさらなる高みに押し上げていくつもりだ。