天皇杯準決勝の顔ぶれは「三都物語」に。Jリーグ史上初となる決勝での関西勢対決なるか
日本最古のサッカートーナメント大会である天皇杯JFA全日本サッカー選手権大会は9月25日にベスト4が決定。過去にいずれも優勝経験を持つ横浜F.マリノスとガンバ大阪、京都サンガ、ヴィッセル神戸が勝ち上がりJリーグ発足後初となる関西勢3クラブが4強入り。
横浜F.マリノスと対戦するガンバ大阪が勝ち上がった場合は11月23日に行われる決勝で関西勢対決が実現します。天皇杯をめぐる「三都物語」はどのような結末を迎えるのでしょうか。
G大阪がベスト4一番乗り! 終盤の決勝ゴールで広島に競り勝つ◎天皇杯準々決勝
天皇杯 JFA 第104回全日本サッカー選手権大会の準々決勝1試合が9月11日に行なわれ、ガンバ大阪とサンフレッチェ広島が対戦した。広島のホーム、エディオンピースウイング広島での一戦は序盤にG大阪が先制するも、広島もすぐさま同点に。その後は一進一退の攻防が続いたが、終盤に決勝点を奪ったG大阪が競り勝ち、一番乗りでベスト4に勝ち上がった。
【天皇杯】神戸、5年ぶりベスト4 古巣復帰のMF森岡亮太が先制弾 G大阪、京都と関西3クラブ4強入り
◇天皇杯 ▽準々決勝 鹿島0―3神戸(25日・ノエビアスタジアム)
神戸が優勝した2019年以来、5大会ぶりにベスト4進出を決めた。G大阪、京都が既に準決勝進出を決めており、1993年のJリーグ発足後では初となる関西3クラブが4強入りとなった。
前半15分、ベルギー1部・シャルルロワから今年8月に完全移籍した元日本代表MF森岡亮太が先制ゴール。右サイドからDF日高のクロスに、ペナルティーエリア内でダイレクトに右足を振り抜いた。天皇杯、ACLEでベンチ入りはしたものの、出場機会がなかった森岡は、この日、古巣復帰後、初出場初先発。早速、結果を残した。
1点リードの神戸は後半38分に、MF佐々木大樹が追加点を上げ、リードを広げると、後半アディショナルタイムにはMF井手口陽介が右足を振り抜き、ダメ押しゴール。3―0で鹿島を下し、ベスト4進出を決めた。
京都が終始圧倒、千葉を一蹴し公式戦5連勝!2年ぶりのベスト4進出【天皇杯】
18日、第104回天皇杯準々決勝の京都サンガF.C.vsジェフユナイテッド千葉がフクダ電子アリーナで行われ、3-0で京都が勝利。ベスト4に駒を進めた。
J1を戦う京都は2年ぶり、J2を戦う千葉は10年ぶりのベスト4を目指した戦い。京都は降格圏に長らく位置していたが、ここ10試合で7勝2分1敗と絶好調。大きく勝ち点を積み上げて、残留争いから1つ抜け出す形に。直近のリーグ戦からは6名を変更し、絶好調のFWラファエル・エリアスやFW原大智らはベンチスタートとなった。
対する千葉は、J2で3連勝中。J1昇格プレーオフの6位まで勝ち点1に迫っている状況だった。スタメンは直近のリーグ戦から11名全員を変更して臨んだ。
カテゴリー違いの戦い。序盤から京都が押し込んでいくと、11分に先制。自陣でボールを奪うと、カウンター発動。縦パスを豊川雄太が落とすと、マルコ・トゥーリオが自陣で受けてドリブルスタート。持ち出しながらスルーパスを送ると、豊川が滑り込みながらシュートすると、GK藤田和輝より先に触ってネットを揺らした。
先制を許した千葉だったが17分、GK藤田のゴールキックが呉屋大翔につながるが、DF宮本優太がうまく対応してチャンスを作らせない。
京都がペースを握る試合となると32分にビッグチャンス。左サイドから崩すと、ムリロ・コスタがボックスない左でパスを受け、マルコ・トゥーリオとのパス交換からシュートも僅かに右に外れる。
さらに35分には敵陣でボールを奪うと、川﨑颯太のパスを受けたムリロ・コスタがボックス内でシュートも枠を外してしまう。36分にも京都がチャンス。右サイドからのクロスをつなぎ、最後は豊川が押し込むが、オフサイドで取り消しとなる。
千葉は前半アディショナルタイム、高木俊幸がカットインから左足シュートも枠の上。前半は京都が1点をリードして終えた。
千葉はハーフタイムでメンデスを下げて松田陸を投入。ただ、京都は1点リードの中で後半も立ち上がりから攻め込むことに。すると49分、川﨑のスルーパスに反応したマルコ・トゥーリオが飛び出したGKを嘲笑うかのような浮き球のシュートを決め、リードを2点に広げた。
さらに京都は51分、ムリロ・コスタがボックス手前でパスを受けると、スルーパスを受けた川﨑がボックス内でシュートも、GK藤田が足でセーブする。
余裕ができた京都。千葉はなかなか良い形が作れず、試合のペースは京都が握り続けることに。中盤でプレスが全くかからず、京都がボールを保持しながら時間を作りつつ、ゴールに迫っていく。
京都もなかなか追加点が奪えない中、徐々に千葉も形を作っていくが決定機は訪れず。すると85分、川﨑が左サイドに展開。ボックス左から三竿雄斗が浮き球のパスを入れると、走り込んだ平戸太貴がボックス左で受けて蹴り込み、3点目を奪った。
千葉はその後もボールを奪えず2時間ばかりが経過。そのまま3-0で終了し、京都がベスト4に進出した。
10人vs10人の乱戦制した横浜FMが7年ぶり天皇杯4強! “J2最後の砦”山口は快速FW奥山洋平が一時同点弾も力及ばず
[9.25 天皇杯準々決勝 横浜FM 5-1 山口 ニッパツ]
第104回天皇杯は25日、準々決勝を行い、横浜F・マリノス(J1)がJ2勢で唯一残ったレノファ山口FC(J2)を5-1で破った。前半のうちに双方が退場者を出す荒れた展開となったが、強さを見せた横浜FMが2017年大会以来7年ぶりの4強入り。10月27日の準決勝ではガンバ大阪と対戦する。
雨中のニッパツ三ツ沢球技場で行われた平日ナイトゲーム。J1横浜FMはFWアンデルソン・ロペスやFWエウベルら主力を一部先発起用したのに対し、J2山口は大幅なターンオーバーを敢行し、18歳のFW末永透瑛、23歳のGKチェ・ヒョンチャンらを先発起用した。
試合は一方的に横浜FMが攻め込む中、前半16分に先制点を奪った。右サイドを攻め上がったFW井上健太のクロスボールは相手にカットされたが、MF山根陸がMFジャン・クルードとのボランチ同士のパス交換から右足一閃。これがゴール右隅に突き刺さり、均衡が破られた。
その後も横浜FMが主導権を握ったと思われたが、前半23分に山口が同点に追いつく。DF平瀬大のロングフィードで深さを取り、MF吉岡雅和がDF渡邊泰基がもつれ合って倒れ込むと、これに乗じたFW奥山洋平が右サイドを突破。奥山はGK飯倉大樹のミスも誘ってゴール前に運び、最後は無人のゴールに流し込んだ。
そこからは試合が荒れた展開に。前半25分過ぎから山口のアフターチャージが相次ぎ、次々にイエローカードが出されると、横浜FMベンチからは松永成立GKコーチが飛び出し、「サッカーしろよ!」という怒号が飛んだ。
ところが前半36分、山口が末永の果敢な持ち運びから奥山がクロスバー直撃のミドルシュートを放つと、こぼれ球に反応したMFサーラット・ユーイェンにジャン・クルードが足裏タックル。これで一発退場の判定が下され、横浜FMが数的不利となった。もっとも山口も同41分、DF沼田圭悟が井上へのタックルで2枚目のイエローカード。両者とも10人で戦う形となった。
そうして迎えた後半6分、横浜FMが再び突き放した。相手のスローインを自陣右サイドで阻み、カウンター攻撃をスタートさせると、A・ロペスのスルーパスにエウベルが反応。そのままゴール前まで独走し、最後は冷静にGKとの1対1を制して右足で流し込んだ。
その後は山口のカウンター攻撃が続き、抜群のスピードを誇る奥山が立て続けにチャンスメイク。ところがそれらを決めきれずにいると、後半26分に横浜FMが追加点を奪う。中盤で途中出場のFWヤン・マテウスが相手をはがし、左サイドに展開すると、ここに走り込んだMF水沼宏太の折り返しからヤン・マテウスが決め、3-1とした。
さらに横浜FMは後半33分、右サイドを突破したヤン・マテウスからのプレゼントパスを水沼が冷静に押し込み、4-1。同41分にはA・ロペスが西村とのワンツーから5点目を決めた。一方の山口は終盤に元横浜FMで10番を背負ったMF山瀬功治を投入するなど反撃を試みたが、そのままタイムアップ。横浜FMが準決勝に歩みを進めた。
エキスパートの補足・見解
一発勝負の天皇杯では番狂わせが生じがちで、2022年の102回大会ではJ2リーグに在籍するヴァンフォーレ甲府がサンフレッチェ広島を下して優勝したこともありました。
今大会のベスト4進出クラブにとって難しいのは天皇杯と並行してJ1リーグやAFCチャンピオンズリーグエリートを戦う日程面の問題です。
横浜F.マリノスは天皇杯準決勝の5日前に、山東泰山(中国)とのアウェイゲームが控えます。対戦するガンバ大阪もJ1リーグで逆転優勝の可能性を残していますが、天皇杯を最優先にする可能性は高そうです。ただ、攻撃の軸の一人、ウェルトン選手が準決勝で出場停止になるのは痛手です。
京都サンガは本稿執筆時点でJ1リーグでは14位。J1残留が最優先の目標ですが、今夏に加入したラファエル・エリアス選手が絶好調で、FWトリオは今のJ1リーグでも屈指の破壊力を秘めています。
一方、最も日程的に難しいのはJ1リーグの逆転優勝も視野に入れるヴィッセル神戸でしょう。4日前にはAFCチャンピオンズリーグエリートで蔚山HD(韓国)とのアウェイゲームが控えています。
11月23日に国立競技場で行われる決勝戦に進むのは果たしてーー。