【トップ5に絞られたか。ラスト10節を巡る「J1優勝争い」展望(2)】優勝争いの鍵を握るのは、J屈指の上昇曲線を描くダークホース的チームか……神戸、鹿島、G大阪の今後
後半戦の成績だけで見ると、町田は4勝2敗3分で勝点15、広島は6勝1敗2分で勝点20となっており、このペースで行けば広島が上回る。
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ただし、シーズンには潮目というものがあり、広島も今後の流れ次第で、ペースダウンもありうるのは言うまでもない。町田も後半戦で、二巡目の相手に躓く試合が増えているとはいっても、粘り強く勝点は拾っており、新戦力のフィットやこれまで出番の少なかった選手の台頭など、何かのプラス材料で勝点1が3に、0が1になるポテンシャルは十分に備えているだろう。
残りの対戦カードを見ると、町田は9月28日に敵地で広島の直接対決、最終節には鹿島とのアウェーゲームを残しているが、下位との試合も多い。もちろん残留争いしているチームに油断は禁物だが、そういう相手から着実に勝点3を奪っていけるか。
またホーム開催と言っても、ここまで2連敗中の国立で今週末に浦和レッズ、11月9日にはFC東京との試合があり、”天空の城”の異名を持つGスタのアドバンテージがない2試合で勝利できるかどうかも、タイトルに大きく関わってくるかもしれない。
■鹿島が残す広島&町田とのゲーム
3位の神戸は高強度のベースに、必要に応じてボールを握りながら攻撃を展開するという柔軟性において、昨年よりバージョンアップしているのは確かだ。しかし、ある意味では昨年の神戸の躍進が、Jリーグのプレー強度を全体的に引き上げた面もあり、そこだけで圧倒するのが難しいという事情も、吉田孝行監督の決断に少なからず影響している。
4ー3ー3は継続しながら、試合の状況によって4ー4ー2も使いながら、ベンチパワーを含めた火力で押し切る戦いにあって、攻撃のアクセントを生み出す井出遥也、インサイドハーフからウィングにシフトして、2試合ゴール中の宮代大聖がキーマンになりそうだ。残り10試合のリーグ戦で上位対決は1つもなく、周りが潰しあっているタイミングを逃さないようにしたい。一巡目にホームで負けた京都、柏とのアウェーは要注意だ。
4位の鹿島は広島、町田とのホームゲームを残しており、もちろん、その二つで勝点3を奪うことは勝点差と残り試合数を考えても、優勝のマストと言っていい。ただ、ここまでの戦いを見ると、ホームで3-0から追い付かれた東京ヴェルディ戦をはじめ、非常にもったいない勝点の落とし方をしている。残りの試合を見ていく上でも、そこが課題になってくるが、固定的なメンバー起用の弊害として、対戦相手が鹿島の攻め手を概ね読めてしまうという側面も、乗り切れない要因だ。
■G大阪が優勝のために必要なもの
ランコ・ポポヴィッチ監督の基本方針に大きな変化はないと見られる中で、一巡目からのプラスアルファをどれだけ出していけるか。その意味でも夏に加入した田川亨介やターレス・ブレーネル、またポポヴィッチ監督いわく、ようやくコンディションが上向いてきた”ライコ”ことミロサヴリェヴィッチの奮起などに期待がかかる。攻撃の決め手という意味で本来頼りになる、ここまで7得点のチャヴリッチが、ラスト5ぐらいで戻ってきたらラストスパートのキーマンになりそうだ。
ガンバ大阪は失点数が首位の町田に次いで少ない22だが、得点数が28試合で32というデータの通り、ロースコアで粘り強く勝ち点を掴む戦いを続けてきた。しかし、ここに来てマリノス相手に4-0の大勝を飾ったかと思えば、神戸、福岡とは2-2で引き分けるなど、前半戦と様相が変わってきているのは軽視できない点だ。ただし、福岡戦はボール保持率でもチャンスの数でも大きく上回りながら、PKとCKからの失点。もったいないながらも、前向きな試合内容ではあった。
ボールを大事に動かしながら崩す、ダニエル・ポヤトス監督の基本スタイルに、中谷進之介を中心とした堅守、宇佐美貴史を起点とした速攻を織り交ぜるハイブリッドな戦いぶりは興味深いが、追う立場として、勝点3を積み重ねて行くには守備やポゼッションの安定にプラス、何か爆発的な要素は必要だろう。ここに来て、エースストライカーの片鱗を見せつつあるFW坂本一彩は言わずもがな、ポテンシャルはあるが、やや燻っているタレントの台頭があるか。
■上位チームと対戦する不気味な存在
基本的に町田、広島をはじめとしたトップ5の優勝争い。もし上位の総崩れが起きれば、マリノスの奇跡的な逆転優勝もありうる構図だが、ここでカギを握るチームがある。これら6チーム全てとの対戦を残している京都サンガだ。
いまだ残留争いの渦中にあるものの、新戦力ラファエル・エリアスの345分で6得点という爆発的な活躍もあり、後半戦は6勝1敗2分、つまり広島と同じペースで上昇曲線を描いてきている。ある種、上位より怖い京都が、優勝争いの鍵を握る存在と言えるかもしれない。