本間至恩らはどうなる…。Jリーグで苦戦する欧州出戻り選手6人。思うような結果が出ていないのは?
近年、多くの選手が海外へと活躍の場を移している。その一方で、海外から日本に戻ってくる選手も多い。今夏にも本間至恩や林大地といった選手がJリーグに戻ってきた。しかし、海外でプレーしていたからといって、全員が再びJリーグで輝けるとは当然ながら限らない。今回はJリーグで苦戦する欧州出戻り選手を6人紹介する。(成績は「transfermarkt」参照)
MF:柴崎岳(しばさき・がく)
生年月日:1992年5月28日
前所属クラブ:レガネス(スペイン)
現所属クラブ:鹿島アントラーズ
今季リーグ成績:7試合0ゴール0アシスト
「青森山田高校史上最高傑作」との呼び声高い柴崎岳は、今季ほとんど試合に出られていない。
高校1年次から背番号10を背負って活躍し、2011年に鳴り物入りでプロの世界に飛び込んだ柴崎は、すぐに頭角を現し、2012年にナビスコカップ(現YBCルヴァンカップ)のMVP、Jリーグのベストヤングプレーヤー賞を受賞した。その後も、2015年にシーズン2桁アシストを記録するなど、チームの中心選手として活躍。2016年に行われたクラブワールドカップの決勝、レアル・マドリード戦では、2得点を挙げ実力を世界に証明して見せた。
この魔法の右足は、海を越えてもなお輝き続ける。2017年冬にスペイン2部テネリフェへの移籍が決まると、同年夏には同1部のヘタフェに加入し、17/18シーズン第4節のバルセロナ戦ではゴールも記録した。しかし、ここがキャリアのピークだった。同じ試合で左足中足骨を骨折すると、復帰後は出場機会が激減。2019年からはスペイン2部でプレーする日々が続いていた。
そんな中、昨年夏に柴崎は古巣・鹿島へと復帰した。7シーズンぶりの10番の帰還にファンも喜んだが、10月に左ハムストリングを負傷しシーズンを終える。今季もシーズン前の怪我で出遅れ、戦線に復帰したのは5月末に。ここまでリーグ戦の合計プレータイムは200分未満となっている。鹿島は今夏に佐野海舟が海外移籍でクラブを離れた為、ボランチの枠が1つ空く状態になる。柴崎はそのポジションのレギュラーを奪取し、出場機会を増加させることが出来るだろうか。
MF:食野亮太郎(めしの・りょうたろう)
生年月日:1998年6月18日
前所属クラブ:マンチェスター・シティ(イングランド)
現所属クラブ:ガンバ大阪
今季リーグ戦成績:7試合0ゴール0アシスト
ガンバ大阪の下部組織出身の食野亮太郎は、ユース時代に高円宮杯U-18サッカーリーグでチームを優勝に導き、2017年シーズンからトップチームに昇格した。
トップチーム昇格後の2シーズンはU-23チームの一員としてJ3でプレーする機会が多かったものの、安定した活躍を披露。プロ3年目となる2019年からはJ1での出場機会が増加し、J1初ゴールを含むリーグ戦12試合3ゴールをマークしている。重心の低いドリブルはJ1の舞台でも強烈なインパクトを残し、ファンからは「浪速のメッシ」の愛称で親しまれた。
すると同年8月、食野は今や世界屈指の強豪となったマンチェスター・シティに完全移籍を果たす。しかし、これがキャリアの歯車を狂わせた。いわゆる同クラブの“青田買い戦略”の対象としてスポットライトを当てられた格好で、世界的なスターが集うシティに居場所があるわけはなく、加入後はレンタル地獄の日々だった。
最初のレンタル先だったスコットランドのハーツでは、出場したリーグ戦で19試合3ゴール1アシストと満足できない結果に終わる。翌シーズンに移籍したリオ・アヴェ、そして21/22シーズンを過ごしたエストリル(いずれもポルトガル)でも目立った活躍を見せられず、2022年夏に古巣・G大阪に戻ることを決断している。
G大阪復帰後も、かつてのような圧巻のプレーは見せられていない。年々出場機会が減少し、今季はここまでリーグ戦7試合のみの出場に留まっている。まだ26歳とこれからの選手だが、復活はあるのだろうか。
MF:鈴木冬一(すずき・といち)
生年月日:2000年5月30日
前所属クラブ:ローザンヌ(スイス)
現所属クラブ:京都サンガF.C.
今季リーグ戦成績:12試合0ゴール0アシスト
鈴木冬一はセレッソ大阪の下部組織在籍時から、各世代別代表に招集されるほどの逸材だった。高校2年次にはセレッソのトップチームに2種登録され、U-23チームの一員としてJリーグ初出場を果たしている。
2019年に加入した湘南ベルマーレでは、左WBを主戦場に初年度からリーグ戦22試合に出場。利き足ではない右足も器用に使い、右WBでも多くの試合に出場した。
その両足の精度を活かした攻撃参加や、様々なポジションをこなせる高い戦術理解度が高く評価されてか、2021年冬に、20歳の若さでスイスのローザンヌへと移籍することとなった。加入後はWBに加え守備的MF、攻撃的MFとしてもプレー。22/23シーズンにはリーグ戦30試合4ゴール3アシストの成績をマークし、欧州の地でも自身の持ち味を存分に披露していた。
そんな中、今年の冬に鈴木はJリーグへと帰ってきた。選んだのは湘南時代の恩師である曺貴裁が監督を務める京都サンガF.C.。しかし、さっそく欧州で培った実力を発揮したかった同選手だったが、ここまでリーグ戦わずか12試合のみの出場に留まっている。これまで主に3バックの布陣で起用されてきた中で、4バックを敷く京都のシステムが合っていないことが要因に考えられる。実際、出場した12試合のうちスタメン出場はわずか3試合と、鈴木は実力をほとんど見せられていない。今季絶不調に陥っている京都でも出番がない現状に、鈴木本人も思うところはあるだろう。
MF:安部裕葵(あべ・ひろき)
生年月日:1999年1月28日
前所属クラブ:バルセロナB(スペイン)
現所属クラブ:浦和レッズ
今季リーグ戦成績:出場なし
瀬戸内高校から鹿島アントラーズに加入した安部裕葵は、ルーキーイヤーにリーグ戦13試合出場を記録すると、翌シーズンはベストヤングプレーヤー賞を受賞。プロ3年目となる2019年にはジーコら鹿島の名だたる名選手が継承してきた背番号10を背負った。
さらに同年には東京五輪世代を中心に構成されたコパ・アメリカの日本代表メンバーにも招集され、デビューを果たす。そして大会終了後にバルセロナBに完全移籍を果たすなど、誰もが名手への階段を駆け上がっていると信じて疑わなかった。
しかし、度重なる怪我によって、彼のキャリアは転落していく。2020年冬に負った大腿二頭筋の怪我が尾を引き、復帰直後も再発を繰り返した。結局、怪我の影響で2020年以降まともにプレーすることが出来ないまま、バルセロナとの契約満了を迎えることとなった。
フリーとなった安部は昨年の夏に浦和レッズへと加入。しかし、浦和のユニフォームでプレーする姿を未だサポーターに見せることはできていない。能力は間違いないだけにもう一度そのプレーを見せてほしいところだが、果たして完全復活の時はやってくるのだろうか。
MF:井手口陽介(いでぐち・ようすけ)
生年月日:1996年8月23日
前所属クラブ:セルティック(スコットランド)
現所属クラブ:ヴィッセル神戸
今季リーグ戦成績:12試合0ゴール0アシスト
ガンバ大阪ユースに在籍していた井手口陽介は、ユース在籍中の2014年にトップチームへ飛び級で昇格した。2015年の天皇杯決勝で途中出場ながら優勝に貢献すると、翌年からレギュラーとして活躍し、ベストヤングプレーヤー賞を受賞。2017年もリーグ戦30試合4ゴール6アシストの成績を残し、G大阪の攻守の要として君臨していた。
この逸材を海外クラブが見逃すはずもなく、2017年オフにリーズ・ユナイテッドへと加入。しかし、就労ビザの関係でスペインやドイツのクラブにレンタルされると、出場機会を得ることが出来ず、2019年にG大阪へ復帰することとなった。
Jリーグ復帰後の3シーズンで安定した活躍を見せた井手口は、2022年冬にスコットランドの強豪セルティックに完全移籍し、満を持して2度目の海外挑戦を果たした。しかし、これも失敗。怪我に悩まされた影響もあり、在籍2シーズン目は屈辱的な公式戦出場なしに終わっている。
当然、そのような結果でセルティックに残り続けることは難しく、昨年にアビスパ福岡へ期限付きで加入。ここで主力としてタイトル獲得に貢献するなど再び評価を高めると、今冬セルティックからの完全移籍で前年のJ1王者ヴィッセル神戸に加入した。しかし、ここまで山口蛍や扇原貴宏といった絶対的レギュラーの影に隠れ、J1では12試合の出場に留まっている。試合に出場さえすれば井手口らしいプレーを見せるだけに、もどかしい日々が続いている。27歳とライバル2人に比べてまだ若いが、レギュラーを掴み取れなかったのは予想外と言えるだろう。
FW:鈴木武蔵(すずき・むさし)
生年月日:1994年2月11日
前所属:ガンバ大阪
現所属クラブ:北海道コンサドーレ札幌
今季リーグ戦成績:17試合0ゴール0アシスト
かつて日本代表でもプレーした鈴木武蔵は、海外挑戦を終えた後に2つのJリーグクラブに在籍したが、いずれも活躍はできていない。
アルビレックス新潟でプロデビューした鈴木は、V・ファーレン長崎在籍時の2018年に初のJ1リーグ2桁得点を記録すると、翌年加入した札幌でもシーズン同13得点と爆発し、2020年に満を持してベルギーのベールスホットに加入することとなった。
ベールスホット1年目となった20/21シーズンはリーグ戦26試合6得点とまずまずの成績をマークしたが、翌シーズンはわずか同1得点のみの大不振に終わり、クラブも2部に降格するなど大きな屈辱を味わった。そして2022年夏に、鈴木はガンバ大阪に加入し日本復帰を果たしている。
3シーズンぶりにJリーグへと復帰した鈴木だったが、海外挑戦前の強靭なフィジカルを活かしたストライカーぶりはあまり見られず、G大阪では2シーズンで2得点とFWとしてあまりに物足りない成績に。この影響もあり、2023シーズン後に古巣の札幌へ期限付き移籍することになった。
かつて自身の価値を証明した古巣で再び花を咲かせたい鈴木だったが、ここでもストライカーとして期待されていた働きは全くできておらず、17試合でゴール関与が0という悲惨な成績。札幌はシーズンわずか2勝と絶不調に陥っているが、その2勝は鈴木が出場していない試合で記録しており、ストレスのたまる日々が続いているだろう。1試合でも早くゴールを記録し、チームの救世主として復活する鈴木の姿が見たい。