日本代表に推された男は新天地で苦戦…Jリーグ今季ここまでの「新戦力ベスト3&ワースト3」は

熱戦が続くJ1リーグは、6月22、23日にシーズンの折り返しとなる第19節が行われ、翌週には後半戦がスタートした。その中で目立つのが、各チームの新加入選手たちの働きである。選手獲得時の「期待値」とチーム全体への「貢献度」を重視して、今季のJ1リーグの新戦力ベスト3、そしてワースト3を選びたい。

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どこに評価軸を置くかで大きく評価が変わるが、ベスト1は首位チームから選ぶべきだろう。開幕前の「上位争いも可能」との予想を上回る驚きの「首位ターン」を決めたのがFC町田ゼルビアであるが、その中で最も重要な役割を果たしたのが、最前線の韓国出身FWオ・セフンだ。1999年1月15日生まれ。身長194センチの高さが魅力で韓国の年代別代表に名を連ねていたが、2022年から2年間を過ごした清水エスパルスでは、控えの立場から抜け出せず、公式戦46試合出場で4得点という成績に終わっていた。その男が、町田ではレギュラーとなり、最前線で体を張りながら豪快なフィニッシュワークでゴールに迫り、今季17試合で6得点をマーク。その数字以上に、堅守速攻でロングボールとサイド攻撃を多用した町田の戦術の中で最重要人物として抜群の存在感を発揮した。現在は故障離脱中だが、チームの順位を考えると新戦力ベスト1でも文句は言えない。

2位には、復権したガンバ大阪のサイド攻撃を司るブラジル人ウインガー、ウェルトンを選びたい。1997年8月6日生まれ。加入前に流出したプレー映像ではテクニック&スピード系のドリブラーで、それ故に来日直後の姿に「減量が必要かも」と思われたが、試合を重ねる度にプレーの頻度と質を上げながら太めの肉体が筋肉の塊であることを証明するようにパワフルな“重戦車ドリブル”で相手を弾き飛ばしながら次々とチャンスを作り出した。中谷進之介、鈴木徳真など貢献度の高い新戦力が揃うG大阪だが、ブルガリアリーグからの移籍で「ベールに包まれていた」ということを考慮してウェルトンを選びたい。何より、ボール保持を重視するポヤトスサッカーに昨季、最も欠けていた縦に仕掛けられるドリブラーであり、この男の存在でチーム全体の攻撃力大きく変わること。左右両サイドに対応可能で選手交代の幅を広げていること。さらに守備もさぼらない姿と直近3試合で2得点の活躍に、選ばざるを得ない。

3人目は非常に迷う。前述したガンバ大阪の中谷と鈴木も選ばれるに値する活躍を披露し、町田の守備を統率するドレシェヴィッチや、アビスパ福岡のイラン人FWシャハブ・ザヘディ、サガン鳥栖のブラジル人FWマルセロ・ヒアン、さらにヴィッセル神戸で傑出したプレーを披露している宮代大聖、サンフレッチェ広島でゴールを量産した大橋祐紀、鹿島アントラーズの大卒新人SB濃野公人も候補になる。だが、「成長度」を理由に、ここでは名古屋グランパスの三國ケネディエブスを選びたい。2000年6月23日生まれの24歳。ナイジェリア人の父を持ち、そのポテンシャルの高さを青森山田高校時代から認められながら、アビスパ福岡時代は常に控えで“脆さ”の方が目立っており、名古屋加入時にも不安の声が大きかった。だが、主力CBが退団したチーム状況の中でスタメンの座を任されると、試合を重ねながら成長し、3バックの一角として自慢の高さとスピードを存分に見せつけている。まだ絶対的な安定感は持てていないが、それでも期待を大きく上回るパフォーマンスを披露している。

この他にも新天地で活躍する面々が多くいる一方で、ここまで期待を裏切る働きになってしまっている選手もいる。鳴り物入りでの来日からデビューが大幅に遅れた浦和レッズのオラ・ソルバッケンが6月末で退団しながらも爪痕を残した中、開幕直後に出番を得ながらも“音沙汰がなくなった”のが、鹿島アントラーズのブラジル人MFギリェルメ・パレジだ。1995年9月19日生まれ。運動量と献身性を売りに、開幕前キャンプでのトレーニングマッチなどではスタメンに名を連ねて期待を集めていたが、いざ開幕するとベンチスタートが続き(スタメン1試合)、4月20日の第9節を最後に出番なし。自身のインスタグラムでは元気な姿を見せて日本を楽しんでいる様子が伝わってくるが、ピッチに立つ姿が見られなくなり、ポポヴィッチ監督からの構想からは完全に外れている。

得点源として期待されながら未だノーゴールなのが、名古屋グランパスのFW山岸祐也だ。1993年8月29日生まれの30歳。流通経済大学からJ2クラブを渡り歩いてアビスパ福岡でJ1昇格に貢献し、J1でも2年連続10得点をマークした万能型ストライカー。引き抜かれる形で名古屋に加わったが、ここまで出場10試合でシュート15本を放ち、無得点となっている。開幕前に右ひざを負傷して出遅れると、復帰数試合で今度は左ひざ負傷で離脱。5月末に再復帰して現在4試合連続スタメン出場もゴールは遠く、周囲との連携不足の中で長所である動き出しの良さも不発となっている。オフの補強の目玉の一人でありながらの無得点は明らかに「期待はずれ」であり、チームの順位的にも古巣の福岡が6位で名古屋が11位では、思わず目を覆いたくなる。

もう1人、新天地で悩める時間が続いているのが、川崎フロンターレのMF山本悠樹だ。1997年11月6日生まれの技巧派ゲームメーカー。関西学院大から入団したガンバ大阪で実績を残し、昨季はチームが16位と低迷した中で唯一と言っていいほど高い評価を得た選手だった。その山本がオフに悩んだ末に川崎へ移籍して大きな期待を背負ったが、ここまでリーグ戦10試合(スタメン7試合)出場で得点、アシスト、ともになし。故障離脱の影響が大きいとは言え、新天地では自らの能力を発揮しきれていない。そして古巣のG大阪が現在3位であるのに対して川崎は15位と、山岸以上の“逆転現象”となっており、日本代表入りを推す声も聞こえなくなった。ただ、シーズンはまだ折り返したばかりであり、まだまだ巻き返すチャンスは残っている。山岸同様に周囲との連携も深まるはずで、今回のワースト3入りをバネにしてもらいたい。(文・三和直樹)

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