U-23日本代表、パリ五輪「最強メンバー」考察 OA含む18人の狭き門…6月初招集の欧州組“抜擢”も【コラム】
オーバーエイジ(OA)枠3人を含めた今夏のパリ五輪メンバー18人予想
大岩剛監督率いるU-23日本代表は、8大会連続出場となる今夏の五輪に向けて、来月3日に本大会メンバーを発表する。24歳以上のオーバーエイジ(OA)枠3人を含めた18人は誰になるのか。パラグアイ、マリ、イスラエルと戦うグループリーグ、さらなる上位進出を見据えた「最強メンバー」を考察する。
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これまで主に23人で戦ってきた大岩ジャパンから、OA3人を加えた18人に絞り込むのは極めて難しい。単純な個人の評価で選定すれば良いわけではないからだ。もちろん、かなり難航していると伝えられるOAを無理やり3人呼ぶ必要はないが、候補に浮上しているA代表の選手から現実的に、招集の可能性がある遠藤航(リバプール)、谷口彰悟(アル・ラーヤン)を軸に、もし可能であればという条件で、左利きのセンターバック(CB)である町田浩樹(ロイヤル・ユニオン・サン=ジロワーズ)を加えた。
世界と戦うにあたり、センターラインの守備を強化する必要がある。チェイス・アンリ(シュツットガルト)や鈴木海音(ジュビロ磐田)、木村誠二(サガン鳥栖)、西尾龍矢(セレッソ大阪)といった、パリ五輪世代のセンターバックにこのステージを経験させることで、A代表の底上げにつなげるメリットもあるが、勝ち進むために最善の策を講じていくならば、OA枠をフル稼働してでも補強するべきところだ。
GKは鈴木彩艶(シント=トロイデン)と小久保玲央ブライアン(ベンフィカ)がハイレベルに正GKを争う構図だろう。ベルギー1部のクラブで守護神を担い、A代表の実績もある鈴木が一歩リードしているようにも思うが、小久保はU-23アジアカップの優勝を支えた存在で、チーム内の信頼関係も確立している。ゴールキーピングの安定感では鈴木を上回っている感すらあるだけに、パリ五輪の本番を戦ううえでのホットゾーンになりそうだ。
右サイドバック(SB)はパリ五輪世代にタレントが多く、良い意味で悩ましい。濃野公人(鹿島アントラーズ)や植村洋斗(ジュビロ磐田)など、まだテストされていないJ1の主力クラスもいるが、これまで大岩ジャパンで築いてきた実績を買って、関根大輝(柏レイソル)と半田陸(ガンバ大阪)をチョイスした。左右の両SBをこなせる内野貴史(デュッセルドルフ)も有力候補だが、OAで加えた町田が左SB、高井幸大(川崎フロンターレ)が右SBもこなせるので、泣く泣く選外とした。仮に予想どおりになっても、おそらくバックアップには入るだろう。
CBはパリ五輪世代が1人となった。高井は左右のCBを遜色なくこなせるタレントで、高さだけでなくワイドカバーできる機動力もあるため、A代表の冨安健洋(アーセナル)のようになっていくポテンシャルがある。左SBはU-23アジア杯で存在感を高めた大畑歩夢(浦和レッズ)に。バングーナガンデ佳史扶(FC東京)もこのチームで実績があり、能力的なポテンシャルも負けていないが、6月のアメリカ遠征で途中離脱してしまったこと、さらに同じFC東京勢の荒木遼太郎と松木玖生が順当に選ばれた場合は3人目になるので、大畑を優先する形となった。
FW2枠は大岩監督が信頼寄せる2選手でほぼ決まりか
中盤はU-23アジア杯でキャプテンを務めた藤田譲瑠チマ(シント=トロイデン)が主軸だが、遠藤が加わる場合は4-3-3のアンカーが想定されるため、同時に起用するなら藤田がインサイドハーフに回りそうだ。松木もスタメン候補だが、並外れたフィジカルとメンタルの強さで、ゲームチェンジャー的な役割を担っていく可能性も考えられる。そうは言っても中2日で回していくので、藤田がアンカー、松木がインサイドハーフでスタメンという試合も出てくるだろう。
荒木は4-3-3の左インサイドハーフをベースに、4-2-3-1に可変させた時はトップ下からゴールを狙う攻撃の中心になる。攻撃で違いを生み出せるパリ五輪世代のタレントには久保建英(レアル・ソシエダ)や鈴木唯人(ブレンビー)もいるが、彼らの招集が困難であることを前提に選考すると、荒木以上の適任は考えにくい。佐野航大(NECナイメヘン)は6月のアメリカ遠征で大岩ジャパンの初招集となったが、究極的なポリバレントであり、しかも与えられたポジションでスペシャリティーも発揮できる。山本理仁(シント=トロイデン)とギリギリまで悩んだが、SBやウイングの選手層も考慮に入れて佐野を残した。
左右の両ウイングは最もタレントの豊富なセクションで、誰を選んで、外しても賛否両論出るだろう。その中で右に山田楓喜(東京ヴェルディ)、左に怪我から復調してきた斉藤光毅(スパルタ)、そして左右のポリバレントとして平河悠(FC町田ゼルビア)を選んだ。山田は直近のコンディションに不安はあるものの、本大会までに復調可能だろう。個で剥がせる高い力と左足の決定力、セットプレーのキッカーとしても頼りになる。
そして180センチのサイズはウイングながら、セットプレーの守備で高さを加えられるのは大きい。左SBの大畑や中盤の藤田、荒木、左の斉藤などが小柄なタイプなので、攻撃的なポジションの選手にもサイズのある選手を入れないと、セットプレーの守備でゴール前にミスマッチが起きやすくなってしまう。そうした意味でもインサイドハーフの松木と並び、山田の存在は世界と戦うにあたって大きい。
センターフォワードはパリ五輪世代のエースである細谷真大(柏レイソル)と前線のポリバレントでもある藤尾翔太(FC町田ゼルビア)でほぼ決まりだろう。3人目のFWを加えられるなら現在J1で9得点の木村勇大(東京ヴェルディ)やロス五輪世代のエースとして期待される後藤啓介(アンデルレヒト)といった大型FWの名前が挙がるが、18人というメンバー構成で、大岩監督の細谷と藤尾に対する信頼を逆転させるまでは難しいか。
[著者プロフィール]
河治良幸(かわじ・よしゆき)/東京都出身。「エル・ゴラッソ」創刊に携わり、日本代表を担当。著書は「サッカーの見方が180度変わる データ進化論」(ソル・メディア)など。NHK「ミラクルボディー」の「スペイン代表 世界最強の“天才脳”」を監修。タグマのウェブマガジン「サッカーの羅針盤」を運営。国内外で取材を続けながら、プレー分析を軸にサッカーの潮流を見守る。