J1G大阪の「その他収入」が多い意外な理由
【ベテラン記者コラム】
Jリーグが21日、3月決算の2クラブ(柏、湘南)を除くJ1-J3、計58クラブの2023年度の経営情報を開示した。J1浦和の売上高が100億円を突破し、全体でも過去最高の1445億円を記録したことなどがトピックとして紹介されたが、個人的に気になったのはJ1G大阪の「その他収入」の多さである。
【写真】リーグ戦の大阪ダービー5年ぶり勝利に喜ぶG大阪イレブン
Jリーグが公表したクラブ決算の一覧によると、G大阪は58クラブ中断トツとなる約23億円の「その他収入」を記載していた。浦和が約18億円、昨季のJ1で優勝した神戸は約17億円で、J1の平均は9億7500万円。G大阪の突出ぶりが分かる。
G大阪は22年度にも約20億円と記載しており、もともと「その他収入」の多いクラブだが、約3億円の増収にはいったい何が含まれているのだろう。問い合わせたところ、返ってきたのは意外な答えだった。
G大阪によると、23年度の「その他収入」には同年7月に本拠地パナソニックスタジアム吹田(大阪・吹田市)で開催したセルティック(スコットランド)との国際親善試合の収益や、日本代表MF中村敬斗の「移籍金の一部」が含まれているのだという。
移籍金の一部について解説する。中村は23年8月にLASKリンツ(オーストリア)からスタッド・ランス(フランス)に完全移籍。その移籍自体はG大阪とまったく関係がない話だが、中村が大きなクラブに移籍する度に、18年-21年に中村が在籍(20年以降はトゥエンテ=オランダ=などに期限付き移籍)していたG大阪にも「連帯貢献金」として移籍金の一部が支払われる仕組みがサッカー界にはある。
連帯貢献金は移籍金を受け取ったクラブが、12歳から23歳の誕生日を迎えるシーズンまで選手が登録されていた育成元のクラブに移籍金の一定割合を支払う制度。移籍を通じて選手の市場価値が上がれば上がるほど、選手を育てたクラブも潤う仕組みが世界共通のルールとして構築されているのだ。
今夏も欧州クラブへの移籍がうわさされている日本代表級の選手が何人かいる。「連帯貢献金」の恩恵を受けるJリーグクラブもいくつかありそうだ。
日本代表MF久保建英の所属するレアル・ソシエダード(スペイン)をはじめ、同MF三笘薫のいるブライトン(イングランド)やドルトムント(ドイツ)、中村と同MF伊東純也がプレーするスタッド・ランス…。欧州から多くのクラブも来日。〝興行〟の方法によって対戦相手となるJリーグクラブにもたらされる金額は異なるが、多かれ少なかれ、一定の収益が得られるのは間違いない。
Jリーグが開示する各クラブの経営情報は、項目や切り口によってさまざまなものが見えてくる。24年度は、「その他収入」にも注目していただきたい。(北川信行)