J1優勝争いが面白い! 町田には“正念場”来る予感 復活期す鹿島ら「上位5チーム」カギ握るのは

開幕から3カ月が経過したJ1リーグは、序盤の大混戦から徐々に上位と下位の差が開きつつある。全38節中の16節までを終えた今、改めて今季の優勝争いに着目し、現状の上位トップ5のチームの戦いぶりと今後の課題を探りたい。

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現在、首位に立つのはクラブ初のJ1シーズンを過ごすFC町田ゼルビアだ。勝点35(11勝2分け3敗)。4月の5試合で2勝3敗と負け越したが、5月は5勝1分けと再加速。ロングボールを効果的に使った縦に速い攻撃と強度の高い守備をベースに、しっかりとしたゲームモデルを持って白星を重ねてきた。懸念は夏の「暑さ」と「五輪」だ。平均ボール支配率42.7%で、パス本数がリーグ最下位の代わりに走行距離がトップ3に入るサッカーが、これから迎える酷暑の中でどこまで続けられるか。

そして攻撃のキーマンである平河悠藤尾翔太がパリ五輪に出場すれば、彼らがU-23アジア杯で不在だった時期に成績を落としたように影響は避けられない。ただ、オフの補強やエリキの復帰などで選手層は厚く、チームの一体感もある。今後、これまで以上にしっかりと対策を練られる試合が続くことが予想される中で、自分たちのサッカーに新しいエッセンスを加えられるか。レスターは奇跡を起こしたが、ジローナは失速した。果たして町田はどうなるか。ここまでの戦いぶりから今後も上位争いは続けられるはずだが、「優勝」となるとまだまだ乗り越えるべき壁は多くある。

2位には、常勝軍団復活を誓った鹿島アントラーズが、勝点32(10勝2分け4敗)でつけている。オフの補強の少なさに対して批判の声も多かったが、キャンプ中に獲得したチャヴリッチ、大卒新人の右SB濃野公人が輝かしい働きを見せ、FWからボランチ転向の知念慶が“新デュエル王”として存在感を発揮。1トップに鈴木優磨、トップ下に名古新太郎を置き、両サイドから師岡柊生、仲間隼斗が絡むシステムが機能し、第10節以降の7試合を6勝1分けの快進撃で浮上してきた。

今季からチームを指揮するランコ・ポポヴィッチ監督への評価も“手のひら返し”で良くなり、故障で出遅れていた元日本代表の司令塔MF柴崎岳の復帰も今後のチームの“成長の余地”として楽しみだ。このままチームとして成熟していくことが期待されるが、「夏の移籍」が大きな懸念で、特に不動のボランチである佐野海舟には海外移籍の可能性があるだけに心配なところだ。柴崎の起用ポジションにもよるが、ブラジル人MFギリェルメ・パレジが日本への順応に苦しんでいることもあり、ボランチには新戦力を加えておきたいところだ。

3位には、昨季王者のヴィッセル神戸が勝点29(9勝2分け5敗)で追っている。元日本代表勢が揃った昨季の戦力をベースに、縦に速いサッカーは町田と同じ。その上でオフの補強で戦力アップに成功。MF井手口陽介、DF岩波拓也はまだ本領を発揮できていないが、宮代大聖がインサイドハーフとしてブレイクし、巧みなポストプレーを見せる大迫勇也を追い越して最前線に飛び出し、ここまでリーグ4位となる7得点をマークしている。

ただ、大迫に加えて武藤嘉紀も昨季のように鬼気迫るような雰囲気がまだ感じられず、佐々木大樹、汰木康也もまだ期待値を上回る活躍はできていない。それだけ“力を残している”とも言え、通常運転の状態で上位につけているのはチーム力がある証拠だろうが、直近2試合は無得点での2連敗を喫し、ルヴァン杯でのPK負けも含めると3連敗と調子を落としているのは気がかりだ。特に攻撃は個人能力に頼る部分が多いだけに、ベテラン勢のコンディションは気になるところ。連敗した後に迎える6月の5試合は、リーグ連覇へ向けた大きな正念場と言えそうだ。

4位には、ガンバ大阪が勝点28(8勝4分け4敗)で久々に上位に顔を出している。第12節から4勝1分けと調子を上げてきたが、かつての“超攻撃”のスタイルではなく、1試合平均0.7失点で8勝中5勝がウノゼロ勝利という堅守が浮上の要因。新加入CB中谷進之介が優れた統率力を発揮してDFラインを高くコントロールし、中盤では鈴木徳真が次々とボールを回収、GK一森純はビルドアップを安定させながら好セーブを披露している。攻撃面では宇佐美貴史の“覚醒”とも言える活躍が大きく、「トッティのゼロトップ」を彷彿とさせる出色の働きを見せている。

ただ、1試合平均得点0.9は最下層グループ。ポゼッション重視の戦い方は浸透しているが、20チーム中19位のシュート決定力7.2というフィニッシュの精度とゴール前の迫力不足が課題だ。宇佐美とコンビを組む坂本一彩、怪我から復帰した山田康太、あるいはイッサム・ジェバリに加え、パワフルドリブルが相手の脅威になっているウェルトン、圧巻のスピードを持つ山下諒也のウイング勢の得点力アップが鍵を握る。また、三浦弦太が長期離脱となったCBの層の薄さは今後の戦いへ向けて気がかりな部分。夏の補強が必要なポジションだろう。

5位の名古屋グランパスは、勝点26(8勝2分け6敗)。開幕3連敗と出遅れながら、第4節から9節までの6試合を5勝1分けで盛り返し、その後の停滞を乗り越えて直近3試合を2勝1分けでトップ5入りするところまで順位を上げた。守備では三國ケネディエブス、ハ・チャンレの2人が試合を重ねる毎に安定感を増したことが大きく、中盤では森島司が新司令塔としタクトを振るい、大卒1年目のドリブラー・倍井謙が攻撃にアクセントを加えている。

しかし、平均ボール支配率46.1%は下から4番目の低さで、1試合平均シュート数8.8は20チーム中、最も少ない数字だ。リーグ2位のシュート決定率13.6%が5位浮上の理由だと言えるが、今後はシュート数、チャンスの数を増やして行く必要がある。約1カ月半の故障離脱から戻ってきたキャスパー・ユンカーのコンディションが100%になるのを待ちながら、攻撃のバリエーションを増やしたいところだ。

6位以下のチームを見ると、特に勝点24で並ぶ浦和レッズ、セレッソ大阪、消化試合が1試合少ない状態で勝点23のサンフレッチェ広島までは大きな差がなく、すぐにでもトップ5入りできる実力を持つチームだ。また、ACLを終えてリーグ戦に集中できる横浜F・マリノスにも注目で、川崎フロンターレの巻き返しも待たれる。中位陣は、まだまだ1試合毎に順位が大きく入れ替わる“団子状態”が続いており、3連勝でもすれば、一気に上位争いに加わることも可能だ。梅雨入りから夏到来の時期を、いかにして戦うか。いよいよチームとしての真価が問われることになる。(文・三和直樹)

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