川崎の前半の攻撃を相手はどう感じたのか。「川崎は足元だけじゃなくて…」に込められたポジティブな要素【G大阪戦の前後半で“違う顔”を見せた川崎。それでも見せた希望と闘志(2)】

「前半はいい形が多かったので、前から畳みかけて相手のハーフコートでサッカーできる時間が長かった。入ったときもその時間帯が続いたので、自分的にもやりやすかった」

ガンバ大阪とのアウェイゲームの前半をこう振り返ったのは、川崎フロンターレのファンウェルメスケルケン際だ。先制点を奪った瀬川祐輔に脳震盪の可能性があったことで、前半38分から出場。いいリズムの中でプレーをしていた前半の終盤と、流れを掴めなかった後半のどちらをもピッチで過ごしている。

思うような時間を過ごせなかった後半は、中盤へのパスコースが制限されるなどビルドアップでの対策がなされていたことも要因としてあるが、際は、「その中でもどうビルドアップしていくのか。けっこう細かい話になっちゃうと思うんですけど、もちろん相手も試合もナマ物なので、その瞬間・瞬間で相手もやってくることが変わりますし、相手が嫌なことをやるのがサッカーなので、そういった中での引き出しっていうものを自分たちはもっと仕込んでいかないといけない」とそれを上回る対応力が必要だったと話す。

■CBの2枚替え

その解決策の一つが、後半32分のCBの2枚替えだった。G大阪に逆転を許した7分後のことである。ジェジエウ大南拓磨が下がり、代わりに高井幸大をゼ・ヒカルドを投入。CBにはその高井と、SBを務めていた佐々木旭が入った。左SBには橘田健人が入り、アンカーにはゼ・ヒカルドが配置されている。

際は、「より前に、点を取るしかないっていう部分がはっきり伝わってきた」とその采配を振り返る。SBを高い位置に置くとともに、CBからの配球にも期待があったが、際は、「プラスで走量があって、より上下に、前に、回収して前に、回収して前にっていう作業を求められた」とも指揮官の意図を説明する。

ピッチに投入された一人である高井幸大は、「得点を取りに行きたかったので、後ろはなるべく同数で守りながら、前に人数を掛けられれば」という逆転へのイメージを膨らませながら試合に入ったという。

U―23アジアカップで苦しい時間もあった大岩ジャパンのCBの軸として大きく成長したこの19歳に、鬼木達監督は大きな期待を乗せてピッチに送り出した。本人もその気持ちを存分に汲んでいたからこそ、残りの時間で戦う姿を見せた。ビルドアップとパワープレーの両方で、全力を尽くした。

■相手は川崎の前半の攻撃をどう感じたか

前後半で違う顔を見せた川崎フロンターレだが、少なくとも前半のプレーは復活を期す中ではポジティブな要素も多かったといえるのではないか。

たとえばG大阪のGK一森純は、前半について「押し返せなかったですね。川崎には上手い選手が多いですし、そこでメンタル的にやっぱり後ろに、後ろにっていう感じになってしまった。いつもやったらできてるアグレッシブな守備ができなかった」と川崎の“圧”が強かったと振り返っている。

そして、「川崎は足元だけじゃなくて、狭いエリアでターンもしてくるし、背後も取ってくるし、いいチームなので、多分狙いどころがなかったのかな」とフィールドプレイヤーの思いを代弁した。相手チームに捉えどころが難しいと感じさせるゲームを展開できたことになる。

では、G大阪は後半に押し返すことができた要因は何か。一森に聞くと、「勇気を持って横パスやバックパスでちょっとの隙間でもラインアップしていこうっていうのは一つの要因かなと思います」と話す。

結果にこそ結びつかなかったが、その勇気や勝たせたい気持ちを、川崎の選手は強く握りしめている。試合後、高井に聞けば、「みんな勝たせたい気持ちだったり、試合に勝ちたい気持ちは必ずあると思うし、それをもっと表に出すことももちろん大切だと思うし、味方を鼓舞する声もまだまだチームとして足りないと思うので、もう一歩、チームとしてやっていければ」と力強く話す。

そしてファンウェルメスケルケン際も、「負けることを前提にまず話さないことと、勝つには勝つための逆算をチームとしてやっていくっていうことがとても大事だと思うので、その逆算の作業を毎週、試合までの一定時間がある中でどれだけやれるか、選手・監督含めて、そこが本当に一番」と意気込む。

連敗を喫した川崎は、次戦はホームに帰っての試合を迎える。対戦相手は柏レイソル。昨年、天皇杯のタイトルを懸けて戦った相手で、リベンジマッチと闘志を燃やしてくるであろう相手だ。

その因縁を振り払って白星を掴めば、きっと流れは変わる。今のもどかしさを、産みの苦しみに変えるしかない。

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