1で遠藤保仁と“再会”…磐田監督&選手が燃える偉大な背中「影響力は破壊知れない」「厄介」【コラム】
磐田はG大阪の敵地に乗り込む
ジュビロ磐田は3月16日にJ1リーグ第4節でガンバ大阪とアウェーで対戦する。磐田で現役引退した”ヤットさん”こと遠藤保仁が、古巣でもあったG大阪のトップチームのコーチに就任しており、磐田の選手や横内昭展監督にとって感慨深い再会となる。
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今年の沖縄キャンプでG大阪の取材をする機会があったが、遠藤コーチは基本、ダニエル・ポヤトス監督やマルセル・サンツヘッドコーチを補助する立場を取りながら、選手たちの様子をじっくりと観察し、ところどころで声掛けをして、良い緊張感をもたらしていた。ボール1つ供給するのでも、インサイドキックでビシッと付けるなど、現役時代さながらの振る舞いも目に付く。
選手時代の遠藤と長く時間を共にした倉田秋も「ヤットさんが見てくれているだけで、緊張すると言っている選手だったり、そういう空気感は去年とは違う」と心強さを口にしていた。中盤でしっかりとボールを動かしながら相手のディフェンスを崩すスタイルは昨年と変わらないが、セレッソ大阪から新加入のMF鈴木徳真がイスラエル代表MFネタ・ラヴィと組む中盤の守備がバージョンアップしていることを横内監督も認める。
遠藤保仁と言えば高い技術で攻撃を組み立て、良質なパスでチャンスの起点を作るイメージは強いが、実は守備面でも相手のボールホルダーが嫌がるポジションを取って、自由に繋がせない能力も高かった。中盤の底で攻守をコントロールする鈴木も、状況に応じたプレーのアドバイスを積極的に求めているといい、そうしたところでも少なからず効果をもたらしているのかもしれない。
横内監督は「選手もヤットの言葉の重要性だったりとか、重さだったりは分かっていると思うので。それが良い方に働いているのかな、と思います。そこの影響力は計り知れないものがあると思いますし……厄介な相手ですね」と苦笑いしながら遠藤コーチとの再会を楽しみにしている。もちろん磐田で3年半、苦楽を共にしてきた仲間たちにとっても大きな存在だ。
磐田のキャプテンを担う山田大記は現役時代の遠藤コーチについて「引き締まるというより、落ち着くという印象でした。一緒にやっている時は。物事を洞察するというか……いろんなものが見えているなというのは一緒にやらせてもらって感じている」と語る。そうしたものをコーチという立場で、G大阪に還元していることは山田にとっても想像に難くないところだろう。
中盤で一緒に組んでいた上原力也に、G大阪での遠藤コーチの様子を伝えると「ここにいた時は背中で、練習態度だったりサッカーに向き合う姿勢は見て感じましたし、それを、コーチだからもうちょい声だしているのかもしれないですけど、そういう雰囲気を感じ取っているんだと思います」と語りながら、週末の試合での再会を心待ちにしていることを明かしてくれた。
「磐田にもたらしてくれた影響は本当に大きいと思います。僕たちが(ガンバに)勝つことが、成長を示せる一番だと思うので、勝利を目指して頑張りたい」
またディフェンスラインから遠藤保仁の背中を見てきたDF伊藤槙人は「本当、学ぶことも多かったですし、すごい実績、経験のある選手。感覚的なこととか、学べないことも多かったですけど」と振り返る。伊藤が学べなかったのは「いつ見ているんだろう」というパスなどだが、学べたのはいかなる時でも落ち着いた振る舞いで、90分をしっかりとコントロールしていくことなどだろう。
「状況によって勝つためのベストを選択」
「本当に頼れる存在だったし、やっぱり存在は大きかったです」
その遠藤との再会は磐田の選手たちにとって特別なものはあるが、直接対戦するのは遠藤コーチからも指導を受ける、G大阪の選手たちだ。横内監督は「ガンバもボールを握りたいチームだと思いますけど、主導権を渡すと動かせるチームなので。できるだけ我々が握れる時間を多くしたい」と前置きしながら、状況によって勝つためのベストの選択をしていくことを主張する。
“昇格組”の磐田はここまで1勝2敗。川崎フロンターレに衝撃的な5-4の勝利はあったが、勝ち点3で16位という立場に過ぎない。対するG大阪は2試合を消化して、1勝1分の勝ち点4。ホームのパナスタで磐田にきっちり勝利すれば、代表ウィークを前に、上位戦線に乗っていく足がかりを掴むことができるだろう。遠藤保仁という偉大な存在をめぐる対戦ではあるが、両チームにとって今後を左右する重要なゲームとなる。
[著者プロフィール]
河治良幸(かわじ・よしゆき)/東京都出身。「エル・ゴラッソ」創刊に携わり、日本代表を担当。著書は「サッカーの見方が180度変わる データ進化論」(ソル・メディア)など。NHK「ミラクルボディー」の「スペイン代表 世界最強の“天才脳”」を監修。タグマのウェブマガジン「サッカーの羅針盤」を運営。国内外で取材を続けながら、プレー分析を軸にサッカーの潮流を見守る。