J1リーグで早くも明暗 G大阪が「期待十分」…浦和、名古屋に続く「危ないクラブ」は?【コラム】
開幕2試合終了時点で考察、目に付いたポジティブ&不安な要素は?
J1リーグは19年ぶりに開幕連勝クラブが不在となる形で、開幕2試合を終えた。長いシーズンのすべてを見通すのはサッカーの神様でもない限り不可能だろう。ただ、各クラブの戦いぶりを踏まえ、現時点で見えてきたこともある。
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大別するとポジティブな要素が多い“期待十分なクラブ”と課題や不安な要素が目に付く“危険なクラブ”。現時点で参考になるのは2月23日に開幕戦で対峙したサンフレッチェ広島と浦和レッズだ。端的に言ってしまえば広島が“期待十分なクラブ”、浦和が”危険なクラブ”となる。
優勝候補の呼び声も高い浦和を相手に、2-0の勝利を飾った広島はミヒャエル・スキッベ監督が3年目を迎え、選手の入れ替わりも少ない。組織的な完成度が高いチームに昨シーズン、湘南ベルマーレで13得点を記録したFW大橋祐紀が加わり、スタートダッシュの条件はある程度、揃っている。
1-1の引き分けに終わった第2節のFC東京戦も、アウェーながら全体的には広島が押し気味に試合を進めた。枠内シュートはFC東京がMF荒木遼太郎によるゴールの1本、広島は7本。浦和、FC東京ともストロング(強み)を押し出そうとするチームであり、広島のような相手の長所を消しに来るチームに勝ち切れるかどうかはリーグタイトルの行方を左右する鍵になりそうだ。
広島に敗れた浦和に関しては前評判が高く、ペア・マティアス・ヘグモ新監督が掲げる4-3-3のシステムのベースは決して複雑なものではなく、早期に結果が付いて来るとの見方もあった。しかし開幕戦、続く第2節(対東京ヴェルディ/1-1)でも“浦和対策”が反映されており、それが苦戦の要因になっている。
ただ、ポジティブに考えると早期に課題が露見したことで、ここからの道筋が見えてきているのも確かだ。浦和の主力の1人であるMF小泉佳穂は悲願のリーグ優勝に向けて、序盤戦から勝ち点を積み上げていく必要があることを前提にこう語った。
「対戦相手の変化に向き合うところと、4-3-3の完成度を高めるアップデートとアレンジを増やしていく作業を3つ並行にやらないといけない。要は相手の対策が分かりやすいというか、僕たちは形をそんなに変えない。ある程度、試合前に用意したものが発揮しやすいんですよね」
つまり、相手の対策を常に想定して試合を進めていけば、それに応じて必要なプランA、Bがイメージしやすくなるとも言える。補強の目玉とも言えるノルウェー代表FWオラ・ソルバッケンが負傷の影響でピッチに立てず、スウェーデン代表MFサミュエル・グスタフソンも周囲とイメージを共有するのに時間がかかりそうな気配はある。
そしてなにより、へグモ監督がJリーグの傾向を把握するには最低でも一回りは必要だろう。昨年ベストイレブンのセンターバック(CB)コンビとGK西川周作が健在で、攻撃陣も戦力的なポテンシャルは高いだけに、完成度アップはもちろん、小泉が語るとおり、アップデートの過程でも勝ち点を拾いながら、トップからの射程距離をキープして後半戦に入って行けるかがポイントになりそうだ。
J1昇格組は独自カラーで奮闘も、今後のさらなる成長が必須
そのほか“期待十分なクラブ”として挙げたいのはガンバ大阪とアビスパ福岡だ。G大阪はダニエル・ポヤトス監督が2年目で、主導権を握りながら攻めるスタイルが定着しつつあるなか、攻守の切り替えや球際の攻防でのクオリティーが洗練された印象だ。
最大のポイントは補強効果だ。CB中谷進之介、ボランチのMF鈴木徳真、トップ下のMF山田康太と、センターラインに実力者を加えられたのは大きい。ここ数年来、不安定な戦いぶりが目立ってきただけにムラのないパフォーマンスを持続できるかは見ものだ。
また昇格組のFC町田ゼルビア、ジュビロ磐田、東京ヴェルディはそれぞれのカラーでJ1に挑み、期待を抱かせるパフォーマンスを見せている。ただ、現状では残留争いの波に飲まれてしまうだろう。この3チームに共通して言えるのはシーズン中の成長がない限り、おそらく残留以上の結果を勝ち取れないということだ。 “危険なクラブ”として開幕2連敗の名古屋グランパスを挙げないわけにはいかない。オフに大型補強を行い昨季の福岡で二桁得点をマークしたFW山岸祐也らを加えた一方、最終ラインの主力(DF藤井陽也、中谷、DF丸山祐市、DF森下龍矢)がごっそりと抜けた。
新たに補強した面々には好素材が揃うものの、入れ替わりが激しく、攻撃面にマイナスに働いている部分はあるかもしれない。3年目の長谷川健太監督の下、3シーズン目を迎えたとはいえ、守備組織の再構築には少し時間がかかるかもしれない。
また、ジュビロ磐田との第2節で5失点を喫して敗れた川崎フロンターレは、攻撃面のアップデートが図れた一方で、センターラインの守備にやや不安が覗く。最終ラインの軸として期待が懸かるDFジェジエウの復調次第で強度を持ち直す可能性はあるものの、中盤から前の選手たちがハイプレスでボールを奪うだけでなく、攻め込まれた時の振る舞い方に改善の余地がありそうだ。
[著者プロフィール]
河治良幸(かわじ・よしゆき)/東京都出身。「エル・ゴラッソ」創刊に携わり、日本代表を担当。著書は「サッカーの見方が180度変わる データ進化論」(ソル・メディア)など。NHK「ミラクルボディー」の「スペイン代表 世界最強の“天才脳”」を監修。タグマのウェブマガジン「サッカーの羅針盤」を運営。国内外で取材を続けながら、プレー分析を軸にサッカーの潮流を見守る。