昨季王者の神戸はさらに戦力アップ? “最低評価”は【J1ストーブリーグ通信簿2024】

2024年のJリーグのシーズン開幕まで残りわずか。クラブ数が「18」から「20」に増えたJ1は2月23日~25日に開幕節が行われ、12月8日の最終節まで全38節に渡る長丁場の戦いが繰り広げられる。その熾烈な戦いを前に、J1全クラブの「今オフの補強」を査定して5段階(良い方からA・B・C・D・E)で評価したい。今回はG大阪、C大阪、神戸、広島、福岡、鳥栖編。

【写真】「ケガがなければ…」日本代表の歴史を変えられた“未完の逸材”たち(全4枚)

*  *  *

■G大阪「A」

失敗が許されないポヤトス体制2年目。昨オフに続いて今オフも補強に励み、代表クラスの実力を持つCB中谷進之介(←名古屋)に、徳島時代にポヤトス政権下で働いたMF鈴木徳真(←C大阪)、タフで安定感のある右SB松田陸(←C大阪)を“禁断の移籍”で獲得。テクニックに優れた攻撃的MFの山田康太(←柏)、スピード抜群のFW山下諒也(←横浜FC)、右サイドのマルチロールの岸本武流(←清水)らをチームに加えた。

退団者も多く、主なところではクォン・ギョンウォン、藤春廣輝、高尾瑠、佐藤瑶大、山本悠樹といった面々で、山見大登、鈴木武蔵の2人はレンタル移籍となった。山本の流出は誤算だったが、全体的には余剰戦力を整理したと言える。そしてレンタル復帰したGK一森純(←横浜FM)、FW坂本一彩(←岡山)もおり、戦力値は間違いなくアップした。

さらに2月11日、ここにブラジル人アタッカーのウェルトン・フェリペ(←レフスキ・ソフィア)の獲得を発表。チーム待望のウインガーの獲得で、一気に補強の“見栄え”もアップした。昨季の16位低迷という苦い記憶をすっかり忘れさせることに成功した。

■C大阪「B」

終盤に失速して9位に終わった昨季からの“上積み”を狙い、強烈なミドル弾を持つヴィトール・ブエノ(←アトレチコ・パラナエンセ)、ドリブル突破が魅力のルーカス・フェルナンデス(←札幌)のブラジル人を獲得。さらにアンカー役も可能なDF田中駿汰(←札幌)を争奪戦の末に手に入れ、経験豊富でムードメーカーにもなれるSB登里享平(←川崎)、ボランチの平野佑一(←浦和)を獲得。すでに特別指定選手として高い評価を得ているSB奥田勇斗(←桃山学院大)も期待できるタレントだ。

一方、マテイ・ヨニッチ、鈴木徳真、松田陸、丸橋祐介、山中亮輔らが退団。FW山田寛人(←仙台)をレンタル復帰させたが、石渡ネルソン、大迫塁がレンタル放出。誤算はレンタル復帰させたかった中原輝、藤尾翔太の流出だろうか。ただ、レギュラー陣は全員が残留しており、控え選手たちの移籍と考えれば、マイナス面はそれほど多くないと言える。

オフの補強はまずまず。前評判の高いヴィトール・ブエノが、どれだけ早くチームに馴染み、本領を発揮できるか。優勝争いに加われる戦力であることは間違いない。

■神戸「A」

悲願のリーグ優勝から、今季はリーグ連覇を狙いながらACLを戦う。そのためには選手層アップが不可欠。高い潜在能力を持つGKオビ・パウエル・オビン(←横浜FM)、神戸育ちのCB岩波拓也(←浦和)、スタミナ豊富なSB広瀬陸斗(←鹿島)、球際の強さが光ボランチの鍬先祐弥(←長崎)、日本代表復帰の声も挙がるMF井手口陽介(←福岡)、優れた得点能力を持つFW宮代大聖(←川崎)と、各ポジションにレギュラークラスの選手を獲得した。

一方、退団した選手の中で目立つのはDF大﨑玲央のみ。昨季途中加入のフアン・マタ、バーリント・ヴェーチェイの助っ人陣の退団は残念ではあるが、チームの戦いに影響はない。昨季フル回転した大迫勇也の疲労、長期離脱中の齊藤未月を考えると、特に宮代と井手口の獲得が“ヒット”であり、フロントの手柄だと言える。

元々、選手の駒は揃っていたが、今オフの補強で控えも含めたチーム全体のクオリティがワンランク上がり、いよいよビッグクラブらしい編成になった。例年通り、夏の移籍期間での新助っ人獲得も期待したいところだ。

■広島「D」

待望の新スタジアムが完成し、優勝へのモチベーションも高まるシーズン。昨季3位の手応えがあるとはいえ、目立った新戦力は、争奪戦の末に獲得したFW大橋祐紀(←湘南)のみ。ユース出身の攻撃型ボランチの細谷航平(←法政大)を出戻りの形でチームに加え、控えGKとして薄井覇斗(←松本)をレンタルで獲得した以外は、DFイヨハ理ヘンリー(←京都)、MF小原基樹(←水戸)の2人をレンタル復帰させたのみだ。

一方で退団者も少なく、引退選手と武者修行で他クラブへ期限付き移籍した面々以外では、FWナッシム・ベン・カリファの名前があるのみ。昨季からチームのベースはほぼ変わらない。決して戦力値がマイナスになった訳ではないが、大きくプラスしたとも言えず、他クラブが戦力アップした中では相対的に苦しい戦いを強いられる可能性もある。

ただ、その中で昨季J1出場23試合13得点でブレイクした大橋は非常に楽しみな存在。前線を献身的に走り回りながらゴールを狙うプレースタイル的にも広島にフィットするはずだ。

■福岡「E」

昨季はクラブ初タイトルとなるルヴァン杯優勝を飾り、リーグ戦でもクラブ最高順位の7位でフィニッシュした。だが今オフ、躍進を支えたエースの山岸祐也、中盤を支えた井手口陽介が他クラブへ移籍。さらに高い能力を持つFWルキアンに、中村駿、三國ケネディエブスの貴重な控え選手たちも退団した。

その穴を埋めるべく、正確なポストプレーで起点となれるFWナッシム・ベン・カリファ(←広島)、運動量豊富でサイドから仕掛ける岩崎悠人(←鳥栖)、ブラジルで鍛錬を積んだボランチ・松岡大起(←清水)を獲得。その他、GK菅沼一晃(←福岡大)、MF重見柾斗(←福岡大)の大卒新人を獲得し、MF北島祐二(←東京V)をレンタル復帰させた。

構想では、山岸、ルキアンの代わりがベン・カリファと岩崎、井手口の代わりが松岡となる。一応の目処は付いており、しっかりと穴埋めの補強はした。だが、あくまで皮算用。やはりチームの核だった山岸、井手口が流出した時点でオフの補強査定は大きく下げざるを得ない。

■鳥栖「E」

昨季14位のチームにテコ入れが必要である中、オフに目立ったのは退団選手たちの名前だった。昨季9得点を挙げて最前線で奮闘した小野裕二、サイドアタッカーとして自慢のスピードを見せつけた岩崎悠人以外にも、多くの選手がクラブを去った。

ただ、その代わりに獲得した選手も多く、始動日の時点で全33選手中14人が新加入選手となった。その中で目立つのは、昨季J2で32試合に出場して守備の要だった上夷克典(←大分)、韓国人の大型CBキム・テヒョン(←蔚山現代)、左サイドのスペシャリストであるDF丸橋祐介(←C大阪)、切れ味鋭いドリブルでレンタル先の東京VのJ1昇格に大きく貢献した中原輝(←C大阪)、昨季J1で23試合に出場したFWマルセロ・ヒアン(←横浜FC)、昨季J3でプレーしたFWヴィニシウス・アラウージョ(←今治)といったところ。そして大学生3人とユースから2人を昇格させた。

獲得人数は多いが、果たして実質的にどこまで戦力アップとなったのか。昨オフも選手の入退団が多く、クラブ規模的に仕方がない面があるとは言え、あまりにも入れ替わりの激しいチーム作りには疑念が湧く。優秀なアカデミーを有効に活用しながら、川井健太監督の手腕に期待したい。

(文・三和直樹)

https://dot.asahi.com/

Share Button